世界中から注目を浴びるビットコインに対し、いまなお悪い結末を迎えるとの警鐘を鳴らし続けるウォーレン・バフェット氏や、ビットコインで自ら100万ドル以上の利益を得たにも関わらず、「ビットコインに投資してはいけない」と警告する米国の起業家グラント・サバティエ氏など、ビットコインを含む仮想通貨を「バブル」と見なす専門家も多い。
昨年「ビットコインは詐欺」発言で市場をゆるがしたJPモルガン・チェースCEO、ジェイミー・ダイモン氏の「前言撤回」の真相も含め、根強いビットコインへの逆風を考察してみよう。
バフェット氏「ロングでもショートでも保有しない」
仮想通貨に嫌悪感をあらわにする一派も多い。バフェット氏もそのうちのひとりで、ビットコインを含む仮想通貨全般に対し、「悪い結末をむかえる」との予言を曲げない。
つい最近もCNBCのテレビ番組に出演した際 、「100%確実に」仮想通貨バブルがはじけると発言している。ただし「それがいつ、なにがきっかけで、どのようなタイミングで起こるかは分からない」ことも認めている。
すべての仮想通貨に5年満期のプットオプション(期日に売る権利)が利用できるなら購入するが、「ロングでもショートでも保有しない」とかたくなだ。プットオプションは期日までに原資産価格が値下がりしていれば、買い手は利益を得るという仕組みだ。つまり「5年後にはビットコインの価格が下がっている」と仮定しての発言である。
「自分の得意分野に投資しても損することがあるのに、まったく未知のものに投資するリスクは背負えない」とのことだ。慎重派のバフェット氏らしい見解ではある。
ビットコイン長者 「ビットコインに投資してはいけない」
ビットコインで100万ドル以上を稼ぎだしたグラント・サバティエ氏も、「ビットコインは買うな」という警告を発している。
サバティエ氏はミレニアル世代をターゲットにしたパーソナルファイナンス・コミュニティー「ミレニアル・マネー」の設立者兼、学術機関向け戦略コンサルティング企業エデュヴァンティス(Eduvantis) のヴァイスプレジデントでもある。
2013年1枚72ドルだったビットコインに投資した5000ドルは、サバティエ氏が昨年12月、CNBCに寄稿した時点で115万ドル相当に膨れあがっている。株への投資で100万ドル以上の利益をあげたサバティエ氏だが、そこにたどりつくまでに5年間、週80時間働くという激務をこなした。一方保有していたビットコインはというと、2017年だけで100万ドルの利益をあげた。
サバティエ氏は「これほど楽な投資はない」とする反面、読者から寄せられた「生涯分の貯蓄をビットコインに投資すべきか」「人生初の投資として5000ドルを投資すべきか」といった相談を、「悪いアイデア」と否定している。
「ビットコインには一銭の価値もなかった」という最悪のシナリオも予想?
ブロックチェーンや仮想通貨の基礎も理解していない一般人までが、いまやビットコインを買っている。「自分がなにに、なぜ投資しているか」を把握しておくことは投資で成功する法則のひとつだが、猫も杓子もといった現状では、ビットコインの価値を正確に把握することは困難だ。
「一日で価格が20~30%も変動するのは、それだけ基盤ができていない証拠」というのが、サバティエ氏の理論だ。こうした狂気とも思える市場の熱狂は、もはや「投資」ではなく「ギャンブル」の域に達している。ふたを開ければ「ビットコインには一銭の価値もなかった」という最悪のシナリオも十分に起こり得るというわけだ。
JPモルガンCEOーブロックチェーンは評価、仮想通貨には相変わらず懐疑的
昨年9月、「ビットコインは詐欺」発言をした直後にビットコイン価格が急落したJPモルガン・チェースのCEO兼会長ジェイミー・ダイモン氏。「前言を撤回した」という報道も出回っているようだが、かならずしも拒絶感を軟化させたというわけではなさそうだ。
今年1月、Foxビジネスの取材に応じたダイモン氏は「ブロックチェーンという先端技術自体は評価する」とし、例えばブロックチェーンを利用して「クリプトドル」や「クリプト円」を発行することも可能だと述べた。
しかしブロックチェーンを利用した既存の仮想通貨に関しては「大きく成長した時の政府の対応が常に気にかかる」と根強い懸念を示しており、ICOに関しては「(各ケースを)個別に検証すべき」と慎重なスタンスを保っている。
「ビットコインを詐欺呼ばわりした事実を後悔している」とは認めたが、それはあくまで自分の発言が、おそらく本人が予想していた以上に市場を煽ったことに対する後悔ではないだろうか。総体的に仮想通貨関連の話題については、「あまり興味がない」と締めくくった。
コインデスクのデータによると、ビットコインの価格は過去1年で1500%増。しかし昨年12月中旬に1.9万ドル台を記録したのをピークに、急下降傾向にある。12月末には1.2万ドル台まで落ち込み、2018年1月15日現在では1.3万ドル台まで回復しているものの、先行きはだれにも読めない。
ここでは否定派の意見を取り上げたが、肯定派が多いことは価格の変動を見れば一目瞭然だ。そもそも投資自体が先の読めない要素をふんだんに秘めている。バフェット氏やサバティエ氏が指摘しているように、歴史が浅く、本来の価値が明確になっていない仮想通貨であればなおさらのこと。
ICOなど一連の流れを経て、今後仮想通貨が次の成長段階に進むことは間違いなさそうだ。それがポジティブなものになるか、ネガティブなものになるかは、その時がくるまで分からない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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