(本記事は、渡邉哲也氏の著書『ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0 2020年までに生じる世界のリスクと新たな秩序』徳間書店、2018年1月31日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
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「失われた20年」で何が起こっていたのか
まもなく平成が終わる。
平成の御代は、日本にとって混乱の時代でもあった。バブル崩壊と失われた20年を経験し、戦争こそなかったものの幾多の震災に見舞われ、政権交代による政治的混乱も著しい時代であった。しかし、それは戦後を清算するために必要な時間だったのかもしれない。
そしていま、日本は平成に終わりを告げようとしている。
2018(平成30)年1月4日。その年の株式相場を占う大発会は741円39銭高の2万3506円33銭と高値引けとなり、大発会の上げ幅としては1996年(749円85銭)以来、株価としては26年前の1992年1月9日以来の高値で取引を終えた。
日本の株価は26年間にわたって、上下の幅はあったものの過去を超えることができなかったのである。右肩上がりの経済から縮小再生産の経済に、そしてインフラからデフレのスパイラルに......というのが、この20年以上の流れだった。
物事には原因があり、過程があって、結果が生じる。これはすべての原則であり、株価も一つの結果といえる。過去は変えられないが、未来は変えることができる。そして、未来を変えるためには過去から学び、さらには先を見据えた適切な方策をとっていく必要がある。
まず、何が日本をダメにしたのかを考えていきたい。デフレのきっかけは、間違いなくバブルの崩壊によるものだろう。しかし、バブルというのは景気循環のサイクルの一部であり、たんなる一過性の現象にすぎない。問題は、バブル崩壊後に不良債権処理を誤り、その後の不況を長引かせたことにあるのだろう。そして、日本人のまじめな国民性と相まって、すべてが自粛や節約の方向に向かっていったことも、不況の長期化を助長した。
デフレとは、モノの価格が下がっていく現象である。需要と供給のバランスで考えれば、供給過剰の場合に発生する。要は、買い手が少なくモノが余って値下がりしていくという現象だ。
これは、消費者にとっては嬉しい現象であるといえる。昨日100円だったものが、今日は90円で買えることになるからだ。多くの人は、この状況を「得をした」と考える。そして、さらに価格が下がることを期待して購入を先延ばしする。その結果、買い替えなどの購買サイクルが長期化し、需要が減少していくのである。
これが日本全体で行われると、どうなるか。日本の人口は約1億2000万人である。単純計算で、100円の場合は120億円の売り上げを見込めるが、90円になれば売り上げは108億円になってしまう。このデフレという現象は、生産者と販売者にとっては地獄である。長期にわたる価格の切り下げ圧力により、利益は減少し、場合によっては赤字化するからだ。
そして、それを解消するためにリストラや賃金カットなどを行わなくてはいけなくなる。また、利益が減るので配当などを減らす必要が生まれ、それが株価を引き下げ、企業の体力をどんどん奪っていくことにつながる。
ここでのいちばんの問題は、消費者と販売生産者がほぼ同じであるということだ。デフレスパイラルではモノの値段が下がりつづけるが、同時に利益や賃金も下がりつづけてしまう。そして、それに耐えきれなくなった企業から淘汰されていくことになる。
当然、景気などよくなるわけがない。この繰り返しが「失われた20年」で起こっていたことといえる。
渡邉哲也(わたなべてつや)
作家・経済評論家。1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。2009年、『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告し大反響を呼んだ。著書にベストセラーとなった『これからすごいことになる日本経済』『パナマ文書』(徳間書店)の他、『欧州壊滅 世界急変』『決裂する世界で始まる 金融制裁戦争』(徳間書店)、『「お金」と「経済」の法則は歴史から学べ!』(PHP研究所)、『貧者の一票』(扶桑社)、『メディアの敗北』(ワック)など多数。