せっかくいい資料を作っても、いいプレゼンが出来なければ意味がありません。ストーリー性や、「ワンスライド・ワンメッセージ」などのポイントを押さえつつ、「天才に学ぶプレゼン10か条」を知りましょう。

(本記事は、永田豊志氏の著書『 会社では教えてもらえない仕事がデキる人の資料作成のキホン 』すばる舎(2017年5月24日)の中から一部を抜粋・編集しています)

入念な準備が必要

会社では教えてもらえない 仕事がデキる人の 資料作成のキホン
(画像=Webサイトより 画像をクリックするとAmazonに飛びます)

さて、最終章では効果的なプレゼンについてご説明していきたいと思います。

アップル社の元CEOで共同創業者の故スティーブ・ジョブズは、プレゼンの達人としても知られています。

たとえば、iPhoneの発表会のときに語った「電話を再発明する」というセリフは有名ですが、なかなか、こんなセリフがすんなり出てくる人はそういません。

そう、ジョブズだって入念に準備しているのです。

聴衆を魅了するそのテクニックの秘密を『スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン』(日経BP社)の著者で、コミュニケーションコンサルタントであるカーマイン・ガロ氏は、10つのポイントとして次のようにまとめています。

1テーマを明確に示す
2情熱を見せる
3プレゼンの概略を示す
4数字に意味を持たせる
5忘れられない瞬間を演出する
6視覚に訴えるスライドを用意する
71つのショウとして見せる
8小さなミスやトラブルに動じない
9機能ではなくメリットを売りこむ
10繰り返しリハーサルをする

天才に学ぶ!プレゼン10ヶ条

プレゼン成功の10ヶ条を見て、みなさんはどう思いましたか?

カリスマ性のある天才的クリエイターの印象が強いジョブズですが、基本はさほど変わらないように思えます。

むしろ、基本に対してものすごく忠実で、どんなに有名で皆の注目を集める存在になっても、プレゼンをとことん突き詰め、リハーサルを繰り返した姿に私たちは学ぶべきことがたくさんありそうですね。

10ヶ条の中でも私たちにとって4と9は多いに参考にできそうです。

たとえば、ジョブズは初代iPodが発売されるときに、「この音楽プレイヤーは容量が5GBもある」という代わりに「1000曲がポケットに入るんだ」と表現し、その携帯性を説明する代わりに、「小さくてガムより軽い」と表現しました。

こうした例を通して、彼の説明する中身が、難解な専門用語や単なる数字の羅列ではなく、「聴衆にとって意味のある言葉や数字に変換されている」点に注目したいものです。

スライドをあえて分割させるのもアリ

1スライドに1メッセージ、といっても、メッセージを伝えるときに情報が1個ということにはなりません。情報を適切に分解、分類することで、読み手によりうまくメッセージが伝わるようにすべきです。人間はこんがらがったヒモをほどいてあげると、安心し、相手のことを信頼します。

ここでは、1~4まで、スライドを分割する数に着目して、それが読み手にとってどのような印象を与えるかを中心に見ていきましょう。

1=唯一無二、もっとも強いメッセージ

情報の個数が1つだと、資料の作り手としては不安になるかもしれません。しかし、読み手が他の情報に目を向けることがないので、もっとも強く印象づけることができます。

作り手がやりがちなのは、モレがこわいので、ありとあらゆる情報を資料に盛りこんでしまうこと。すると、多くの場合に逆効果となってしまいます。

そうした意味では、1つのスライドに1つの情報を置いて、それがすべてを代弁しているのだというのは、かなり強いメッセージとして読み手に映るでしょう。

スティーブ・ジョブズも、スライドに1つのフレーズ、1つの写真などで聴衆へ強いインパクトを残すことに成功しています。

対比を見せたいときは2つに分ける

2=相反する2つのものを比較するのに適している

ビジネスというのはしばしば相反するものをバランスよく同居させることが求められます。そうした場合に、物事を分類するときに、相反する2つに分けるというのはよくやる手です。たとえば、こんなふうに。

メリットとデメリット、売上増施策とコスト減施策、長期的観点と短期的観点、新規事業と既存サービスの強化、拡大か縮小か……。

異なる2つの視点から点検することで、ものの見方が偏ったり、判断が一方的になることを防ぐことができます。

人間心理的にも二律背反はとてもわかりやすいので、紙面を二分して、色なども分けて対照的なレイアウトにするとより効果的です。

3=重要かつ代表的な要素をピックアップする

3は何かを選ぶ根拠として必要最小限の数字です。心理学的にも、何かを説明するために十分な理由の数は3つ以上です。しかし、多すぎると逆に拒絶される傾向にあります。情報量が多いと1つずつのインパクトも減ってしまいます。そうした意味では、何かの根拠や特徴を示す場合に、「まず3つあげてみよう」というスタンスで中身を考えるのがいいのではないでしょうか。

結論の理由、新製品の特徴、新ルールの注意点など、3つ、各々がかぶらないような分類を考えてみることです。また組織や体制などを考えるときにも、3つというのは都合がいいです。2だと、紅白歌合戦ではないですが、2つに分裂して、対立してしまいます。対立関係からは前向きなものは生まれません。

しかし、全体が3つに分割していると、各々の独立性は確保すれば全体が分裂、対立ということは避けられます。三権分立の図を思い起こすとよくわかると思います。

口裂け女はなぜ都市伝説化したのか?

私が小学生の頃、「口裂け女」という都市伝説が日本全国で蔓延し、社会問題となりました。口裂け女は、こんな話です。

マスクをした若い女性が、子どもに「わたし、キレイ?」と聞いてくる。「キレイ」と答えると「これでもか!」と言いながらマスクをはずすと、口は耳元まで裂けている。「キレイじゃない」と答えると包丁で斬り殺されるといったものです。逃げても車並みのスピードで追いかけてくると聞いて、小さかった私は恐怖におののきました。

問題はなぜ、このような話が都市伝説になるのか。都市伝説になるのはどういった話なのか、ということです。

おそらくは、「聞いてすぐに具体的なイメージがわいてくる」「映像が印象的」「ストーリーが具体的」といったことでしょうか。

『アイデアのちから』(日経BP社)の著者であるハース兄弟は、こうした人の印象に残る話には共通点がある、としてリサーチして、その特徴をまとめました。その結果、印象深い話には、6つの特徴があるということがわかったのです。6つの特徴のそれぞれの頭文字をとって「SUCCESs(サクセス)の法則」と名づけました。

この6つは、次のようなものです。
1単純明快(Simple)
2意外性(Unexpected)
3具体的(Concrete)4信頼性(Credible)
5感情に訴える(Emotional)
6物語性(Story)

ハース兄弟によれば、これらがすべてそろっているとは限りませんが、印象深い話、人の口コミで伝わりやすい話、都市伝説などはこれらの要素がいくつか入っているということです。

永田豊志
知的生産研究家/株式会社ショーケース・ティービー共同創業者兼取締役副社長。九州大学卒。リクルートで新規事業開発を担当。その後、出版社や版権管理会社などを経て、株式会社ショーケース・ティービーを共同設立。創業11年目で東証一部上場へ導いた。現在は取締役副社長として、経営全般を指揮している。

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