ドル円予想レンジ104.95-107.90

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=PIXTA)

「trade wars are good, and easy to win(貿易戦争だって構わない。勝つのは簡単だ)”」-。これはトランプ大統領が3/2付ツイッターに投稿した一節だ。貿易不均衡の是正に強気姿勢を貫いており、鉄鋼製品に25%の関税を課すとした異例の輸入制限措置を発動する意向を示した。これを諌めたとされる穏健派のコーン米国家経済会議(NEC)委員長が3/7に辞任を表明するとトランプ政権の通商政策が強硬になる、との警戒感からドル売り円買い圧力が強まった。

日米同盟関係が仇となるか

サンダース米大統領報道官は3/7の記者会見で「that would be a case-by-case and country-by-country basis, but it would be determined whether or not there is a national security exemption(ケースバイケースで国ごとに安全保障の観点から例外・免除となりうるかどうかを決めるだろう)」と述べた。事実、3/8にトランプ大統領は輸入制限措置を発動する文書に署名したが適用除外国の可能性も示す寛容姿勢も強調している。要は外交上の取引に利用する可能性だ。これらを踏まえ、筆者推考が2つある。

一つは鉄鋼産業で知られるペンシルバニア州(ピッツバーグ市など)での3/13下院補欠選挙を意識し、集票目的でトランプ大統領が鉄鋼関連に従事する有権者の歓心を買う為にアピールした可能性だ。

現実に「米保護主義強行≒主要国報復≒米株急落」とした最悪のシナリオを11月の中間選挙前に強めるとは思えない。米株高はトランプ大統領就任以降、ツイッターを通じて自らが成果と誇っている数少ない生命線でもあるのだ。

二つ目は米国内選挙目的と言えども同盟関係である日本に対しては“安全保障の観点“で「ディール(取引)」を求める可能性である。

3/7に米商務省発表の1月貿易収支では赤字が前月比5.0%増の566億ドルと、2008年10月以来の高水準を示した。トランプ政権発足以降、赤字拡大は抑制されていない。1/24に「the U.S. is open for business and welcomed a weaker dollar(貿易観点から言えば、弱いドルが米国にとって良いことは明らかだ)」とムニューシン財務長官が発言したが、これはトランプ政権が貿易不均衡をドル安誘引で是正したいとの本音とも言える。

一方、3/8に本邦財務省が発表した1月経常収支は6074億円と43ヶ月連続の黒字だ。トランプ政権としては日本が同盟国であるが故に、ドル安甘受・円安封印、貿易赤字圧縮を求めてくる、とも読めるのではないか。

3/12週のドル円

米朝首脳会談合意での極東地政学リスク低減も3月決算期末特有の輸出代金や配当金に関わる円転圧力を留意。上値焦点は、3/1高値107.22、2/28高値107.53、2/27高値107.69。越えれば2/22高値107.78、2/21、2/14高値107.90-92。108円台超は難儀と予想。下値焦点は106円台維持、3/7安値105.45、3/5安値105.34、3/2安値105.235、105円台維持。オプション設定や需給意欲での堅調性を推考し2016/11/10安値104.945が最大リスクとして意識されそうだ。

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト