本記事は、生井 秀一氏の著書『13歳からのアントレプレナーシップ』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

やらない後悔は一生残るが、やった後悔は笑い話になる!
「あれをやっておけばよかったー!」と後悔したことはない?
やらない後悔は一生残ります。
一方、やった後悔は忘れます。というか、笑い話になるんです。ネタになるので、後悔もなくなっていきます。
実は僕は、高校時代、生徒会長をやってみたいと思っていました。でも、落ちたら恥ずかしいと思って、立候補できなかったんです。ちなみに、同じ野球部の友人は「俺が生徒会長になる!」といって立候補して、落選していました。でも、それをネタにして笑っていたんです。僕も友達のネタで笑ってないで、挑戦してみたらよかったのに、と思いました。
大人になって振り返れば、生徒会長に受かっても落ちても、どちらもマイナスではないんです。どう転がっても自分にとってはいい経験になります。
僕も実際に挑戦してみて失敗し、ネタになっていることがあります。
高校時代、僕は好きな子ができました。でも、野球部には「彼女を作ってはいけない」という昭和的なルールがあったので、ギリギリセーフ(?)の「花火大会にその好きな子を誘う」ということを決行したんです。意を決してお誘いをしたのですが、「私、そういうのはちょっと……」と断られ、あえなく撃沈。もちろん、その当時は大ショック。でも、今では僕の失恋ネタになりました。
校長公募があったとき、まさに「やらない後悔は一生残るが、やった後悔は忘れる」という言葉が頭をよぎりました。悩みに悩んで、決断をしなければいけないその日が来ることが怖いくらいでした。
でも、やらなければ、絶対にあのとき「やっておけばよかった」と後悔する。
100%そう思ったので、飛び込むことに決めました。
すると、応援してくれる人がたくさん現れて、「よく決断したな」といってくれる人までいました。そして、今もなお僕の挑戦は継続中です。
体験=肌で感じる大切さ
僕は今の中高生は「自分がやりたい」と思ったことを、体験することが少なくなっているのではないかと感じています。
家と学校を往復して、電車の中では単語帳を見て、朝の時間はテストのために勉強をし、きっと家ではたくさんの宿題をしていると思います。そんな中で、この本を読んでくれて僕はすごくうれしい。だから、少しでもきみたちが生きていくうえで役に立つことを伝えていきたいと思っています。
同じ環境で同じ生活を繰り返していると、新しい発想や想像力が生まれにくくなります。だから、僕は閉ざされた世界から少し飛び出して、俯瞰して学校や教室、学びを見られるといいなぁと思っているんです。
例えば、行事のときに思いきり弾けてみるという経験も大いにアリ! 下妻一高生は文化祭や体育祭でメイクをしたりカラフルなウィッグをつけたりと思いきり弾けていた。中には、いつもおとなしい子がびっくりするほど派手な格好をしていて。僕はそんな姿を見てとてもうれしかったんです。
本当はこんなにもみんなエネルギーあふれる自己表現をしたいのだ、と感じました。
茨城県には「ラーケーション」が導入されています。ラーケーションとは、「ラーニング:learning(学び)」と「バケーション:vacation(休暇)」を掛け合わせた造語で、茨城県の他にも愛知県や山口県、徳島県などさまざまな自治体が進めている制度です。
茨城県の制度は、年間5日間まで自由に学校を休んでいい、というもの。家族と出かけてもいいしひとりで旅をしてみてもいい。僕は「積極的に使いなさい」と生徒たちに伝えていて、甲子園を目指している子が日帰りで実際に甲子園球場を見に行ったりもしていました。
他にも、茨城県が実施しているアントレプレナーシップのイベントに参加したり、ボランティア活動に行ったりと、少しずつ活用する生徒たちが増えてきたと感じます。
こういった、学校とは違う環境に触れる機会はとても大事。だから、迷ったらやってみることを選んでほしいんです。
僕がなぜこうした体験が必要だと感じているかというと、生きることとはとても多彩で、いろいろな感情が動くものだと知ってほしいからです。人からいわれたことだけをこなしていくと、作業のような世界から脱することができなくなってしまいます。
そして、作業はそう遠くないうちにデジタルに代替されるようになっていく。思うようにいかないことも、トラブルも、よきせぬ出会いも、想像もしなかったような素敵な出来事があることも、一度経験しておくと自分の糧になります。
そして、人間にしかできないことを見つける体験にもきっとつながっていくはずです。それは人生の道を切り拓く、アントレプレナーシップへとつながっていくのです。

2023年にキャリアトランスフォーメーションに挑戦し、茨城県内の公立中高一貫校の「校長」を教員免許不問で公募するプロジェクトに応募。
1600人を超える応募者の中から合格者3人のうちの1人に選ばれ、2024年4月より民間出身の校長として現職に至る。
民間人校長による学校経営で、「校長就任1年目で過去最高の志願倍率」を記録。花王で培ったマーケティングスキルやアントレプレナーシップ精神を教育業界にも持ち込み、VUCA時代を生き抜くための次世代人材育成に邁進している。
早稲田大学ビジネススクールで経営学修士(MBA)取得。吉本興業に文化人として所属。
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