きっと不動産投資をしている人の大多数が、業者経由で融資打診をする手法でしか融資条件を確かめていないのではないでしょうか。

融資が下りなかった際の理由までヒアリングをしていないならば、融資条件の確認すらできていません。

ここでは、融資条件の確認法や金融資産の上手な見せ方、「土地から新築」の融資の流れを解説します。

(本記事は、脱公務員大家氏の著書『失敗のしようがない「新築」投資の教科書』=ぱる出版、2018年1月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

失敗のしようがない新築投資法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

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・(1)  脱公務員大家が教える「失敗のしようがない新築投資法」とは
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有利な融資を勝ち取るための8つのステップ

失敗のしようがない新築投資法
(画像=PIXTA)

理由を考えることもせず、「融資が通った」「ダメだった」という結果だけを受け身で聞いているだけの人がほとんどだと思います。

そして原因もわからぬまま、また物件情報が来たら、むやみやたらに打診をお願いして、数打てば当たる方式で、何となくオーナーになってしまうわけです。

「融資が通ったということは良い物件なのだろう」と、根拠のない楽観的観測でオーナーになってしまった人は、その後に経営が行き詰まったり、買い増していくことが難しくなってしまうことが多いのです。

あまり人が手を出さないところにこそ旨味があるわけです。その意味でも経験をある程度積んできたならば、自分で銀行に融資条件の確認に行くことをおススメします。

ただし、いきなり銀行に赴いて「私にいくら貸してくれますか?」と聞いたところで門前払いされるのが関の山です。

とにかく事前の準備をしっかり行いましょう。かくいう私も初めての金融機関訪問は、勢い任せに行って赤っ恥をかきましたが(苦笑)。

ここからは不動産投資初心者や、本業であまり時間がない人の融資条件の確認法をステップで紹介します。

【ステップ1】資料の準備

事前に準備すべき資料として、属性資料と物件資料があります。

属性資料とは自分の身分がわかる資料のことです。ただし、最初の打診の段階でそこまで多くの資料が必要になるのかは金融機関にもよりますので、事前に電話でアポイントを取るときに聞いておくといいでしょう。

物件資料は物件に関する様々な情報のことです。

資料が何もない状態で金融機関に相談しても、的を射た回答は得られないことが多いです。

やはり具体的な案件があることで、具体的な回答が得られ、融資条件が見えてきます。ですから、購入を検討してもいいかなと思える売建新築の資料を用意し、提示してみましょう。

そのまま審査が進み融資が下りれば幸いですし、ダメでも先述した通り、その理由を細かくヒアリングすることで、融資が下りる条件が見えてきます。

物件資料についても、最初の段階では最低限概要がわかるものと収支がわかるものがあれば大丈夫です。脈があるようならしっかりとした資料を追加で渡せばよいでしょう。

事前に準備すべき資料

属性資料
・身分証明書
・勤め先がわかるもの
・源泉徴収票又は確定申告三期分は最低限必要
・家族構成表(家系図等)
・金融資産一覧表及びその証明となるもの
・借入金一覧表及び返済予定表

物件資料
・物件概要書
・レントロール……想定される家賃収入の一覧表
・登記事項証明書……土地や建物の情報のことで法務局で取得できる。通称、謄本
・公図……登記所に備え付けられている土地の図面。土地の形状や地番、道路、水路や隣接地との位置関係がわかるように作られたもの
・測量図……一筆の土地の地積(面積)、形状、境界標に関する測量の結果を明らかにする図面
・物件周辺の地図
・建物の平面図・立面図・配置図……平面図は間取図のこと。立面図とは、東西南北から見た建物の外観を示した図面のこと。配置図とは、建物と敷地の他に、庭、車庫、植栽、道路の位置、幅員、隣地境界線、道路境界線、敷地内の高低差、敷地と道路の高低差、真北方向なども示された図面のこと

【ステップ2】融資打診してみたい金融機関のリスト作り

続いては融資打診をしてみた金融機関のリスト作りです。「融資打診してみたい金融機関といっても、どこがいいかわからないよ」という方もいらっしゃると思います。

まずは、自分がすでに付き合いのある銀行に聞いてみましょう。次に、自宅から近い金融機関をインターネットやタウンページで調べて、全てピックアップします。インターネットで検索する際は「、○○市金融機関」などのキーワードを入れれば一覧で出てきます。

出てくる金融機関が少ないと思ったら、「都道府県金融機関」と入れて調べるか、隣の市を入れて調べてみてください。

【ステップ3】電話ヒアリング(融資の土台に乗るか否かの確認)

資料が揃って、打診したいと思っている金融機関の一覧が準備できたら実際に電話してみましょう。

「いきなりのお電話で申し訳ありません。私○○と申します。普段はサラリーマン(自営業)をしているのですが、今回、土地を仕入れて新築の収益不動産を建てるプランを計画しておりまして、御行でご相談にのっていただくことは可能でしょうか」と聞いてみてください。

この時点で、地主や資産家向けにしか融資を出さない金融機関や、一見さんを嫌う金融機関なら、「そういったご相談には乗っておりません。申し訳御座いません」と断りを入れてきます。

これをわざわざ時間を取って来店して告げられたらしんどいですが、電話なら労力はかかりませんし、お昼休みの数分でもあれば確認することが可能です。断られた銀行は候補から外せばいいだけなので効率がいいです。

【ステップ4】来店のアポを取り、必要な資料を確認する

相談を受けてくれることになれば、来店のアポイントを取りましょう。勤め人ですと、平日の日中は仕事で抜けられない方も多いでしょうから、「平日の日中は仕事で抜けられないので、○時以降でご都合のつく日にちがあれば嬉しいのですが、いかがでしょうか?」と聞いてみてください。その際、来店時に必要な資料も確認しておきましょう。

銀行は15時に閉まっても、行員の方は遅くまで働いていますから、意外と受け入れてくださいます。

ただし、月初めや月終わり、四半期の決算月などは忙しくされていることが多いので、できる限り控えた方がいいかもしれません。実際に金融機関に来店する際には、身なりは基本スーツです。金融機関の方は身なりをとてもよく見ています。特に、それまで面識のない人へ数千万円という額を融資するかどうかを判断するのですから、外見も大きな判断基準になります。

あなたなら、Tシャツで来店するような人に大金を融資してもいいと思われますか?

当たり前のことですが、約束をした時間はしっかりと守りましょう。

そういうところから、お金をしっかり期限通りに返せるかの印象に繋がるかもしれません。万が一にも遅れるような場合は、事前に連絡を入れておくのが最低限のマナーです。

【ステップ5】融資条件の確認

用意すべき資料の属性資料と物件資料を提示して、「今回この物件を購入し、不動産経営を始めようと検討しているのですが、ご融資は可能でしょうか」と聞いてみましょう。

この時のポイントは、「不動産投資」とは言わず、「不動産経営」と明言することです。金融機関は基本的に「投資」へ融資をしません。不動産が「事業」であるから融資をするのです。

「不動産投資は事業である」という考え方は、実際に運営していく上でも大切な考え方ですので、金融機関へ行く前にしっかり自分の中で落とし込んでおきましょう。

金融機関の方でも実際に物件の評価を取らなければならないため、その場では正確な回答をいただけないと思いますが、全くダメな場合はそのように伝えてもらえるでしょうし、ある程度の脈がありそうなら、そのようなニュアンスを伝えてもらえる場合もあります。

【ステップ6】希望融資額を伝える

具体的な物件資料を持ち込んだ際によく聞かれるのは、「ご融資額はおいくら希望ですか?」です。

たとえば、物件価格1億円の案件を持ち込んだ場合に、1億円を丸々借りたいなら、フルローンを希望します。頭金に1割入れることを想定すると、9000万円の融資を希望します。

頭金を入れた方が月々の収支は健全化するとよく言われますが、不動産を長期で経営していくことを考えると、手元にキャッシュを残しておいた方が経営は健全化すると私は考えます。

たとえば、先の1億円の物件の融資を受ける場合で考えますと、金利1%、元利均等で30年の融資条件を提示されたならば、1億円のフルローンを引いた場合に月々の返済額は、32万1639円になります。

次に、1000万円の頭金を入れて、9000万円の融資を引いた場合なら月々の返済額は、28万9475円になります。

差額は月に3万2164円になりますが、当面の運営資金1000万円を投入した見返りとしては小さいと私は考えます。

1000万円を差額で割ると、311か月目(約26年目)で1000万円を超えてくることになりますが、その約26年の間で、何か突発的に大きな修繕がかかった場合で、手元に1000万円の現金が有るか否かで、危機を乗り切れるかどうかが決まるのかもしれません。

ちなみに1億円の物件でフルローンがついた場合でも、購入時は物件価格以外に諸費用が必要です。諸費用については次項で詳しく説明します。

【ステップ7】諸費用の確認と用意

仲介の案件の場合、7%程を想定しておきます。土地から新築の場合、建物代の仲介手数料はかからないのでもう少し抑えられますが、それでも5%程は見込んでおいた方がよいでしょう。

諸費用を含めたオーバーローンという条件は、そうそう下りるものではありませんから、やはり当初のキャッシュは多いに越したことはありません。

フルローン自体も、今の融資情勢を見るとなかなか厳しいところはありますが、言うだけならタダです。「フルローンを希望したい!」と、言うだけ言ってみてはいかがでしょうか。

ただし、その理由が「一銭もお金を使わずに不動産が欲しいから」では、金融機関から「あまりにも無責任な奴だ!」と思われてお終いになってしまいます。

ですから先にも述べたように、「長期で健全な経営を行っていくために、突発的な出費にも備えられるよう、手元にできる限りのキャッシュを残しておきたいと考えております。そのためにも出来ましたらフルローンを希望したいのですがいかがでしょうか」と、低姿勢になってお伺いを立てるのです。

そうすれば、「しっかり不動産を経営として考えているんだな」と、金融機関の方も悪い印象だけ抱くこともないでしょう。

そもそも、「当行ではフルローンはやっておりません」と言われたら、大人しく諦めて頭金をいくら入れていくかの議論を詰めていきましょう。

諸費用一覧

・仲介手数料
仲介手数料の金額には次の規定がある(200万円以下の物件/売買価格の5%200万円~400万円の物件/売買価格の4%+2万円400万円以上の物件/売買価格の3%+6万円)

・契約印紙代
不動産売買契約やローン契約などの契約書を作成するときに、取引金額に応じて課税される。契約書通ごとに印紙を貼り付け、消印することによって納税となる

・登録免許税
所有権を登記する際に必要になる国税。手続きは個人ではなく、司法書士に代行してもらうのが一般的

・ローン関係費
ローンに関係する費用には「団体信用生命保険料」「事務手数料」の2つが挙げられる

・団体信用生命保険料
債務者に万一のことがあった時のために入る保険。ローン返済に含まれる場合と、別途支払う場合とがある

・ローン手数料
金融機関によっては、3~5万円の事務手数料がかかる

・火災保険料
不動産への火災保険にかかる費用で、ローン契約の際に必須

・不動産取得税
不動産を取得することによって課税される都道府県税です。課税標準は固定資産税評価額となっており、標準税率は%です。おおよそ不動産取得の半年後に支払う

・消費税
土地に関しては消費税がかからないが建物にはかかるため注意が必要

【ステップ8】(断られた場合)原因分析を行う

後日、改めて金融機関から持ち込んだ案件に対する回答があると思います。そこで、希望通りの融資条件を引き出せれば、おめでとうございます。

一方で「今回、当行ではお客様のご希望に沿うことは難しいという結論に至りました」という、残念な回答が来た場合は、「そうですか。残念ですが仕方ありませんね。有難う御座いました」で終わってはいけません。

「今回は私の希望に沿っていただくことが難しいとのことですが、いったい何が問題だったのでしょうか?」と踏み込んで聞きましょう。

物件の評価が足りなかったのか、規模が大きすぎたのか、資産が足りなかったのか、年収が足りなかったのか、等々ダメだった理由を聞き出します。

資産や年収に原因がある場合は、家族の協力を得る以外にはすぐに改善できるものでもないので、その金融機関に対してはしばらく時間を置いて再チャレンジするしかありません。へこたれず、別の金融機関に当たりましょう。

物件の評価や規模に原因があった場合ならチャンスです。

物件のどこに問題があったのか、より詳しく聞き出します。「土地の評価がもう少し高ければ」「収益性がもう少し高ければ」「物件規模がもう少し小さければ」などの理由を明確にすることができれば、次回はその条件に当てはまる物件を持ち込めばいいのです。

このようなやり取りを複数の金融機関で行うことで、各金融機関の融資条件に合った案件が出たら、すぐに行動へ移すことができ、業者頼みの他の多くのライバルより一歩も二歩も有利な立場に立てます。これは土地から新築に限ったことではなく、中古の物件を手に入れる際もライバルより有利に立てます。同じように中古の案件についての融資条件を確認しておくことで、その融資枠があることをアピールできれば、業者からも優先的に情報が集まってくることでしょう。

多くの人が嫌がるような手間を惜しまず行動することで、多くの人より有利な条件を引き出すことができるのです。

金融資産の上手な見せ方

年収や金融資産が原因で融資を断られた場合、家族の協力を得られれば提示できる内容を改善できる余地があります。

まず年収ですが、パートナーがいる場合は夫婦合算で提出できます。

また、親兄弟の協力を得たい場合は、共同で法人を立ち上げて、その法人で不動産を所有するために融資を引くことにすれば、全員の年収を合算して見てもらえることも考えられます。

次に金融資産ですが、よく「自己資金はおいくらほどお持ちですか」と聞かれると、「実際に不動産投資へ使える額はこれくらい」というニュアンスで答えられる方も多いと思いますが、それは間違いです。

金融機関が知りたいのはトータルの資産ですから、できる限り大きく見せたほうがいいのです。

預金以外で思い浮かぶのは、株や債券くらいかもしれませんが、生命保険の解約金や、将来に貰えるであろう退職金の見込み額を書き入れたりすることも可能です。

家族の協力が得られる場合は、学資保険の積立分や相続するであろう財産も加えていきます。

土地が相続される場合は、不動産鑑定士の評価書などがあれば、より具体的な資産として見てもらえます。

これらの対策を取るのが難しい場合でしたら、地道に節約をして預金額を増やし、バリバリ働いて年収を上げるように努めましょう。

「土地から新築」の融資の流れ

土地から新築の融資は、先に土地の融資を実行し、その後で建物の融資の実行をしていきます。それでは詳しく見ていきましょう。

土地から新築のプランに対して希望通りの融資の承認が下りたら、まず新規取引金融機関の場合なら、通帳を作成して金消契約を結びます。

金消契約とは「金銭消費貸借契約(ローン契約)」の略称です。弁済する約束をした上で、金銭を消費するために借り入れる契約です。

この本契約の元になるのが「金銭消費貸借契約証書」です。融資を実行するにあたり、債務者への融資金額・資金使途・返済期日・利率といった融資条件が記載された契約書で、後々に問題が発生することに対して予防の意味で作成されるものです。

金消契約から一週間後くらいに、通常の融資を実行する金融機関に買主、売り主、仲介業者、司法書士が集まり、土地の融資を実行します。

登記をその日のうちに申請する関係上、融資実行のため午前中に集まることが多いので、サラリーマンをされている方は午前休か、一日休暇を取る必要があります(司法書士に代理を頼むこともできます)。

この時に、土地の登記費用、抵当権設定費用、印紙代、司法書士報酬、土地の売り主又は仲介会社への仲介手数料、銀行の融資手数料を支払う必要があります。

融資は基本的に土地代金に対して支払われるので、これらの諸費用分と土地代金として実行した融資の期中金利分は事前に口座に入金しておかなければなりません。

期中金利は、返済の原資となる家賃収入が発生するまでは、元金の支払い分を据え置いて金利分だけ負担していくというものになります。

詳しくは次に説明します。

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中金利
「期中金利」の期中とは、工事期間中を指します。つまり、工事期間中に借りたローンにかかる金利を指します。アパートローンの場合、返済原資の多くが家賃収入ですが、工事期間中はまだそれがないため、金融機関が元金の返済を猶予し、金利分のみの負担になります。
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次に、建物に対しての融資実行ですが、建物が建つまでの期間に「着工」「上棟」「竣工」と段階があるので、通常3分割に分けて実行してもらいます(着工と上棟をまとめて2分割で実行する場合もあります)。

実行する金額の割合は3:3:4が一般的ですが、施工をする会社が途中で倒産するなど飛んでしまうリスクを考えて、最後の竣工の割合を大きくする交渉の場合もあります。

建物着工時に、印紙代、銀行の融資手数料を支払う必要があります。着工金、上棟金の支払いがあると、金利負担額もその分大きくなっていきます。

完了した後に、竣工引き渡しの最終代金を融資実行します。表題登記費用、建物の登記費用、抵当権設定費用、司法書士報酬、火災保険料を支払う必要があります。

ここから元金支払いまでの期間をどうするかは、金融機関との交渉で決まります。満室になるまでの期間を想定して決めるのですが、念のため若干長めにとっておいた方がよいでしょう。

土地決済から竣工引き渡し決済までに期間と費用がかかりますので、あらかじめ想定して資金計画とスケジュールを立てておく必要があります。

また、一部の金融機関では、完成時の一括でしか融資を実行してくれないので、土地代並びに建設期間中の支払いに「つなぎ融資」という制度を利用する場合もあります。

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「着工」「上棟」「竣工」
着工は工事着手時。上棟とは棟上げのことで、屋根の一番上の部材である棟木を取り付けること。竣工とは、建物の完成時を指します。
表題登記土地や建物は法律により、登記簿に登記されることになっています。登記簿には、どこにどんな土地や建物があり、その所有者を表示することになっています。まだ登記されていない土地・建物に、初めて登記を作成する登記のことを「表題登記」といいます。
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脱公務員大家(だつこうむいんおおや)
不動産投資家で楽待コラムニスト。1985年生まれ。福井県越前市出身。大学進学時に上京し、その後東京都で地方公務員として社会人生活をスタート。2015年に父親名義で新築不動産投資を始め、その後も家族名義で不動産を買い進める中で、「土地からはじめる新築不動産投資」に行き着く。土地から新築を建てていく中で、首都圏でも利回り10%以上をコンスタントに達成、12%を超えるものもある。