クリスマスが近づくと、米国人たちはそわそわし始めます。日本では恋人たちのイベントとして注目されがちなクリスマスですが、米国では家族や親戚、友人たちがギフトを贈り合う大切な休暇。「子供にはどんなオモチャやゲーム機を買ってあげようか」「彼女が欲しがっていた立派なドレスを贈ってあげたい」などと思いめぐらせ、気前よくお金を使います。

米国でのクリスマス商戦は、一般的には11月第4木曜日の感謝祭明けの一大セールイベント「ブラックフライデー」からクリスマスイブまでの約1ヵ月を指します。この期間中、米小売業界の年間売り上げの約2割が叩き出されるといわれるため、米国の景気動向を見るうえで重要な指標として、エコノミストたちが毎年注視しています。

Christmas
(写真=PIXTA)

クリスマス商戦の起源

クリスマス商戦の幕開けを告げるブラックフライデーには、大幅割引の目玉商品を目当てに、米国人の買い物客たちは早朝から長い列を作って並ぶのが風物詩となっています。最近では、ネット販売の伸びが著しく以前ほどの行列は見られなくなりましたが、それでも米国の小売業界にとっての一大セールイベントであることに変わりありません。また、日本でも知名度が上がり、一部の国内小売業者が導入しています。

米国では、大画面サイズの高級テレビが希望小売価格の半額以下で販売されるなど、通常では考えられない安値になります。こうした超目玉商品は“ドアバスター”(お店のドアを壊すほどの勢いで買い物客が詰めかけることを意味します)と呼ばれます。たとえ”ドアバスター”が入手できなくても、20%オフから45%オフなどのお買得商品は多数あります。

米国では、サンタクロースについては、トルコの聖人、聖ニコラスの伝説を基にした「シンタクラース」の話を18世紀末にオランダ人移住者が広めたようです。サンタクロースは、19世紀にはお店の宣伝にも使われるようになったそうです。

聖ニコラスは子供の守護聖人ともされているそうで、オランダ、ベルギーなどでは彼の命日の12月6日に子供たちにプレゼントを送るようになったそうです。また、イエス・キリスト生誕を祝って贈り物をした「東方の三博士」の故事も合わさって「クリスマスにはサンタクロースが贈り物をする」という習慣が広まったともいいます

現在のクリスマス商戦は、子供へのプレゼントの買い物の伝統が拡大したものと考えられています(あくまで一説です)。

経済指標としての商戦

ブラックフライデーが終わっても、3日後にはオンライン版ブラックフライデーの「サイバーマンデー」があり、大幅な値引きが続きます。売り手側は、全体的な売り上げが他のシーズンに比べて飛躍的に伸びるため、たとえ大きく値引きしても、それを上回るメリットがあります。

ほとんどの人たちがお互いのために贈答にいそしむ期間なので、米国人の消費者魂に火がつくのだそうです。家族や友人を想う心は、熱狂的な消費へと昇華されるというわけです。

米国では国内総生産(GDP)に占める個人消費の比率が約70%と、日本に比べて約10ポイントも高いのです。年間の小売売上高の約20%を占めるクリスマス商戦は、各小売業者の業績ばかりではなく、米経済全体に与える影響は大きいといえるでしょう。

全米小売業協会は2017年のクリスマス商戦を約6,787億ドル(前年比3.6~4.0%増加)と予想しています。その理由は堅調な米国経済や株式市場の活況等が挙げられるでしょう。

近年、買い物客が地元商店やショッピングモールなど実店舗からオンラインへ流れているようです。2016年のブラックフライデーの実店舗の売上高は、前年比10.4%減少と落ち込みました。一方でネットショッピングにおける売上高は33億4,000万ドルと前年比21.6%も増加しており、そのうち携帯端末からの注文が10億ドルを超えていたそうです。

ショッピングの形態は変わりつつありますが、家族や友人を想う気持ちと、そこから生まれる熱狂的消費は変わらないのでしょう。(提供:お金のキャンパス


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