政府の規制緩和と各社の対応
国内航空会社では2030年頃までに業界全体で8500名のパイロットを確保する必要があると言われており、アジア全体で今後5年間で2万人、将来的には現在の4.5倍にパイロット需要が増加し、世界的にも50万人ほどのパイロットが必要になる見通しです。
国交省ではこうした人材不足の問題に対して、規制緩和で対応しようとしています。例えば、パイロットの乗務時間は国内線で8時間以内、国際線で12~13時間が上限とされていましたが、これを緩和しようとしています。また、60歳以上の乗務は2名のうち1名とされていましたが、この規制も緩和し2名の乗務を認める動きです。
JALでは自社養成パイロットの新卒採用を5年ぶりに来年より再開することを決定しています。ANAでは米国のパイロット訓練会社の買収を実施したり、今年4月よりパイロットの月間平均乗務時間を延長するなどの対応を行っています。LCCへの人材不足への対応としては、自衛隊パイロットの転出を実施することを想定しており、現状のパイロットの人的リソースを最大限生かす施策をとろうとしています。
これからどうなる航空業界!?
先に紹介したとおり、パイロットの育成には時間と多大なコストがかかるだけではなく、マーケットにおける人材の流動性が低く、慢性的な人員不足になりがちでした。また大手航空会社とLCCの間には大きな賃金格差が存在しており、これまで以上にLCC各社のパイロット不足への対応は深刻な問題になることが予想されています。
こうした中で、政府は2030年までに外国人訪日者数を3000万人とする目標を掲げており、羽田、成田の両空港に発着できる航空便に対して、新しい滑走路を増やし、発着数を50%増加を目指しています。
さらに国内だけではなく世界的な航空業界において、パイロット不足の問題は顕著になるでしょう。パイロット人材の獲得競争が世界規模で展開された場合、国内航空会社その競争を乗り越えることができるのか、人々の空の足に歯止めがかからぬよう政府関係ならびに航空各社それぞれには的確な対応を急いでもらいたいものです。