2017年に上場した世界の企業374社、調達総額1410億ドルのうち、137社、322億ドルは中国企業だった。これはルネッサンス・キャピタル銀行2017年12月15日作成データによるもので、中国企業が全IPO数の3.7割、全調達資金の2.2割を占めていたことになる。

最も話題をさらったのは、騰訊(テンセント)が出資する?文集?(チャイナ・リタラチャー)の上場で、83億香港ドル(約1160億円)を調達した。

こうした中国ユニコーン(時価総額10億ドル以上の非上場企業)の上場は、2018年も継続する見通しだ。評価額1000億ドル(約11兆円)規模の上場になると期待されているスマホメーカー、小米科技(シャオミ)を筆頭に、今年上場が決まっている、あるいは上場の可能性が高い中国ユニコーン11社を見てみよう。

シャオミ——低価格のスマホメーカー、1000億ドルの上場となるか?

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

昨年から上場計画が報じられていたスマートフォンメーカー、小米科技(シャオミ)。IPO史上最高額250億ドルを調達した阿里巴巴集団(アリババグループ)の記録を塗り替える、評価額1000億ドル規模の上場になると期待されている。

最新の報道によると、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、CLSAを主幹事に選んだと関係者が証言しているが、クレディスイスやドイツ銀行なども候補に挙がっている。上場は今年下旬、香港で行われるとの見方が強い(ロイター2018年1月15日付記事 )。小米科技の広報部は沈黙を守っている。

しかし巨額の予想評価額を「誇張」「非現実的」と見なす声も挙がっている。2010年北京で設立された小米科技は、ハイスペックなスマホを低下価格で提供することで現在の地位を築いた。マージンが少ない上にスマホの売上が縮小していることは、国際部門のヴァイスプレジデント、ヒューゴ・バラ—氏も2016年のインタビューで認めている(ロイター2016年11月25日付記事)。

バラ—氏曰く、高性能なスマホをただ同然の価格で市場に流すことで長期的な収入源を築くのが同社の狙いであり、「例え100億台のスマホを売っても利益はゼロということもあり得る」という。つまり小米科技にとってスマホの販売自体は「宣伝道具」でしかなく、代わりにソフトウェアやサービス、スマートホーム関連デバイスの販売を強化する方向性を打ちだしている。

また小米科技は、世界最大の出荷台数を誇るスマートウェアラブル機器メーカー、華米(フアミ) のパートナー兼大株主だ。華米は2017年1〜9月にかけて1160万台、2013〜2017年には合計4530万台ものデバイスを出荷しており、現在(2018年1月30日)証券取引委員会(SEC)に上場申請中である(チャイナマネー・ネットワーク2018年1月15日付記事 )。

スマホメーカーとしてのイメージが強い小米科技だが、こうした多方面での収益源や将来的な展望を考慮すると、投資家の期待が高まるのも不思議ではないだろう。1000億ドルという評価額も夢ではないかも知れない。

デット・ファイナンス(借入金融)を含む過去8回の資金調達ラウンドで、中国銀行(香港)、ドイツ銀行、モルガン・スタンレーなどから総額24億ドルを調達している。

滴滴出行——「急いでいない」が、将来的な上場の可能性示唆

国内400都市で4億人が利用するライドシェア企業、滴滴出行(Didi Chuxing)。チャイナマネー・ネットワークの「中国ユニコーン・ランキング」 では、アント・フィナンシャル・サービスグループ(??金服)に次ぐ、国内第2のユニコーンだ。2012年北京で設立されて以来、Uberのようなタクシー配車から、私用配車、ライドシェアまで、豊富な交通サービスを提供している。

滴滴出行の上場については2016年頃から度々報じられていたものの、同社は上場の予定がないことを明らかにしていた(CNBC2016年5月16日付記事 )。しかし2017年、米国で上場を果たしたIT企業の全調達資金(99億ドル)にかぎりなく近い95億ドルを獲得し、評価額は560億ドルを突破(サウスチャイナ・モーニングポスト2017年12月21日付記事 )。いつ上場してもおかしくはない成長ぶりである。

好調ぶりを受けてか、2017年11月27日付けの「ザ・ナショナル」 の取材で柳青(ジーン・リウ)総裁は、「現時点では資金に困っていない」と近日中の上場を否定する反面、「今すぐに上場しろという株主からの圧力はない」「急いではいない」と将来的に上場を検討する可能性を示唆している。

ソフトバンクやApple、シルバーレイク、交通銀行、沼南銀行などが出資しており、過去14回の資金調達ラウンドで総額197億ドルを獲得している。

Lufax——ソフトバンクが出資検討? 中国最大のソーシャル・レンディング

サウスチャイナ・モーニング・ポスト が2018年1月12日に報じたところによると、中国平安保険(Ping An)のオンライン資産運用部門、?金所(Lufax)は今年4月香港証券取引所への上場を通し、総額600億ドルの資金調達を計画している。実現すれば評価額が2016年の3倍(185億ドル)に跳ね上がることになる。

JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、中信証券が共同スポンサーになるようだ。

?金所は2011年に上海で設立され、2018年1月の時点で登録者3300万人、運用資産773億ドルという、中国最大のソーシャル・レンディング企業に成長。中国民生銀行や国泰君安証券などから総額17億ドルを獲得している。

近年は中国規制当局によるP2P取締り強化を受け、主要事業をP2Pからほかの金融サービス—特に資産運用へと分散させる動きが見られるものの、昨年9月28日における融資残高は240億ドル。これは2015年にニューヨーク証券取引所に上場した中国第2のP2Pレンダー宜信(Yirendai )の、3倍を超える数字である。

今回の上場に辺り、ソフトバンクの孫正義氏とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン副皇太子が共同で立ち上げた「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が、出資を検討しているとも報じられている(ブルームバーグ2017年12月5日、6日付記事 )。

美団-大衆点評——上場でAI技術・オフライン小売業の拡大狙う?

「中国大手O2O および e コマース・プラットフォーム、美団-大衆点評(Meituan-Dianping)による米国上場計画を報じたのはロイターだ(2017年11月7日付記事)。 複数の関係者の証言によると、同社の評価価格の10%に値する30億ドルの調達を目指し、早ければ今年上旬に上場するという。

美団-大衆点評は、阿里巴巴集団傘下の美団と騰訊(テンセント)傘下の大衆点評が、2015年に立ち上げた共同ベンチャーだ 。両社の合併で時価総額150億ドルを超える巨大O2Oが生まれた。2010年に北京で設立された美団はグループ購入サービス、2003年に上海で設立された大衆点評は評価・クチコミサービスを提供していた。合併後は事業幅を広げ、映画チケット販売や食品配達、ホテル予約などのほか、旅行、オンデマンド発送、店舗内飲食、エンターテイメント事業の拡大を進めている。利用者は2.8億人、500万件のビジネスにプラットフォームを提供している。

2017年10月のシリーズC調達ラウンドでは騰訊と米国のオンライン旅行大手プライスライングループがリード投資企業を務め、セコイアキャピタルやキャピタルグループなどとともに総額40億ドルを獲得した。

ロイターからコメントを求められた同社は、「現在は調達した資金を最大限に活用することに専念している」と、上場に関する報道をやんわりと打ち消す一方で否定する素振りも見せなかった。

上場で資金を拡大すれば、AI(人工知能)技術やオフラインの小売業への投資を強化することも可能になる。阿里巴巴集団や京東などライバルがこれらの分野への投資を拡大している今、出遅れたくないというのが美団-大衆点評の本音ではないだろうか。

バイトダンス——国内最大のニュースアプリを運営 評価額200億ドル

国内最大のニュースアプリ「Toutiao(今日頭条 )」など、数々のコンテンツプラットフォームを運営するバイトダンス(字節跳動)は、2012年北京で設立された。毎日2億人の利用者がバイトダンスのサービスを利用しているという。

2017年には日本のBizcastと業務提携を結んだほか、米国市場への窓口として生中継アプリ「ライブミー(Live.me)」に5000万ドルを投資。フランスのニュースアプリ 「ニュース・ルパブリック」を8660万ドルで、北米の若者層に人気のソーシャル動画アプリ「Musical.ly」を推定8〜10億ドルで買収するなど精力的な活動で、評価額を200億ドルに押し上げた。

現時点では正式な発表には至っていないものの、評価額、事業規模、欧米市場を意識した展開など、いつ上場しても驚きには値しないユニコーンのひとつだ。

JDファイナンス——アントファイナンシャルより先に上場?

2017年、売却総額143億元で電子商取引会社JDドットコム(京東)スピンオフした金融部門JDファイナンス(京東金融)。JDドットコムの劉強東(リチャード・リウ)CEOが買い手のひとりであることは明らかになっているが、ほかの投資家の名前は公表されていない。スピンオフが最大のライバル、阿里巴巴集団の金融部門、アントファイナンシャルに対抗する動きであったことは間違いないだろう。

京東金融の第1〜3四半期の総営業収益は39.9億人民元、当期純利益は1.4億人民元。2013年に東北部遼寧省で設立されて以来、601億人民元相当の融資を行っている。

JDファイナンスの現在の評価額は73億ドル、対する??金服は700億ドル。アントファイナンシャルが業績改善を理由に上場を先送りしている背景を考えると、JDファイナンスが「抜け駆け戦略」で上場を目論む可能性も否定できない。

証券取引所間でも中国ユニコーン争奪戦

こうした中国ユニコーンの上場ラッシュを受け、ニューヨーク証券取引所、ナスダック、香港証券取引所では争奪戦が繰り広げられているという。

2017年、中国ユニコーンに人気のニューヨーク証券取引所からは68社が上場し、総額260億ドルを獲得。香港証券取引所からは142社が124億ドル、ナスダックからは101社が141億ドルを調達した。

155件393億ドルというロンドン証券取引所も中国ユニコーンの誘致に本腰を入れており、自転車ライドシェアのofo の上場が決まっている。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)