ドル円予想レンジ104.50-107.50
「山桜立ちの見隠す春霞いつしか晴れて見る由もがな(山桜を隠しているばかりの春の霞よいつの日か晴れて桜を見せて欲しいものだ)」-。これは光孝天皇(新勅撰和歌集)の和歌である。日本気象協会によると2018年東京地方・桜開花予想日は3/20頃。日本列島全体がピンク色に染まる桜の満開シーズン到来である。
円が警戒すべきは不安な政治情勢か
“JapangovtaltereddocumentsinscandallinkedtoAbe’swife”。これは3/12米紙見出しだ。「森友学園」への国有地売却を巡る問題で国会は空転。政府の日銀正副総裁人事案採決も遅延した。
もっとも同問題関係者の証人喚問や検察が事実関係の解明に向けた動きから与野党合意、国会正常化の見通しも強い。事実、前出の日銀正副総裁人事案は3/16に可決。黒田総裁は3/20の就任会見で、物価安定目標2%に向けた誓いを示すこととなろう。
では、国会正常化、黒田再任・現策継続が円安開花宣言に繋がるだろうか。筆者の憂いは2つ。ひとつは昨秋の衆院選で自民党が単独過半数超の議席獲得をしたことで、多数の市場参加者が安倍政権継続を前提としていることである。つまり、①順風満帆な安倍首相の揺るぎない支持勢力、②9月総裁選での3選、③アベノミクス継続、としたシナリオは描いているが、アベグジットリスクはほぼノーイメージである点だ。もし、①②③のシナリオが内閣支持率急落や重要閣僚の去就、扇情的な報道で、一時的にせよ、シナリオが脅かされれば、円安は抑制されるのではないか。
ふたつ目はドル事情だ。米利上げ確率を示すシカゴFEDウオッチ(3/16時点)での3/21・FOMC利上げ確率は約90%。次々回6/13FOMCでは1.75-2.00%への利上げ確率を70%として、金利正常化のシナリオを着実に進めている。しかし、このシナリオもトランプ大統領が中国に対し対米貿易黒字を1000億ドル削減するよう求めるなどの通商摩擦、貿易戦争懸念を強めれば、パウエル議長も“米国版忖度”としてドル高に転化せぬように利上げペースを抑制する可能性、慎重な姿勢を示す可能性も否めない。ドル円上昇での開花宣言はまだまだ先、と読めそうだ。
3/19週のドル円
3月決算期末の円転圧力を念頭に上値焦点は日足一目均衡表転換線指針の106円前半、3/14高値106.76。越えれば3/13高値107.30、2/28高値107.53、2/27高値107.69。下値焦点は3/7安値105.45、3/5安値105.34、3/2安値105.235。割れたら2016/11/10安値104.945近傍、そして104.80、50、103.80-70、103.00圏などトランプ政権誕生時の小康水準が意識されそうだ。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト