最も効率的かつ上手な資産運用方法は、どんな枠組みを活用すれば達成できるのか。各金融商品が持つリスクや誤解しやすいポイントはどういった点であるか。この記事では、近年発売が増えている資産運用本の中から、特に初心者にも向いている分かりやすい9冊を厳選し、内容の一部や著者・編集者の経歴などについて紹介する(価格は紙版)。
山崎元氏によるベストセラーの続編
『図解・最新 難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』 (山崎元、大橋弘祐著、文響社/2017年11月29日発売/96ページ/1058円)
本著はベストセラーとなった資産運用本『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』の改訂版だ。2017年11月に発売され、イデコやつみたてNISAについても盛り込まれている。
ハイリスク・ハイリターンではあるものの、投資初心者でも取り組みやすい投資の方法のほか、がん保険に入る意味や住宅ローンの返済、定期預金、アパート経営についてもコツなどを説明しているほか、時事ニュースとしても話題に上がる北朝鮮のミサイル問題と金融商品への投資の関連性についても解説している。
図解入りでわかりやすい本。著者の山崎元氏は日本国内の金融機関や外資系証券会社、UFJ総合研究所などの勤務経験などで知られる。もう1人の著者である大橋弘祐氏は日本国内の大手通信会社のPR部署で勤務した経験もある作家・編集者だ。
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3000円投資本の著者の新刊
『ずぼらな人でも絶対に損しない 手取り17万円からはじめる資産運用』 (監修・横山光昭、宝島社/2017年12月29日発売/126ページ/864円)
マイエフピー代表取締役で、家計再生コンサルタントや庶民派ファイナンシャルプランナーとしての顔を持つ横山光昭氏が監修した資産運用本。
資産運用を始めるためにどうお金を貯めるかについてや、リスクを適切に正しく理解する視点などについて、図表なども用いてわかりやすく説明している。特に、それぞれの資産運用方法にかかる手間などについても理解しやすくなっており、資産運用するそれぞれの人に適した効率的な方法を見つけやすくなっていることも特徴と言える。
また貯金や節約、投資に関して間違えて理解されていやすい点などについても指摘している。正しい知識を身に付けて、さらにリスクを上手に回避しながら資産を増やしたい人などから支持を集めている一冊だ。
元マネー誌副編集長の著者によるつみたてNISA、iDeCo本
『「税金ゼロ」の資産運用革命 つみたてNISA、イデコで超効率投資』 (田村正之著、日本経済新聞出版社/2018年1月26日発売/272ページ/1512円)
日本経済新聞の編集委員や紙面解説委員を歴任し、証券アナリストとしても活躍する田村正之氏がまとめた資産運用本。『日経マネー』の副編集長を務めていたこともある著者の本であることもあり、他の経済本とは一線を画した鋭い視点で資産運用について解説している。
2018年1月にスタートした積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」や、個人型確定拠出年金「イデコ」などの制度について、誤解しやすい点などがどこかも解説している。本著は3部構成で、「NISA編」と「イデコ・企業型確定拠出年金・その他編」のほか「運用・ライフプラン編」ではさまざまな視点から資産運用のメリットとデメリットを説明している。
全編にわたって「非課税」と「手数料ゼロ」をテーマの一つに据えている。老後のために資産をどう最大化するかを考えたい人にとっても人気の本となっている。
人気セミナー講師が教えるイデコの基礎知識や落とし穴
『達人が教える!ハナコの資産運用術 将来の不安がみるみる晴れるお金の増やし方』 (松井信夫著、現代書林/2017年12月19日発売/216ページ/1404円)
人気セミナー講師として全国各地で資産運用セミナーなどを行う松井信夫氏(ウイム代表取締役)がまとめた経済本。資産運用に関心がある女性層にもわかりやすいように、専門用語もわかりやすく言い換えながら解説し、初心者にも読みやすい一冊となっている。
本著は7部構成。部の前半では「お金」や「貯金」が持つ意味や特性などについて解説した上で、日本国債の安全性や世界各国の外国国債の特徴、資産運用の方法による将来性などについての説明につなげている。
注目が集まっているイデコの基礎知識や落とし穴ともなり得るポイントについても書いている。ゼロ金利時代にどう資産を運用するのが最適解なのか、考えさせられる一冊。
インデックス投資の基本について学ぼう
『お金は寝かせて増やしなさい』 (水瀬ケンイチ著、フォレスト出版/2017年12月8日発売/268ページ/1620円)
東京都内のIT企業に会社員として勤務しながら、個人投資家として資産運用を行う著者は、投資ブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」でも人気を集めている。『全面改訂 ほったらかし投資術』(朝日新書)の著書でも知られる。
本著では「寝かせてお金を増やす」をテーマに、特にインデックス投資の基礎知識や実践方法について解説している。インデックス投資とは、日経平均株価やアメリカのダウ平均株価などの株価指数と同様の値動きを目指して投資する資産運用方法のことだ。
書籍の中では、インデックス投資家としての著者の15年の実践を振り返る中で、リーマンショック時のエピソードや出口戦略についても紹介している。2004年から2016年までの著者の実際の投資成績についても説明しており、インデックス投資におけるリアリティのある実体験を興味深く読むことができる。
女性ファンドアナリストによる「銀行や証券が教えてくれないこと」とは
『新しい! お金の増やし方の教科書 銀行も証券会社もFPも教えてくれない』 (篠田尚子著、SBクリエイティブ/2018年1月20日発売/208ページ/1512円)
楽天証券経済研究所のファンドアナリストとして活躍する篠田尚子氏のセミナー内容を書籍化した資産運用本。ファイナンシャルプランナーとしても活躍する女性アナリストが、これまでに獲得した資産運用ノウハウを惜しげもなく紹介している。
本著は5章構成となっている。著者の篠田氏が銀行や証券会社に勤めていたころの知識や経験を基に解説する「本当にお金が増える資産運用法」のほか、金融機関や多くのファイナンシャルプランナーなども触れることが少ない「お金の増やし方」の7つの法則、確定拠出年金やNISAなどの最新知識についても紹介している。
最終章では、資産運用に最適な投資信託の選び方などについても解説している。篠田氏は新聞や雑誌などでも資産運用や金融・投資の専門家として連載などを書いており、ファンも多い。
独立系アドバイザーによる、「学ぶ楽しさ」も意識した一冊
『お金の小学校』 (近藤正樹著、一間堂/2017年11月9日発売/160ページ/1944円)
日本ではあまり多くない独立系ファイナンシャルアドバイザーとして活躍する近藤正樹氏がまとめた資産運用本で、学ぶ楽しさも意識した初心者向けの一冊だ。
本著ではまず、資産運用や投資という側面から日本人の傾向について分析して解説しており、日本人が銀行への預貯金を好む理由についても説明している。その上で個人の金融資産に対する日本人とアメリカ人の考え方の違いや、物価上昇と資産価値の関係についても紹介している。
そのほか、お金を「働いてもらうもの」と定義した上で、お金を働かせる金融商品として投資信託とイデコ、変額保険などについて説明している。投資ルールとして3つの「コ」(コツコツ・小分け・コトコト)も紹介しており、読みやすさも本著の特徴の一つだ。
30年以上活躍するFPによる初心者向け入門書
『いちばんカンタン!資産運用の超入門書』 (湯之前敦著、高橋書店/2016年10月20日発売/144ページ/1404円)
金融業界で30年間以上にわたって活躍するファイナンシャルプランナーの湯之前敦氏の著書。資産運用を行う上で、特に実際の資産が少なくても運用によって資産を増やす方法などを、初心者にも理解しやすいように説明していることが特徴となっている。
株式投資や外国為替証拠金(FX)取引、不動産投資や投資信託などの基礎的な仕組みと運用方法を説明しているほか、銀行などの金融機関との関わり方や実生活の中で支払う保険やローンなどで出費を最小限にする方法、クレジットカードの活用方法なども解説している。
また、この本が人気の理由の一つともなっているのが、ケーススタディも紹介しながら仕組みやコツなどを実践的に解説していること。自分にあった資産運用の方法を選ぶ際に、入門書の一冊として選ぶ人も多い。
12年以上前から売れ続けている一冊 実践編
『細野真宏の世界一わかりやすい株の本』 (細野真宏著、文藝春秋/2005年6月10日発売/128ページ/1080円)
2005年6月に発売されて既に12年以上が経っていながら、依然として、株や資産運用に関する経済本として書店のほかAmazonなどのオンラインショップの売れ筋ランキングに登場する人気本。こちらは「入門編」としての位置付けだが、「実践編」も販売されている。
資産運用におけるが株式投資において、株式チャートと相場の読み方やさまざまな情報の価値を判断するための視点、株売買に関する基本原則や心構え、投資銘柄をどう選別するかなど、本のタイトルの通り、初心者でもわかりやすい本の構成になっている。個人投資家の中には、株式投資を通じた資産運用のバイブルとしている人も多い。
著者の細野真宏氏は新潟県出身の予備校講師で、「カリスマ受験講師」の異名も。『経済のニュースがよくわかる本』(小学館)の「日本経済編」「銀行・郵貯・生命保険編」「世界経済編」などの著書でも有名で、受験対策シリーズも発刊している。
(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)
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