(本記事は、渡邉哲也氏の著書『ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0 2020年までに生じる世界のリスクと新たな秩序』徳間書店、2018年1月31日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

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ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0
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統制で不動産バブルを拡大する異常な中国経済

ポスト平成ですごいことになる日本経済2.0
(画像=maoyunping/shutterstock.com)

中国経済の前途は、依然として不透明だ。2015年夏に株式バブルが崩壊したが、これを金融規制と大規模な資金供給などによって乗り切った。しかし、ダブついたマネーが不動産バブルを引き起こし、いまは高すぎる不動産価格と多すぎる不動産建設計画が大きな問題となっている。

当然ながら、不動産市場は供給過剰の状態が続いており、「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンがいたるところに生まれはじめている。日本でも、バブル崩壊後に入居者のいないマンションや建設途中で放置されたビルが生まれたが、それと同じ現象である。

では、なぜ不動産会社はつぶれないのか。中国では、実質的に地方政府が不動産デベロッパーの役割を担っている。地方政府は傘下に地方融資平台という投資会社を抱えており、これが資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備えている。この仕組み自体にもさまざまな弊害があるわけだが、それでも表向きはまわっているかのように見せているのが中国経済の実情である。

また、習主席は社会主義の復権を掲げ、さまざまな規制を強化する方針を打ち出している。中国の消費は旺盛な内需によって支えられているが、習主席が掲げる思想とは正反対ともいえるわけで、どうやってバランスをとっていくつもりかは不明である。場合によっては、中国経済がハードランディングする可能性もあり、そうなれば世界的なリスク要因となることは必至だ。

2017年12月には、人民元市場で越年資金をめぐるクレジットクランチ(信用収縮)が発生した。上海短期金融市場で人民元金利が急上昇し、日物レポ金利が一時的に10パーセントと4年ぶりの高水準になったのだ。

基本的に、銀行は金利の安い短期の資金を調達し、それを借り換えることで資金運用を行っている。また、銀行間市場では毎日決済が行われ、清算された状態で翌日を迎える。資金が余った銀行はそれを余剰資金として市場に出し、資金が足りない銀行はその資金を借り入れる。

このとき、貸し手が提示する金利を「銀行間貸し手金利」と呼ぶ。この金利は、市場に資金が余っていれば下がり、逆に足りなければ急上昇する。ここには中央銀行も参加しており、資金が枯渇した場合には中央銀行が貸し手にまわることで金利の調整を行っている。

上海短期金融市場の動きは、年末の資金需要が高まるなかで資金が枯渇したため、金利が急上昇することになったのである。通常であれば、年末年始などに備えて中央銀行が多めに資金を供給して資金の枯渇を予防するのだが、それが機能していなかったようだ。

その理由としては、3つ考えられる。

(1)中央銀行の予想よりも資金需要が高かった。
(2)中央銀行が意図的に引き締めた。
(3)その両方。

いずれにせよ、2018年も中国経済は視界不良の状態が続くのではないだろうか。

渡邉哲也(わたなべてつや)
作家・経済評論家。1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。2009年、『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告し大反響を呼んだ。著書にベストセラーとなった『これからすごいことになる日本経済』『パナマ文書』(徳間書店)の他、『欧州壊滅 世界急変』『決裂する世界で始まる 金融制裁戦争』(徳間書店)、『「お金」と「経済」の法則は歴史から学べ!』(PHP研究所)、『貧者の一票』(扶桑社)、『メディアの敗北』(ワック)など多数。