2018年2月5日のダウ工業株30種下落で、フォーブス誌の長者番付上位の大富豪5人がだした損失は総額152億ドル(約1.7兆円)にものぼることが、CNBCの報道から明らかになった。

ウォーレン・バフェット氏51億ドル、マーク・ザッカーバーグ氏36億ドル、ジェフ・ベゾス氏33億ドル、ビル・ゲイツ氏22億ドル、アマンシオ・オルテガ氏12億ドルと、巨額の資産が一瞬にして消えた。

しかし投資の専門家は市場が混乱におちいっている時でも平静を保ち、むしろ市場で起こっていることに注意を払わないようアドバイスしている。

1日のうちの急落としては史上最大の下落率を記録したダウ

株式市場,投資アドバイス,株価暴落
(写真=Getty Images)

この日ダウ工業株30種は平均が1600まで急落。1日のうちの急落としては史上最大の下落率を見せた。急落の原因はいまだ解明されていないものの、ニューヨーク時間午後3時から15分にわたって続いた尋常とは思えない売りの殺到に、多くが「機械が故障した」と感じたという(ブルームバーグ2018年2月5日付記事 )。

しかし「機械の故障」と断定するには市場に不安定要素が多すぎる。JPモルガン・アセット・マネージメント国際複合資産戦略家パトリック・ショーウッツ氏が指摘 しているように、「債券利回りが上昇しすぎた結果、ついにバランスが崩れた」というのが真相ではないだろうか。株バリュエーションもインターネットバブル期の水準にまで近づいていたことから、すでに2日の時点でダウ平均は666ポイント下げていた。

機械が故障していた、いなかったに関わらず、「市場が調節期に入った」と見るのが自然だろう。

ビリオネアの損失は慈善団体への寄付金より少ない?

市場が混乱を来したのはいうまでもないが、急落で損失をだしたのは世界の大富豪も同じである。バフェット氏、ザッカーバーグ氏、ベゾス氏、ゲイツ氏、オルテガ氏は総額152億ドルを失ったが、それ以外にもGoogleの創設者ラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏が各33億ドルの損失となった。

資産10億ドル以上のお金持ちを順位付けしたブルームバーグの「ビリオネア・インデックス」にランクインしている18人の資産から、たった1日でそれぞれ10億ドル以上が消えたという。

庶民にとっては気の遠くなりそうな金額だが、これらの大富豪にとっては大した損失ではなさそうだ。ベゾス氏の純資産は1198億ドル、バフェット氏の純資産は866億ドル、ザッカーバーグ氏は747億ドル(フォーブス誌2018年2月7日データ)など、いずれも損失額の何十倍という資産を保有している。

またゲイツ氏を含めた「最も米国で慈善活動へ寄付した50人」による2017年の寄付金総額は、147億に達していたそうだ(クロニクル・オブ・フィランソロピー ・データ)。ゲイツ夫妻だけでも今回の損失額の2倍を上回る48億ドルを、自分たちの財団に寄付しているほか、バフェット氏もバークシャー・ハサウェイ・クラスB株31.7億ドル相当を5つの慈善団体に寄付している。

バフェット氏「株式市場を四六時中追いかけるな」

しかしこれらのお金もちとは違い、損失が直接懐に響く一般人は、株式市場が混乱におそわれた時、どのように乗り切ればいいのだろうか。

バフェット氏は2016年CNBCの取材 で投資家へのアドバイスを求められた際、「株式市場を四六時中追いかけるな」と答えている。「株価が上がったから売って、下がったから買ってを繰り返しているようではよい結果は得られない」とし、「優良企業株を10、20、30年と長期間にわたって保有することで利益を得る」ことを勧めている。「買い持ちが最もかしこい投資法」と、長期的な投資を重視するバフェット氏らしいアドバイスだ。

ロボアドで知られるベターメントのCFPニック・ホールマン氏は、「株価の一時的な急落は市場の調節に過ぎない」という多くのアナリストの意見に同意している。「自分の目標にそった適切な投資をしているのなら、ポートフォリオのことは気にしなくてよい」と楽観的だ。

価格変動が激しい時にはポートフォリオのバランスも崩れやすく、リスクが高くなったり低くなったりする。嵐が過ぎ去るのを静かに待つのが得策ということだ。ホールマン氏が提案するように「アイスクリームでも食べながらスーパーボールでも観て、市場で起こっていることは忘れる」とまでは落ち着いていられなくても、慌てて売りに走ったり過剰に心配するのは避けるべきなのだろう。

「価格調節」は1年に1回訪れる?

「価格が下がった株価を買い込む」という手法はバフェット氏が得意とするところだが、USトラストのチーフマーケット・ストラテジスト、ジョー・クインラン氏は「買い込む銘柄には慎重に」と警告している。安くなっているからといってなんでもかんでも買うのではなく、バフェット氏のように「長期的に見て価格が上がる銘柄」を選ぶのが重要だ。

コーナーストーン・ウェルス・マネージメントのCIOアラン・スクラインカ氏いわく、1900年以来米国株式市場では125回もの「価格調節」が起きている。つまり1年に一回は価格が急落するのが普通である。急落した株価は再び値上がりする—と考えると、やはりこれらの著名投資家や専門家の見解は一理も二理もあるということになりそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)