カルビーお客様対応の仕組み
スナック菓子の王道といえば「カルビー ポテトチップス」。まさに国民的スナック菓子といっても過言ではないロングセラー商品です。しかし支持されているのは、お菓子だけではありません。同社には「カルビーという会社が好き!」という多くの「カルビーファン」がいます。
その人気を支えるのが、卓越したお客様対応で クレーム客の95%をファンに変える 、カルビーの「お客様相談室」です。
「お客様相談室」というと、“クレームや苦情の処理をする部署”という印象がありますが、「お客様第一主義」を掲げるカルビーでは、「お客様相談室」を“ファンをつくるための部署”としてとらえています。
『カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み』
では、そんなカルビーがファンを生みだす、独自の「顧客視点」と「実践の仕組み」が初めて明かされます。
クレーム客の再購入率95%を実現する「お客様対応」の仕組み
カルビーでは、お客様対応に関する言葉にも「お客様第一主義」の思いを込めています。
その代表例にあげられるのが「クレーム処理」ではなく「ご指摘対応」という表現です。一般的によく使われる「クレーム処理」という言葉だと、「お客様の不満を鎮める」というニュアンスが強く、それがお客様対応にも表れてしまいます。
しかし、「ご指摘対応」という言葉には、「カルビーに期待するお客様の声(=ご指摘)として、1件1件にもれなく丁寧に向き合っていこう(=対応)」という目的意識を強く反映しています。
対応するスタッフも「オペレーター」ではなく「コミュニケーター」と呼ばれており、「聞かれたことに回答して処理する」のではなく、「お客様の真意を知るためにコミュニケーションをする」という姿勢が表れています。このように表現を変えるだけでもスタッフの意識が大きく変わり、実際の対応にも色濃く反映されているのです。
さらに、カルビーのお客様相談室には「ご指摘」に対して、スピーディーかつ、お客様の気持ちに寄り添った対応の仕組みがあります。
まずはその速さ、本社のお客様相談室に届いた「ご指摘」の情報は、まずその場で詳しくヒアリングされ、
15分以内
に全国7支店に設置している地域お客様相談室に伝達されます。その後、各支店の相談員がお客様を訪問する場合は
2時間以内
に訪問し、お詫び、事実確認とともに商品を預かります。そして、
2週間以内
に原因を解明し、報告書がお客様に提出されるのです。
「お客様の気持ちに寄り添う対応」がファンをつくる
スピード感もさることながら、要所での「お客様とのコミュニケーション」にも、カルビーのお客様対応の凄さがかくされています。たとえば、預かった商品が原因解明のために製造工場に届いた時点で、「お預かりした商品が工場に着きました」「ご回答差し上げるまで一週間ほどかかります」といった細かな経過報告がされます。
提出される報告書は、専門用語を使わず、写真やイラストでわかりやすく記されるだけでなく、最初にヒアリングした情報を元に、誠意を込めたお詫びもそえられます。
たとえば「孫と一緒に食べていた菓子に異物が入っている」という「ご指摘」があった際には、「お孫さんとのせっかくの楽しい団欒のひとときを台無しにしてしまい、またご不快な思いをおかけして誠に申し訳ありませんでした」というお詫びが添えられました。
こうした経過報告やお客様の状況に即したお詫びをすることで、「ご指摘」をしたお客様から、「自分の伝えたことに対して親身になって動いてくれている」「ささいなことにも真摯に対応してくれている」と、最終的に感謝が寄せられることも。
この誠実かつ、丁寧な対応が、多くのカルビーファンをつくっているのです。
「まさか」を超える対応が「感動」を生む
カルビーでは、「こうしてくれたら嬉しい」という要望の声にもできる限り応えており、そうした取り組みがさらにファンをつくっています。
ある「バターしょうゆ味」の商品をリニューアルしたところ、数人から「少し酸っぱく感じる」という意見があり、味の微調整をしたところ「酸っぱい」という声がなくなりました。さらに、その意見を寄せてくれた人たちに、微調整した新しい商品を送り意見を求めたところ、「まさか本当に変えてくれるとは思っていませんでした」という感激の声が届いたといいます。
多くの消費者は、「意見をしたところで変えてはくれないだろう」と思っています。しかし、カルビーではたとえ少数の声であっても耳を傾け、労をいとわず反映していくことをモットーにしています。
- 「健康のために塩分控えめの“かっぱえびせん”をつくってほしい」という声が数多く寄せられたことで生まれた「かっぱえびせん塩分50%カット」
- 期間限定の人気商品「ポテトチップスしあわせバタ~」の定番商品化。
- 再発売の要望が高かった「ポテトチップスフレンチサラダ」の復活。
これらも「お客様相談室」に届いた声を反映させたものです。
純粋にビジネスとして考えたときに、「それではコストがかかりすぎるのではないか」「リスクが大きいのではないか」と感じる人も多いでしょう。しかし、ファンが増えれば、その人たちからSNSや口コミで評判が広まり、結果として売上にも大きく貢献します。
ニーズが多様化した現代には、企業そのものを愛してくれる「ファン」なくして成長はありません。カルビーの「お客様対応」からは、本当の「お客様第一主義」の在り方と企業を成長させるヒントが得られるはずです。
(提供: 日本実業出版社 )
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