ついにアリババ上場
2014年9月、投資家ならず、世界中の企業がある上場株に熱視線を送っています。その企業の名前はアリババ・グループ・ホールディング(阿里巴巴集団 以下:アリババ)。2013年大きな注目を集めたフェイスブック(Facebook)を大幅に超える、最大220億円もの上場資金を調達したと言われるアリババは、上場後の価値は2000億ドル(約20兆8,000億円)を超えるのではと言われており、間違いなくIT企業上場の歴史を大きく塗り替えることが予想されています。
今回のアリババ上場によって大きな影響を受けるのではないかと言われているのが、競合と目される、通販サイト大手のアマゾン・ドット・コム(Amazon.com, Inc. 以下:アマゾン)です。そこで今回は、アリババと同じEコマースを土俵としているアマゾンと比較しながら、アリババがどういった企業なのかについてご紹介します。
比較その1:成長戦略
どちらも創業から破竹の勢いで急成長を続けてきたアリババとアマゾン。2社のこれまでの成長戦略は「新しいことを推し進めた業界の破壊者」という部分、そして「M&Aによる成長」という点で似通った部分があります。
特に「新しいことを推し進めた業界の破壊者」という点において、アリババは中国Eコマース市場の、アマゾンは米国ならず世界の書籍Eコマース市場の破壊者と言われることもあるほど、それまでのEコマースの手法を塗り替えながら成長を続けています。例えばアリババは2003年、C2Cサイト「タオバオ(陶宝)」を創立した際、それまで当たり前だった商品登録費を3年間無料にするサービスを展開。
当時中国C2C市場を席巻していた易趣eBayの牙城を崩し、今や中国C2C市場最王手に躍り出ています。同様に、アマゾンも創業当時「ネットで書籍は売れない」という常識を覆し、Eコマース市場を席巻していったこと、そして自社の物流センターから送料無料で配送を行うなど、これまでのEコマースの常識を覆したサービスで成長を続けています。
今後アリババが世界市場に進出するにあたっては、アマゾンの牙城に切り込むための戦略が少なからず求められます。アマゾンが米国から世界に市場を広げられた理由は、後述するM&Aによる市場地盤を固める行為だけでなく、直感的なUIと操作性、ユーザー第一主義のサービスによるところが大きいと考えられます。
一方のアリババは、アマゾンほど直感的なUIや操作性を追求していない節が見られます。これは、後述する主な収益構造の違いによるところもありますが、アリババはこうした部分で勝負するのではなく、まず世界中の中国人をターゲットに市場規模の拡大を図るのではないかと言われています。
すでに中国Eコマース市場で圧倒的なシェアを誇るアリババ。その評判は欧米人や私たち日本人よりも、中国本土以外に住む、世界中の中国人の耳に、より新鮮な情報として届いているようです。現状では中国を中心としたアジア圏のEコマースで大きな力を持つアリババ。
今回の上場によって、アジア戦略を強めることはもちろん、現状アマゾンに対して劣勢状態にある欧米に対しては、アマゾン同様M&Aによる地盤固めと平行して、現地中国人たちを取り込む戦略から、各地域のEコマース市場を拡大することが考えられそうです。