毎月1回マネックス証券チーフ・ストラテジスト 広木隆氏に今後の株価動向などを直撃します。(動画公開日 2017/12/11)

「世界経済の拡大を背景にリスク資産への選好を継続」ーーマーケットの歩き方(2017年12月版)

皆さん、こんにちは。月刊マーケットの歩き方です。早いものでですね、もう12月です。この収録は今年最後ということなりました。

12月なのに半袖のポロシャツで全然季節感ないんですけど、暑いんですよね、オフィスの中が。なので外から来る時はちゃんとコートとか着て来るんですけど、オフィスの中に入るとですね、脱いでしまうという、ウォームビズとかやればいいのに、なんか全然、暖房が入りすぎてるんじゃないかと思うんですけどね。そんなような季節感のない話をしても仕方ないんですけども。

ということで今年1年振り返るというよりは、来年への展望ということだろうと思います。

リスク性資産への選好を今は厚く

早速、資産配分を見ていただきたいんですけど、変えてない。前回からですね、株式中心にリスク性資産にみんな強気になってきているということであります。

マーケットの歩き方(2017年12月)
(画像=マネックス証券、クリックすると拡大画像が出ます)

その根拠は世界の経済が順調に拡大しているということ。特にやっぱり最近、先般のGDPもそうですけれども、日本の経済成長やっぱり強いと。強くなってきたと思います。GDPも上振れて、それを引っ張るのが設備投資ということで。

政府の生産性革命っていうのも、この設備投資の流れを、人手不足と相まってですね、一段と加速させていくんじゃないかなと思います。

こういったことから非常に産業が活況になってきて、経済も今のところ非常にいいバランスで回っていると。これがおそらく来年も続いていくんだろうという仮定に基づいて、このリスク性資産への選好を今は厚くする、資産配分を厚くするべき時だろうと思います。

当然ここまで来るとですね、常にリスクはないのかというような話になってきてて、みんながですね、リスクがないかないかと点検している。これ逆に非常にいいことですよね。

みんながやっぱり楽観的に、非常に浮かれていると、思わぬところからリスクが出て、それがバブル崩壊の引き金になるんですけれども、まずそのバブルっていうものがどこかにないのかっていうことをみんな探し始めてますよね。不動産、一部イギリスだとか、あるいはカナダであるとかニュージーランドであるとか、そういったところの住宅価格は非常に高いんだけれども、ごく一部であると。

中国の債務問題はどうか?

よく言われるのは、中国の債務って話がありますけど、これも全然……全然でもないですけど、そんなに気にするレベルではないし、すでに中国はそのことを十分分かっていて、抑制に動いています。不動産価格なんかも頭打ち、北京とか上海とかではむしろ逆に価格が下がっているところもあると。非常にローン規制とかも厳しいです。

彼らやっぱり、よく学んでるんですよね、日本の80年代に起きた不動産バブルみたいなことは繰り返さないというようなことになっていて。

ただやっぱり債務が多いのは地方政府ですよね。こういったところからですね、色々なシャドーバンキングを通じて、理財商品を通じて集めていたマネーが地方政府のプロジェクトなんかに流れ込んでる。こういったものは一部で不良債権化してくるんだと思うんですけども、その比率たるやですね、全然少ないということです。

最大の強みは、やっぱり中国は財政が強いということですよね。例えば、よく言われる日本の政府の債務ですけど、これ200%です、GDP対比で。政府債務1000兆円っていうやつは。日本のGDP500兆円の倍以上ある。ギリシャでさえ、百何十%なのに日本の債務は突出して悪いと散々引き合いに出されますけれども。それの話をするときりがないので、それはちょっと置いておくとして。

ヨーロッパの債務危機がありました。ギリシャを筆頭に南欧、PIIGSなんて言葉も懐かしい響きで言われてますけども、彼らはやっぱり財政状態が非常に悪いと。それに比べるとですね、中国なんて債務問題とか言われますけれども、債務のGDP比率はわずか4割程度じゃないですか。半分もいってないという。

やっぱりGDPが拡大していて、その伸びている経済に対して債務があるのはむしろ当然なんだけれども、その比率が非常に低いということですから、対して問題にならない。

仮に100歩譲って、何か債務が問題を引き起こしたとしても、それは中国内部の問題、国内問題で完結する。そこに欧米、西側の金融機関が何か貸し込んでいて、金融危機に発展するようなことはまったく考えられないということもある。

中国っていうのはリスクにはならないし、むしろ中国のものすごい内需型の民間の経済の発展っていうのもびっくりするくらいですから、そういったところにどんどんシフトしていくんだろうなと思いますね。

みんながリスクがどっかにないかと点検してもなかなか見えてこない、それがちょっと気持ち悪いというか、怖いということなんでしょうね。リスクは何かと言われると、リスクが見えないことだということしか言いようがない。いつもこう、備えておくということが非常に必要だと思います。

つまり、見えない敵にいつも備えるっていう、これは難しいことなんですけども。ちょっと不謹慎なたとえかもしれないけれども、地震なんかそうじゃないですか。やっぱり天災は忘れた頃にやって来るとはよく言ったもんで、やはり地震大国にある我々というのは、日頃からそういう震災に対する備えっていうのは欠かすべきではないし、北朝鮮の問題もまったく同じですし、予想不可能なものに備えはしておくということです。

ただ、それで気を揉むことはやめるということです。これはもういろんな人が言ってます。昔、松井選手なんかもね言ってますけれども、偉い人みんな同じようなことを言ってます。自分がコントロールできないことを気にかけても仕方ないんだと、自分ができることだけを一所懸命やろうということです。

だから地震がいつ起こるかわからないとか、北朝鮮のミサイルが飛んでくるかもしれないと、くよくよ悩んでもそんなこと仕方ないんで、自分がなんとかできるんだったらですね、ミサイル阻止とかあるいはこの地震がある、あるいは北朝鮮のそばにある日本から脱出して地震のないところに暮らすんだと。香港とかですね。そういったことができるんだったら、そうすればいいけれども、それができないんだったら、あんまり考えてもしょうがないと。

だったらできることは何かっていうと、やっぱりそうなった場合に、もしも有事が起きた際にどういう行動をとるかというのを日頃から準備する。これはできることなので、やっておくということが必要じゃないかなと思います。

ビットコインはバブル?

あれこれリスクはないかということでですね、要はバブルはないのかということで、一つ挙げるとすれば、ビットコインということでしょう。

最近、すごく話題になって、何しろ1年間で20倍っていう、とんでもない話ですけれども。まさにこれはバブルと言っていいのかわかりませんが、そのバブルをどう定義するかですよね。

マーケットの歩き方(2017年12月)
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あまりにも実態、ファンダメンタルズからかけ離れた価格がつくのをバブルと言うんだったら、ファンダメンタルズがないから、もともと。実勢価格も理論価格もないものなので、そう言った意味では純粋なバブルにはならないんだろうけれど、チューリップの球根、オランダのああいうようなものに近いのかなと。

実態は金(きん)に一番近いと思いますけど、ビットコイン自体は。金価格がこんなに上がったことはないので、チューリップの球根、あれをバブルと言ったんだけれども。あれは厳密に言うとチューリップの球根のオプション価格がそうなったのかな? だから、そう言った意味ではバブルと言っていいんだと思いますよ。実態はチューリップの球根という価格があり、それに対するオプションが異常な値段をつけたっていうことでいけば、やはりそれはバブルなんだろうけど、これ今、オプションも先物も始まってない段階でこんなになっているのでなんとも言いようがないのですが、一言で言うとバブルだし、投機だし、そういったものの帰結としては急落する可能性ってのは非常に高い。事実、何遍も繰り返してますけどね、その急落を。

これも投機なので、博打ですから、ギャンブルですから、どうなるかなんて予想したってまったく意味がないので。

ただ激しい値動きで、すごいギャンブルをやっている人たちがいるということですね。じゃあこれが大暴落して大問題になるかって言ったら、ならないわけですよね。つまり投機としてやっている人たちだけなので、これが例えば一般大衆がですね、隣の人も右の人もみんなこぞってビットコインにお金を突っ込んでビットコインが急落したら破産して、大量の破産者が街にあふれて、破産者だらけになってしまうっていうことであれば問題ですけれども。そんなことに今なってないじゃないですか。なので仮に急落したとしてもたかが知れてるということであります。

ビットコインバブルが崩壊しても金融危機にはならない

マーケットの歩き方(2017年12月)
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これ繰り返しになりますけれども、最近の金融危機というか、リセッションというか、不況とか、経済的なリセッションと言ってもいいですけども、そういったようなものというのは全部、金融危機に結びついているんですよね。

金融機関がおかしくなって、景気がおかしくなって、そのひどい症状がクライシスというか危機に発展すると。リーマンショックの例を出すまでもなく、その前のITバブルの崩壊もIT企業がどうかなったわけじゃなくて、IT株が崩れたから、要は株式市場が急落し、そこの株式市場っていうのは、いろんな人のエクスポージャーがありますから、特にやっぱり痛むのは金融機関なので、それが景気後退の引き金になった。

ただITバブル崩壊は危機にはならなかったですよね。その前は97年に1回、LTCMの破綻っていうのがあって、ヘッジファンドですけど、ジョン・メリウェザーとかがやってたやつですが、これが本当に日の目を浴びて破綻すると危機になるんで緊急融資で救ったというケースはありますけども。

90年代の初頭は商業用不動産、アメリカの商業不動産のバブル崩壊でS&L(セービング&ローンズ)が破綻して、リセッションになりました。要はずっと80年代のバブルが破綻した後、住専問題に代表されるように、日本の金融機関、不良債権を抱えてバタバタ潰れていくというようなことから、日本版金融危機というのもありました。

だからすべてに金融機関がからんでおかしくなると。ビットコインに金融機関が――既存のですね――金融機関がからんでいるかというと絡んでないんですよ。むしろJPモルガンのジェイミーダイモンなんてのは、これやったら即刻クビにするみたいなね、詐欺とかまで言ってますけども。ゴールドマンは決済業務をやるとかなんとか言ってるけれども、直接手は出してなくて、ちょっと一歩引いたところにいますけど、要はまだこれにですね、例えばトレーディング業務とか、あるいはこれをETFに仕立てて、あるいは証券化していくというような業務に、既存の金融機関が本格的に参入していないので、危機にはならない。

だけど一番怖いのは、今後、何か本当に金融危機みたいなものになるかどうかというのの見極めは、こういうビットコインなどの仮想通貨に大手の金融機関がエクスポージャーをとる。つまり、ここの価格変動のリスクをとって商売をするってことですね。

そういうことし始めると、それは危機につながる可能性っていうのは十分あります。ただ現状ではやってる人は、ほとんど個人投資家だけなので。しかも現物のみじゃないですか、これから先物が、始まったのかな?いよいよ普及してくるということですけれども、今の所はビットコインが急落しても、バブル崩壊で金融危機が起こるということはないということなので、静観してる、傍観してればといいんじゃないかなと思います。

そういったことで、繰り返しますけど、危機の火種になるようなものが見えないことがリスクなんですけども、常に何かそういったことが起こり得るんだという心構えと、あと、ゲームプランですね。そうなった時に処分するべき株や何があっても絶対売らないでずっと持ち続ける銘柄、そういうものを切り分けて、自分の資産の整理をして、すぐにアクションを取れるように日頃から準備をしておくということが肝要かと思います。

それでは今年1年お世話になりましたけれども、来年こそはもっともっと素晴らしい資産運用の年になることを祈念いたしまして、今年最後のメッセージとしたいと思います。ありがとうございました。

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(情報提供:マネックス証券)

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