おなじみの家具やお菓子の会社で、親族同士のお家騒動がニュースとなり、テレビのワイドショーを賑わせたことは記憶に新しいでしょう。会社の支配権を争ったり、親族経営に端を発した問題など、第三者から見ればいかにもセンセーショナルです。

このような争いの多くが、親から子への事業承継に絡んでいます。事業承継は経営者だけではなく、従業員や顧客、取引先などにも大きな影響を及ぼすことがあります。うまく承継できれば問題ないのですが、経営手腕や事業への知識や経験が乏しい後継者が社長の座に就くと、企業の将来に禍根を残すケースもあります。

その点、適切な「人事評価制度」を導入、運用していれば、経営者が代わっても企業マネジメントで大いに効果を発揮します。親から子へ事業承継する手続や注意点を検討します。

親が子へ事業承継する3つの方法

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(写真=stockfour/Shutterstock.com)

日本での事業承継は、創業者である社長が一代で会社を築き上げ、子に経営権を譲るのがよく見られるケースです。これまでは、こうした流れが当たり前のように行われてきましたが、企業が社会的な存在である以上、事業承継にはしっかりとした理由や根拠付けが必要です。安易な子への承継は、従業員や取引先にとっても大きな問題になる場合があるからです。

事業承継には子へ経営権の譲渡、すなわち自社株を受け継ぐことが法的な前提です。もちろん、親が会長や顧問などの名誉職に退いて保有する株式を子に引き継ぐケースもあります。株式の譲渡には税金が発生します。事業承継の方法により、税金や税額は異なります。法的には、主として売買契約や相続、生前贈与で行われることが一般的です。

● 売買契約の場合
経営権を取得するため、子が親の持ち株を購入して事業承継する方法です。相続、生前贈与と異なるのは、経営者である親が税金を払うことです。株式の取得価額と売買価格で生じた売却益を、親が支払います。買収的な事業承継と言われています。

● 相続の場合
相続の場合は、経営者=被相続人としての親が死亡した後に受け継ぐことになります。このケースでは、他の遺産と合わせて相続税を支払う必要があるので、相続人の子によって自社株が分散する恐れがあることに注意が必要です。

● 生前贈与の場合
経営者である親が子に生前に贈与するので、親が元気なうちに持ち株を譲ります。贈与税は、受け取った株式の価格に応じて生じるので、受取人の子が税金を納めることになります。

この贈与税には相続時精算課税制と暦年課税制の2通りあります。相続時精算課税制は非課税額を超えた部分に対しての税率は一定で、20歳以上の推定相続人が受取人。贈与者は、60歳以上の親という制限が付いています。暦年課税制は、1年間の贈与額の合計が110万円までの場合は課税されない制度です。

親から子への事業承継には相続・税金対策が不可欠

親から子への一般的な事業承継は、相続と生前贈与が主となりますので、法律に基づいた適正な相続対策が欠かせません。特に、有益な事業承継を行うには税金対策が必須なので、相続税と贈与税の納税猶予制度を有効に利用しましょう。

納税猶予とは、条件を満たすと一定期間の納税が猶予される制度です。中小企業といえど、自社株の金額は基本的に一定の大きな額であることも多く、それに伴って支払う税金は高額になります。事業承継の直後は何かと経営も不安定で落ち着きません。納税猶予を使えば、経営がある程度軌道に乗るまで納税を待ってもらえるのです。

人事評価制度の運用で企業マネジメントも継続

親から子への事業承継には、従業員や取引先などにも大きな利害関係があるので、何よりも事業を継続することが大切です。複雑な税金制度も絡むので、公的機関はもちろん、弁護士や公認会計士、税理士など専門家の力を借りましょう。

そして、中小企業では人事評価が事業承継の大きな鍵になります。というのも、中小企業において人事評価がブラックボックス化していることが多くあるのではないでしょうか。評価や給与について、創業オーナーの判断なら社員も納得していたかもしれませんが、後継者が同じことをしたときに、社員から不満や反発が溢れてしまったという事例もあります。事業承継に向けて組織の整備をしていく中で、目標設定や評価において管理職のマネジメント能力を高められるような「人材育成」に繋がる人事評価制度を構築することが、骨太な組織を作ることに繋がります。(提供:あしたの人事online


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