シンカー:10-12月期の実質GDPは前期比+0.1%(年率+0.5%)となった。7-9月期は特殊要因で消費が弱く外需が強かったが、10-12月期はその反動で形が逆になり、補正予算による財政支出の端境期にあることが成長の下押しとなった。財政緊縮をすると、デフレ完全脱却の妨げになるリスクがまだ残っていることを示している。特殊要因と反動があった7-9月期と10-12月期の平均では年率1.3%となる。これで8四半期連続のプラス成長であり、この間の平均は年率1.6%となり、1%程度である潜在成長率を明確に上回るペースとなっている。10-12月期の実質設備投資は同+0.7%と5四半期連続の増加となり、企業活動の活性化が鮮明となった。人手不足は深刻であり、需要の増加に対する供給の対応を整え収益機会を逸失しないため、企業は生産性を向上させることが急務となっている。そして、新製品の投入などでの売上高の増加のため、設備投資と研究開発が拡大し始めている。10-12月期は、2016年度の補正予算と、現国会で成立した。2017年度の補正予算による支出の端境期にある。総選挙の連立与党の大勝で、2020年度までは生産性の向上とデフレ完全脱却のための集中投資期間と、財政政策は緩和方向に向かっている。インフラと生産性の向上への投資が計画され、オリンピックに向けた建設もあり、今後の公的需要はしばらくは堅調に推移し、デフレ完全脱却を支援していくだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

10-12月期の実質GDPは前期比+0.1%(年率+0.5%)となった。

7-9月期は特殊要因で消費が弱く外需が強かったが、10-12月期はその反動で形が逆になり、補正予算による財政支出の端境期にあることが成長の下押しとなった。

財政緊縮をすると、デフレ完全脱却の妨げになるリスクがまだ残っていることを示している。

特殊要因と反動があった7-9月期(前期比年率+2.2%)と10-12月期の平均では年率1.3%となる。

これで8四半期連続のプラス成長であり、この間の平均は年率1.6%となり、1%程度である潜在成長率を明確に上回るペースとなっている。

10-12月期の実質消費は前期比+0.5%と、長雨などの異常気象の影響などで弱かった7-9月期からリバウンドした。

雇用と冬のボーナスを含む賃金の拡大、株価上昇などによる消費者心理の向上もあり、個人消費にも勢いが出てきたとみられる。

10-12月期の総賃金(名目雇用者報酬)も前年同期比+2%程度の堅調な増加となり、少子高齢化で縮小していたのを拡大に転じさせたアベノミクスの最大の成果がより実感しやすくなってきている。

ただ、1-3月期は異常気象と生鮮食品価格の高騰により、消費が一時的に下押される可能性がある。

7-9月期以降にはこれまでの在庫削減の反動と年末商戦い向けた耐久消費財の作りこみがあったとみられ、10-12月期の民間在庫の実質GDP前期比寄与度は-0.1%となった。

10-12月期の実質設備投資は同+0.7%と5四半期連続の増加となり、企業活動の活性化が鮮明となった。

人手不足は深刻であり、需要の増加に対する供給の対応を整え収益機会を逸失しないため、企業は生産性を向上させることが急務となっている。

そして、新製品の投入などでの売上高の増加のため、設備投資と研究開発が拡大し始めている。

10-12月期の実質公共投資は同-0.5%と2四半期連続の減少、実質政府消費も同-0.1%と弱かった。

10-12月期は、2016年度の補正予算と、現国会で成立した。2017年度の補正予算による支出の端境期にある。

総選挙の連立与党の大勝で、2020年度までは生産性の向上とデフレ完全脱却のための集中投資期間と、財政政策は緩和方向に向かっている。

インフラと生産性の向上への投資が計画され、オリンピックに向けた建設もあり、今後の公的需要はしばらくは堅調に推移し、デフレ完全脱却を支援していくだろう。

10-12月期の実質輸出は前期比+2.4%と2四半期連続の増加となった。

これまでのIT関連財に加え、IoT・AI・ロボティクス・ビッグデータなどの産業変化もあり、データセンターや車載向けの部品などは増加を続けている。

更に、日本が比較優位を持つ資本財が堅調な伸びをみせるとともに、世界貿易に対する日本のシェアも上昇しているとみられ、ある程度の円高には許容力ができてきているようだ。

10-12月期の実質輸入は同+2.9%と、作り込みに備えた素原材料の前倒し輸入の反動があった7-9月期の減少からリバウンドした。

10-12月期の外需の実質GDP前期比寄与度は0.0%と、7-9月期の同+0.5%からの反動で弱くなり、公的需要も弱い中、民間内需で成長率を押し上げた。

今後のトレンドも、内需主導の成長の形がより鮮明となってくるだろう。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司