北陸地方の中でも印象が薄く、観光客数も伸び悩んでいた福井ですが、北陸新幹線開通と同時に勝山市の「恐竜化石」が県外から大きな注目を浴びました。

勝山市では、1989年より継続して恐竜化石発掘調査が行われてきました。現在まで、学術的に貴重な恐竜化石や新種の恐竜化石が多数発掘されており、それらは勝山市内にある「福井県立恐竜博物館」に展示中です。

国内でも珍しい大迫力の恐竜化石を展示する同博物館、そこに懸ける福井県と勝山市が恐竜と歩んだこれまでの道のりと、未来に向けた新構想について紹介します。

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(写真=PIXTA)

福井県勝山市は世界屈指の恐竜のまちだった

福井県勝山市が恐竜の化石発掘を始めてから、もうすぐ30年の節目を迎えようとしています。2017年4月には、北海道にて国内最大級となる全長8メートルの恐竜化石が発見されるなど、実は近年、日本全国で恐竜の化石出土が相次いでいます。

その中でも勝山市が群を抜いて多くの化石を発掘しているのは、他の市町村に先立って調査団を結成し、大規模な発掘調査を続けていたからにほかなりません。現在まで新種5種の恐竜化石と新種の卵と思われる化石が発掘されています。

恐竜化石はそれぞれ福井および勝山の名を冠し、「フクイラプトル」「フクイサウルス」「フクイティタン」「フクイベナートル」「コシサウルス・カツヤマ」と名付けられました。

このような発掘調査の成果により、2009年には勝山市は市全域が「ジオパーク」に認定されました。ジオパークとは、貴重な地質遺産に見て、触れて、学び、楽しむことができる場所のことを言います。更に2017年2月、市内で発見された上記5種の新種恐竜の化石発掘現場が国の天然記念物に指定されました。

「恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク」として環境保護・教育活動に取り組んでいる勝山市では、恐竜発掘イベントやジオサイトと呼ばれる遺産を巡る街歩きなどを開催。街中を歩くと恐竜のモニュメントを数多く見かけることができ、子どもから大人まで「わくわくする」街づくりを地道に行ってきました。

北陸新幹線開通で注目を浴びた「福井県立恐竜博物館」

このように、恐竜化石のアピールを続けていた勝山市ですが、観光客数は思ったように増えませんでした。ところが2015年、同市に「北陸新幹線開通」という転機が訪れます。

これにより「福井県立恐竜博物館」を中心に県外からの観光客数が増え、同年には前年比38.4%増の105万人が、翌2016年もさらに伸ばし110万人が訪れる大人気の観光スポットとなりました。

思わぬ大盛況に湧く同博物館、実は2000年の開館以来カナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館、中国の自貢恐竜博物館と並び、世界三大恐竜博物館と呼ばれています。面積3万メートルという広大な敷地内に体験学習も行えるフィールドを備え、恐竜化石研究の拠点としての側面も持つ同博物館は、世界に負けずとも劣らないビッグスケールなのです。

常設展示では44体もの恐竜全身骨格が立ち並ぶ圧巻のゾーンや、地層からわかる生命の歴史など、子どもから大人まで楽しめる展示物が数多くあるのが特徴です。

恐竜が動く!博物館の新構想とは

しかし、子どもも大人も楽しめる魅力の詰まったこの博物館、現在は増えすぎた観光客により、観光シーズンや連休には館内が人で溢れてしまうという問題を抱えています。うれしい悲鳴をあげる福井は、観光客分散とさらなる観光客増加に向け、「第2恐竜博物館」の構想を立てました。

2022年の北陸新幹線延伸と同時に開館予定の第2恐竜博物館では、現在の骨格標本が主体の博物館とは異なり、よりリアルに恐竜のいた世界を楽しめる展示を行う予定です。構想が実現すれば、実物大の恐竜ロボットが動き、太古の世界を再現した館内では大地を踏みしめる感触までも楽しむことができるようになります。

新幹線によってもたらされた観光客をこの先も取り込むことができるのか。福井県と勝山市が継続してきた「恐竜化石への熱意とパワー」があれば、新構想も成功へと導くことができるでしょう。(提供:JIMOTOZINE)