「よい物件が見つからない」
昨今の不動産投資ブームで、物件価格は高騰し、また競争も激しく、良い物件があったとしてもすぐに購入希望者が殺到し、なかなか手に入れることが難しいという、まさに競合ひしめくレッドオーシャンです。
この最大の難関を解決する方法はないものかと模索した結果、「土地からはじめる新築不動産投資」が、今の時代におけるブルーオーシャンな投資法であると確信に至ったのです。
この1~2年の高騰した市場の中でも、首都圏で利回り10%以上の物件を仕込むことに成功し、もっとも高いもので12%を超える物件も手にすることができた投資法を紹介します。
(本記事は、脱公務員大家氏の著書『失敗のしようがない「新築」投資の教科書』=ぱる出版、2018年1月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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なぜ今、「新築」不動産投資なのか
近年の不動産市況をみれば、金融機関による融資が緩くなった4~5年前を境に一気に新規参入者が増えて、物件価格が高騰していきました。
融資が出ることと物件価格には相関関係があり、「融資が出やすい→購入できる新規参入者が増える→物件が少なくなる→物件価格が高くなる」という流れが生まれます。
そうした中で、中古の物件の価格はひと昔前よりずいぶん高くなってきました。
一般的に「新築」と「中古」では、「中古」の方が割安に感じてしまいがちですが、実際のところをいえば、最近は「中古=割安」ではなくなってきており、「新築」の利回りとさほど差がないか、逆に割高なものまで出てきました。
古い物件と新しい物件があった時、共に収益性が変わらないならどちらを選びますか?
同じであれば新築を選ぶ人が大半でしょう(実際には新築も市場に出ているものは欲しい人が増えすぎて高騰してきていますが......)。
ここで断っておきたいのですが、同じ新築でも区分マンションは買ってはいけません。区分マンションとはマンションの一室で、新築ワンルーム投資は、投資用のワンルームの区分マンションを新築で購入することをいいます。
新築の区分マンションは節税を売り文句に、いつの時代も業者の利益がたくさん乗っているため割高になっています。
新築は融資が受けやすい
ここで新築投資のメリットを紹介しましょう。新築のメリットの大きな1つ目は、融資が受けやすいところです。
一般的に融資をする金融機関は、建物の耐用年数を基に融資する期間を決めます。
中古の物件の場合、融資期間は「耐用年数―経過年数」になり、築年が経てば経ったものほど融資期間は短くなります。融資期間が短くなると、年間の返済額が大きくなるので、利回りがかなり高くないと収支が回らなくなってしまいます。
収支が回らない物件には、銀行は融資することができないので、自ずと融資は厳しくなります。
一方、新築の場合であれば、経過年数は0(ゼロ)になりますから、耐用年数が丸々融資年数になります。
RC造に関しては新築でも47年融資期間を取る金融機関は少なく、長くても35年のところが多いです。反対に、木造の融資期間を30年で見てくれる金融機関も増えてきています。
そうなると、融資期間が長く取れますので、年間の返済額は小さくなり、利回りの低い物件でも利益が出やすくなり収支が回るようになります。
また、融資額が大きくなっても収益がしっかり出れば、手出しをせずに融資で物件価格の全額を賄う「フルローン」も可能になることもあります。
一昔前は、こういった収益性を重視した評価より、担保性を重視した評価(積算評価)をする金融機関が多かったです。近年は収益性も重視するように変わってきていましたが、直近では再び担保性を重視する傾向になってきているようです。
新築はキャッシュフローがプラスに出やすい
収支が回るということは、キャッシュフロー(家賃収入―返済額―諸経費)がプラスであると言えます。実例で見てみましょう。
価格6000万円、家賃5万円の1K10戸、利回り10%の木造の物件が2つあり、物件Aは新築、物件Bは築10年です。
仮に融資条件を、融資額6000万円、金利を1%、元利均等返済というところまで同じとし、融資年数をAは22年(22―0年)、Bは12年(22―10年)とします。
一旦、諸経費は考えないものとすると、キャッシュフロー(家賃収入―返済額―諸経費)は、物件Aが24万6718円、物件Bが5万7661円となり、その差額は18万9057円にもなります。
別の見方をすると、物件Aは半分の5部屋が空くまでキャッシュフローがマイナスになることはありませんが、物件Bにおいてはわずか2部屋でマイナスになってしまいます。
黒字で経営するか、赤字で経営するかのラインは、安心して経営する上でとても大切だと思います。
厳密には、同じ金利で返済額が大きいということは、「借金がより減っている=資産は見えない形で増えている」ことになるのですが、見える形で手元に残るキャッシュというものは、投資をしていく上でとても大きな意味を持ちます。
急な出費に備えられたり、次の物件に再投資できたりするからです。投資初期は特に目に見えるキャッシュにこだわりましょう。
新築は修繕・設備費用がかかりにくい
キャッシュフロー(家賃収入―返済額―諸経費)の計算式の諸経費の中に、修繕・設備費用があります。
修繕費は何かが壊れたり、見た目が悪くなったりした時に直すため必要になってくる費用のことですが、新築の場合は向こう10年ほどそれがほとんどかかりません。
私は中古の物件も家族で保有していますが、管理会社から「壊れた」「水漏れだ」等という連絡がくるのは、ほとんど中古の物件です。これが、外壁塗装や屋上防水といった大規模修繕ともなれば、何百~何千万円という資金が一気に消えてしまうのですから恐ろしいです。
新築の場合は、そんなにすぐ壊れることはありませんし、たとえ躯体に大きな問題があったとしても、10年間は建物保証がついており、保証を使って修繕することで費用をかけずに済みます。
また、中古の物件で退去があると、次の入居者を募集するのに新しい設備を入れて競争力を上げることをよくしますが、これが新築の場合ですと、そもそも最新の設備を取り入れて建てていますので、新たな設備費用も5年以上はかからないで済むでしょう。
修繕・設備費用というのは、中古の場合にいつ生じるのか読みにくいので、常に家賃収入の中から多めに見積もって蓄えておくべきですが、新築の場合は向こう10年くらいほとんど手を煩わされないことが予測できるので、必要最低限に止めておき、再投資など資産の有効な活用ができます。
※実際のキャッシュフローと税金まで考慮した、帳簿上のキャッシュフローは違うのですが、ここでは説明を省略します。
新築は入居付けに強く、運営もしやすい
新築の大きなメリットの二つ目は、入居付けに強く、運営もしやすいということです。
常に新しい設備が求められ、最近ではネット通販による需要で宅配ボックスが求められています。これは不動産に関わらず「新しいもの好き」という日本人の特性があると思います。
その反対で、欧米では古い物件ほど味が増して好まれる傾向にありますが、日本では「新築プレミアム」という言葉があるくらい、新しいものに付加価値を感じる人が多いようです。
新築はなんといってもキレイで、設備も最新のものが揃っていて、住環境として優れています。
住環境が優れておれば、家賃もそれだけ高くなるので、入居者の質も高く保たれるであろうと想像します。
運営をしていく上で、入居者トラブルは切っても切り離せない問題ですが、その入居者の質が高ければ、そういった不安要素も最小限に抑えることができます。
中古の物件ですでに入居者がいる場合ですと、オーナーはなかなか介入できませんが、新築の場合であれば、入居者選びからオーナー自らが介入することもできます。
不動産賃貸業は、人が生きていく上で必要な「衣食住」の「住」を司るので、古くて住み心地の悪い物件を、新しく住み心地のよい物件に入れ替えていくことは、社会的にも大変意義のある事業であると確信しています。
新築はプランと一工夫で収益性アップ
これは入居付けの向上にもつながるのですが、新築はプランと一工夫により収益性を上げることもできます。
入居付けを考える上で、物件周辺に住む人の属性や傾向を探るマーケットリサーチが重要になってきます。
たとえば、近隣に調理師を養成する専門学校があって、その学生たちが入居者として見込める場合を考えてみましょう。さらに調査を進めると、その学生は安全面でオートロックを、また調理師系ということで一般的なものより広めのキッチンを求めていますが、あいにく近隣にはそれらを満たす物件が少なかったとします。
その場合、オートロックを導入し、広めのキッチン設備を取り入れることにより、周りに建っているありふれた特徴のない物件に比べれば、高い家賃を払ってでも住みたいという入居希望者を集めることができて、収益性もアップすることができるでしょう。
これが中古の場合であれば、新たにオートロックを導入する工事のコストは新築より高くなりますし、広めのキッチンは間取り的に難しいかもしれません。
お金をかけなくても、「女性専用」といったようなコンセプトで一工夫することも、中古より新築の方が容易にできると思います。
新築は、地域の需要に応えた物件作りが可能であることが大きなメリットになります。
ターゲットとする地域にはない物件を作れば希少性が生まれ、それが収益性のアップにつながります。
新築不動産の3種類~建売・売建・土地から~
続いて、新築不動産の種類についてご紹介したいと思います。
【建売新築】業者が販売する、完成後の土地付き新築物件を購入するもの。
【売建新築】業者が販売する、建物のプランの入った完成前の土地をまず購入し、そこから完成後の建物も購入するもの。
【土地から新築】自分で土地を探し、そこに建物のプランを入れた後に土地を購入し、完成後の建物も購入するもの。
建売新築と売建新築は、業者が企画したものを購入することになります。
建売新築の場合、完成している物件を買うので完成までの期間を待つことなく、すぐに入居付け(場合によってはすでに入居者が付き始めているものも)でき、収入がすぐ入ってくるのがメリットです。その逆でデメリットは、前述したオーナー主導でプランや一工夫を挟む余地がないということです。
売建新築の場合、完成するまでに時間がかかるというデメリットはありますが、オーナーも多少はプランや一工夫の意見を取り入れてもらうことができるということです。共に、業者が企画し基本的にはお任せになるので、オーナーの手間はかからないところが共通のメリットです。
最後に、今の高騰した市場の中でも、収益性の高い物件を作り出すことができる土地から新築をおススメしたいと思っております。
「土地から新築となると、手間や専門的知識が必要で敷居が高い」と思われている方が多いのではないでしょうか。実際、全部業者にお任せするよりかは手間ではあります。しかし、方法と流れさえ抑えてしまえばそこまで大変ではないです。何より業者の中間マージンがない分高利回りの物件を手にすることができるという、手間をかけて余りあるメリットがそこにはあります。
「新築」不動産投資のデメリットとは?
ここまで新築のメリットをお伝えしてきましたが、もちろんデメリットもあります。
まず、「完成までに時間がかかる」こと。土地から新築を建てる場合も、融資付けから完成引き渡しまで、最低半年はかかりますし、RCの大規模なものは構想から完成まで2年くらいかかるものもあります。その間、もちろん賃料は発生せず、頭金で入れたお金はグリップされてしまいます。土地の融資に対しての期中金利負担も発生します。
次に、新築は「建設後は価値が下がっていくのみ」という点が挙げられます。
建物は言うまでもなく劣化が進んでいきますし、新築というのは最初の入居者さんだけの特典で、一回でも人が住んだ瞬間に築浅とは言いながらも中古の仲間入りです。
家賃も、新築プレミアムと呼ばれる最初の家賃が最大で、その後は下落の曲線を描きながら、徐々に相場家賃に落ち着いていくことになります。
最近は、新築の着工件数が増えすぎて、新築プレミアムと呼ばれるご祝儀家賃さえ存在しなくなった地域もあるようです。
脱公務員大家(だつこうむいんおおや)
不動産投資家で楽待コラムニスト。1985年生まれ。福井県越前市出身。大学進学時に上京し、その後東京都で地方公務員として社会人生活をスタート。2015年に父親名義で新築不動産投資を始め、その後も家族名義で不動産を買い進める中で、「土地からはじめる新築不動産投資」に行き着く。土地から新築を建てていく中で、首都圏でも利回り10%以上をコンスタントに達成、12%を超えるものもある。