不動産投資が成功したか失敗したかは、最終的に利益が残ったのか、つまり売却までわからないと言われています。

たとえ物件を保有している期間中はプラスのキャッシュフローが出ていても、売却時にそれを上回る大きな売却損(キャピタルロス)が出れば、その投資は失敗であったことになります。

逆に、物件を保有している期間中はキャッシュフローがマイナスであっても、売却時にそれを上回る大きな売却益が出れば、その投資は成功したことになります。

そういう意味でも不動産投資は、「出口=売却」までを見据えて始めるべきです。そして、この出口を見据える点において、今の市場で土地から新築投資法は、かなり優位性のある投資法であるといえるでしょう。

(本記事は、脱公務員大家氏の著書『失敗のしようがない「新築」投資の教科書』=ぱる出版、2018年1月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

失敗のしようがない新築投資法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

【関連記事 「新築」投資の教科書】
・(1)  脱公務員大家が教える「失敗のしようがない新築投資法」とは
・(2)  不動産投資で圧倒的に低い金利で借りる方法
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「土地から新築」の入り口は最高!

失敗のしようがない新築投資法
(画像=PIXTA)

「安く仕入れて、高く売る」

これはビジネスの大原則で、同じことが不動産投資の世界にも当てはまります。つまり、

「市場より割安な物件を仕入れて、市場で売られている価格で売り抜くこと」

ができれば儲かるわけです。

それは中古物件にも言えることですが、中古には滞納リスク、問題入居者、建物の瑕疵など、外から見えないマイナスポイントがあります。

それに加えて、割安な中古が市場に出てこない状況です。新築も、すでに建売商品などは割高になってきているのは先述した通りです。

しかし、土地からの新築投資法であれば、間に業者を挟まず、割安な土地を仕入れて、コスパの良い建設会社で建物を建てることにより、市場の利回りプラス1~2%高い物件を仕入れることができます。

その結果、キャッシュフローも出ますし、たとえ退去で家賃が下がったとしても、もともと安く購入しているため、売却を考えた場合は利益が出る形を迎えやすいのです。

極論すると、物件が建った瞬間から、市場に売れる利回りで売り出せば、確実に利益が得られる......つまり、買ったと同時に勝ちが決まる不動産投資となるのです。

これが、今の市場でも優位性の高い土地から新築投資法の真髄です。

購入する時から売却=出口のことを考えるべし

「不動産投資は、購入した時点で成功か否かが決まる」という言葉すらあります。

先述してきた内容を返せば、「割安に購入すれば、成功が決まる」ということになりますが、「購入時に、プラスで売り抜ける出口を想定しておく」という点が重要になってくるのです。

これから20~30年先の、遠い未来まで正確に読むことは誰にでも難しいことです。ただし、1~5年後までの近い将来なら、ある程度の予測をすることは可能ではないでしょうか。

ここで予測するのは、金融機関の融資姿勢です。融資姿勢が積極的であれば売却時の利回りは低くてもよいのですが、もしも融資姿勢が消極的であれば、売却時の利回りを高く設定しておかなければいけません。

短期スパンの場合
まずは、予想できる範囲の短期スパンで売り抜けられるかを具体的に想定してみましょう。シミュレーションソフトを使って、残債の減りと、残債での売却利回りが実現可能なのかを検討します。

シミュレーションソフトについては、玉川陽介さんの『不動産投資年目の教科書:これから始める人が必ず知りたいの疑問と答え』(東洋経済新報社)の特典シミュレーションソフトを私は活用しています。

このとき、売買にかかる手数料分も考慮しなければいけませんが、最低限として残債で売れれば、保有期間中のインカムゲイン分はプラスで投資が成功したと言えるので、残債額で売却が可能なのかはシビアに判断していきたいところです。

割安で土地から新築を仕込めた場合は、建ったと同時にすぐ売ってしまってもいいわけですから、短期スパンで売り抜ける出口は描きやすいです。

長期スパンの場合
次に、長期のスパンに関してですが、これも新築には優位性があります。 耐用年数と融資期間の関係から、耐用年数が長く残っていた方がキャッシュフローはプラスで回りやすいので融資も出やすくなります。

新築RC造の場合なら築年が経っていても、次に買う人は、耐用年数47年―経過年数17年=30年の融資期間を得ることができ、融資が引きやすい状況であると言えます。

金融機関の融資姿勢も、厳しくなったり緩くなったりといった波がありますから、当面は融資が厳しくても、「次の緩くなる売り時まで保有して待つ」という計画も立てることができます。

しばらくは保有することが前提だとしても、「売却のことはしばらく経ってから考えればいいや」と、ただ放置しておくのではなく、時代の流れに応じて「売却という出口」を、いつとってもいいように常日ごろから考えておくことが大切だと思います。

その心の備えがあるほど、不測の事態が起きた際でも素早く行動することができる人です。

「持ち切る」という発想

購入時に想定しておく出口を、「持ち切る」ことも考えられます。

借り入れがなくなるまで持ち切ることができれば、その後は入居者が減ってもさほど気にすることはありませんし、運営期間中に貯まったキャッシュや、無抵当になった土地を担保にすれば、上物を建て替えるという選択もできます。

持ち切る選択肢を取る場合で、一番外せない要件は「立地」だと思います。

20~30年に渡って収益を生み続けることが前提ですから、今後の人口減少とコンパクトシティ化に進む日本において、長期運営が見通せるエリアは限られてくるでしょう。もちろん、それ以外にも様々な運営上の取り組みが必要になってきます。

また、早期売却と比べてみれば、資金の回収速度が大きく違います。

年間で100万円のキャッシュフローを生む物件ならば、1000万円を貯めるのに年かかりますが、これを売却すれば一瞬で1000万円の売却益を取ることも可能です(もちろん相場より安く仕入れられた場合に限る)。

今すぐ手元に残る1000万円なら、すぐに再投資することも可能ですから、10年後に手に入る1000万円より価値が高いとも言えます。

そうやって早期回収を繰り返すことで、早期売却を出口とするスタンスは、持ち切りを出口とするスタンスよりも、規模を拡大するスピードが格段に上がります。

ただし、売買には仲介手数料や各種税金も多くかかりますし、ある程度の規模がなければ、売買を繰り返すこと自体が難しいことも覚えておかなければいけません。

新築のデッドクロスと売り時

減価償却額が元金返済額を上回ることを「デッドクロス」といいます。

不動産経営がデッドクロスに陥ると、帳簿の上では利益が黒字でも、手元資金がほとんどなくなり、黒字に対して課税される所得税により、収支がマイナスになることもあります。

減価償却費は、不動産を購入した年に一括して計上するのではなく、利用可能な年数に分割し、各年毎に経費として計上します。

ちなみに、不動産のうち土地に関しては、減価償却を行わないので注意が必要です。

減価償却費は、現金の支出を伴わない帳簿上の費用ですから、減価償却費を計上した分だけ経費も増え、利益を圧縮することができて節税につながります。

これに対して毎月のローン返済はキャッシュアウトが伴います。しかし、経費として計上できるのは、融資の返済額のうち、利息相当部分のみで、元金返済部分については経費として計上することができません。

また減価償却費とは反対に、元金返済については現金の支出があっても、経費計上しても利益を圧縮する効果はないのです。

さらに、元利均等返済の場合はローンの返済が進むほど、ローン支払い額のうち、元金返済部分が増えていきますので、経費に計上できない現金支出額だけが膨らんでいきます。

その結果、いつかは減価償却額を元金返済額が上回り、「デッドクロス」に陥ってしまうのです。

中古物件は新築物件に比べて、築年数が経過している分、減価償却ができる期間も短くなります。

そのようなことからも、古すぎる中古物件を購入した場合は、デッドクロスに陥るまでの期間が短くなるので注意しなければいけません。

このデッドクロスの対策の1つとして、「売却」という手段で乗り越える手があります。それを売り時と判断する場合もあります。

それに比べて新築物件ですと、減価償却のできる期間が長く取れますから、融資期間を耐用年数に合わせて引いている限りは、デッドクロスに伴うリスクはほとんど考えなくても大丈夫です。よって、デッドクロスを意識した売却という考え方は必要ありません。ただし、新築木造に年の融資を引いた場合は、本来の耐用年数である年を超えた、次の年からデッドクロスのリスクを考える必要があります。

これらは、事前のシミュレーションである程度は想定することができますので、この場合はデッドクロスを意識した売却も考えておくとよいでしょう。

家賃下落から最適な売却時期を考える

最適な売り時を考える上では、家賃下落との関係がもっとも重要になってくる問題です。

新築の場合は最初がもっとも賃料が高く、その後に下落していく一方ですが、最初の10年の下落率が大きく、その後はなだらかに下落していく傾向にあります。それを均して考えると、経年による家賃の下落は概ね年次1%になるようです。

新築時の本体価格が1億円の物件で、家賃年収1000万円、表面利回り10%の物件があったと仮定すれば、10年後には家賃年収が900万円になっていることになります。

10年後、同じく表面利回りを10%で売却しようとすれば、本体価格は家賃年収900万円÷10%=9000万円に下がります。10年前に比べて同じ利回りでも、1000万円も本体価格に差が生じます。

家賃が下がるから売却時の本体価格も下がることになるので、家賃の下落をなるべく小さくしてあげれば、売却時の価格も高い水準を保てます。

更新のタイミングで家賃交渉が入ってきた場合は、家賃が5万円の部屋だとしたら、フリーレント1ヵ月は、2000円×24ヵ月=48000円となり、次の2年間は家賃を2000円下げる以上のお得感があることを入居者に納得させて、フリーレントをしてあげると効果的です。

また、平均1%の家賃下落とは、マクロで見た場合の数値で、実際の運営をミクロで見ていくと実態は違ってきます。

単身向けの間取りですと、平均すれば2~4年間くらいの入居期間と言われています。

学生を例にして、4年間は住んでもらえることを考えると、この4年間は新築時から家賃の下落はなく、4年後に部屋が空いた時に、新築でなくなったこともあり一気に家賃が下がる場合があります。

そう考えると、家賃が下がる前の3年目に売却したほうが家賃は高く保たれているので、高く売却することが可能であると判断できます。

築年数が経てば経つほど家賃は下がりますし、売却時の利回りも高くしていかなければなりません。

どのタイミングで売却することが最適かを考える際は、当初に家賃下落率1%でシミュレーションをした上で、ある程度の売り時を考えておきます。

実際に運営していく中で逐一、今年に売る場合と来年に売る場合では、どちらが利益を最大化できるかを検討していくことが大切になります。

新築木造の利益を最大化する売却時期

私が考える新築木造の利益最大化を狙う売却時期は、築4~6年です。その理由として、以下の5つの理由が挙げられます。

・新築とほぼ同等の利回りで売り出せる
・まだ新築から退去が出ていない場合もある
・築10年に近づく程家賃の下落率が大きい
・築10年を過ぎると修繕も必要な箇所が出てくる
・築10年以内であれば、次の買主に30年の融資期間を出すノンバンクがある

が挙げられます。築年が一つの区切りになると思うのですが、先述したように早めに利益を取るメリットや、家賃の下落、売却利回りを踏まえてこのように考えています。

また、「築浅」と呼ばれる物件は、あまり市場に出回りませんから希少価値があり人気で売りやすいです。

新築のデメリットである、収益を生むまでの時間のロスもありませんから、新築より需要が高い場合さえあります。

築10年までは築浅とも呼べるのですが、やはり築5年前後の方が築浅と呼ぶにふさわしいでしょう。 鉄骨造やRC造の場合は、耐用年数が長いですし、家賃の下落も木造より緩やかですから、もう少し長く見ていってもいいと思います。

もちろん短期の利益確定よりも、じっくり腰を据えて長期運営をしていくスタンスもありです。

物件のステータス、自身の資産状況、社会情勢などを踏まえながら総合的に判断していきましょう。

売却額を上げる4つのポイント

最後に、売却額を上げるためのポイントをいくつかご紹介します。

1.満室であること 売却額を上げようと思ったら、まず満室であることが大前提です。空室が多ければ多いほど、買主から指値の材料にされてしまいます。

2.キレイな外観最低限の管理が行き届いた外観であることが必要です。ゴミや放置物であふれている場合は見た目が悪いですし、処分代も請求されることでしょう。

売却前に大規模修繕をするケースもありますが、それにかけた費用以上の値上がりが見込めるかは、はっきりしないところがあります。

他にも設備のグレードアップ(最新のエアコンに交換等)は、売却額にあまり影響しなかったりします。

買う側は収益性を一番に考えますから、利益に直結しないものにお金をかけてもあまり効果は見込めません。

修繕やグレードアップをすることで家賃が上がったならば、それは収益性に直結するので、費用対効果を考えて取り入れてみるといいかもしれません。

3.家賃収入以外の収入源をプラス

代表的なものでいうと、太陽光発電・自販機・プロパンガス・駐車場などが挙げられます。

越谷大家さんの『越谷大家流!爆発的にお金を増やす!物件の効率的な購入の仕方と利回りアップ術」(セルバ出版)に様々な手法が紹介されていますし、越谷大家さんは今もセミナー等で積極的に発信されています。

これら家賃収入以外の収益も、上手にアピールすることにより売却額を上げることにつながる場合があります。

ここでも大事なのは費用対効果です。

導入するのに費用がかかる場合は、売却のためだけに取り入れると効果は薄いかもしれませんが、ある程度の運用期間があると、積みあがるキャッシュフローも含め効果が大きくなっていきます。

4.高値で売ってくれる仲介業者に頼む高値で売ってくれる仲介業者を見つけるには、自分が買う側として検討した場合に、割高な案件を扱っていると思ったところへお願いするといいでしょう。

自分なら買わないけれど、お客さんは多く抱えているし、広告にもお金をかけていると いうところを、売るときは逆の立場に立って選んでみるのです。

あとは、特定の富裕層を顧客に抱えているところも高値で売ってくれる可能性があります。地主や海外富裕層など、現金を多額に使うことができる層には、相場より何割も高く売却することも可能です。地主系とのつながりは、やはり大手の方が強い印象がありますが、海外富裕層はニッチな仲介業者が意外に抱えていたりしますので、開拓してみる価値はあります。

ここまで新築の売却についての考え方についてご紹介してきました。不動産投資の勉強をしていく中で、あまり売却については触れられなかったりするのですが、実は一番大事な部分だということがおわかりいただけましたでしょうか。売却はローンを抱えた状態からのリスクヘッジの側面もありますので、当面売るつもりはなかったとしても、いつ不測の事態が起きてもさっと売却できるような状態にしておくことが大切です。「備えあれば憂いなし」ということですね。

脱公務員大家(だつこうむいんおおや)
不動産投資家で楽待コラムニスト。1985年生まれ。福井県越前市出身。大学進学時に上京し、その後東京都で地方公務員として社会人生活をスタート。2015年に父親名義で新築不動産投資を始め、その後も家族名義で不動産を買い進める中で、「土地からはじめる新築不動産投資」に行き着く。土地から新築を建てていく中で、首都圏でも利回り10%以上をコンスタントに達成、12%を超えるものもある。