「老後の経済的不安」は、どこの国で暮らしていても共通の悩みのようだ。米国のベビーブーマー世代(54〜70歳)800人を対象に実施した調査では、老後の蓄えがあるのはわずか54%。「十分な蓄えがある」と答えたのは4人に1人もいなかった。66%が社会保障を老後の主要収入源として考えているが、401kプラン(個人型確定拠出年金)の運用資金の中央値は、理想とされる貯蓄金額の3分の1にも満たないという。

老後のための貯蓄は若い頃から始めるに越したことはない。しかし「遅すぎる」と諦めてしまっては一銭も貯まらない。米定年退職情報サイト「RealDealRetirement.com」の編集者兼ファイナンシャル・ライター、ウォルター・アップデグレーブ氏が提案する、今からでも遅くない、すぐに実行できる6つの貯蓄法を試してみてはどうだろうか。

「老後に必要な貯蓄額を計算した」のは3割未満

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(画像= Ruslan Guzov/Shutterstock.com)

米国従業員給付研究所の推定によると、「老後経済的に不自由せずに生活するためには最低25万ドルの貯蓄が必要」になるが、バンガードが55〜64歳を対象に実施した調査からは、401kプラン(確定拠出個人年金)の運用資金の中央値が7.2万ドルにも満たないことが分かっている。

こうした結果は、若い頃から貯蓄をする経済的ゆとりがなかったというよりも、老後に対する知識の欠落に起因するところが大きいようだ。「老後に備えいくら貯蓄すればいいかを計算したことがある」のは800人中25%。しかし40%が「医療費を計算に入れていなかった」だけではなく、82%が「医療費を低く見積もっていた」そうだ(米国退職年金保険協会データ)。

退職目前または既に退職したベビーブーマー世代ですら、これだけ詰めが甘いという事実に愕然とさせられるが、40代、50代、60代からでも始められる「老後貯蓄法」はある。20代から始めるのと同じような結果は期待出来ないだろうが、試してみる価値はあるはずだ。

老後貯蓄の専門家が提案する6つのチャレンジ

1.切り詰めるだけ切り詰めて貯蓄に回す

あまりにもありふれたアドバイスだが、実行するかしないかでは、10年先、20年先に大きな差がでる。「明日から」「もっと生活に余裕が出たら」と先延ばしにするのではなく、今この瞬間から実行することが重要だ。

例えば職場にお弁当屋飲み物を持参する、コンビニでの無駄遣いやたばこをやめる。浮いたお金を個人型確定拠出年金や終身保険に回す。50歳から月3万円の「切り詰め貯蓄」を始めたとしても、65歳になる頃には元金だけで540万円だ。老後資金のすべてを補うには不足だろうが、「本来ならば消費されていたお金」と考えると、実行する価値は十分にある。

2.投資・副業で「増やす」

切り詰めるだけが手段ではない。投資や副業で「増やす」という手もある。

「投資は苦手、分からない」という初心者は、少額から低コストで投資出来るロボアドから始めてみるといい。またインターネットやシェアリングエコノミーが普及した現在、P2P融資や自宅の空き部屋、車、駐車場を貸したり、ブログやアフェリエイト、オークションなどで、プラスアルファのお金を稼げるチャンスが拡大している。

3.ポートフォリオを整理する

既に投資をしているのなら、自分のポートフォリオを見直してみる。ここで重要なのは、「老後の資金が足りない」と焦ってポートフォリオを拡大しないこと。いたずらにリスクを高めるよりも、最も効率的に最大限の利益を期待できるポートフォリオに組み直す。

近年は自分が耐え得るリスクレベルと希望のリターン率を入力するだけで、理想的なポートフォリオを構成してくれるサービスも増えている。こうしたツールを利用して、賢い投資で老後に備えよう。

4.住み替え・借り換えを検討する

勇気のいる決断ではあるが、もっと小さな家や住宅費・生活費の安い地域に住み替え、浮いたお金を老後資金に回す高齢者も多い。経済的な理由だけではなく、子どもが巣立った後は、小さな家の方が管理しやすいという利点もある。

定年退職にはまだ時間があるという場合でも、退職後の住宅ローンを正確に把握しておくことは非常に重要だ。借りた時には「繰り上げ返済や退職金で何とかなる」と楽観視していても、人生には予期せぬ出来事が待ちうけている。給与が下がった、リストラされた、教育費が予想以上にかかったなど、返済計画が大きく狂うことも多々ある。残高とともに金利も見直し、金利が高いようであれば、低い金利への借り換えも検討すべきだろう。

5.クレカやローンを完済する

住宅ローン以外の負債をなるだけ早く完済する。返済期間が長くなればなるほど、分割払いやリボ払いの利息や手数料はかなりの高額になる。例えば20万円相当の商品を毎月5000円のリボ払いで買ったとして、手数料の実質年率が15%だったとする。完済に3年強を要し、手数料は5万円を超える計算になる。

分割払いやほかのローンも同様、返済期間が長引けば、それだけ利息を多く支払わなくてはならない。出来る限り早めに完済し、その分を老後の貯蓄や投資に回す方が、よほど建設的だ。

6.定年後も働く

「今からでは絶対間に合わない」あるいは「もっとゆとりのある老後を送りたい」というのであれば、定年の年齢にこだわることなく、身体に支障が出ない限り働き続けるのも一案だ。

OECDが「労働力統計報告書」によると、アイスランドでは65歳以上の高齢者の4割以上が現役で働いているという。日本は22.8%とほぼ2分の1だが、仕事に生きがいを感じる高齢者も増えている。年金受給開始の年齢に達したからといって、働いてはいけないという法はない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)