比較その2:M&Aによる成長とその内容

前述したとおり、両者に共通する成長戦略の一つに活発なM&Aが挙げられます。特にアリババは、各地域のEコマース市場拡大のために、より活発にM&Aを進めていくものと考えられます。アマゾンも上場後、M&Aを活発に行い、各地域のEコマース市場を席巻していった経緯がありますが、アリババとアマゾンが異なるのは、買収する企業の業態です。

アマゾンの場合、上場後しばらくはイギリス大手のオンラインブックサイト「ブックページズ」やドイツ最大のブックサイト「テレブッフ」など、これまでと同業態の買収を行い、その後テレビや映画の情報をインターネットで蓄積していたIMSBや、家庭向け食料品を販売していたホームグローサー・コムの株を買い、その後、アマゾン内の他業種販売に乗り出すといった傾向が見られます。

一方のアリババは、上場にあたって、特にアメリカのさまざまなスタートアップの買収や融資が目立ちます。その業種もさまざまで、閲覧時間を過ぎるとアプリ上から写真が消えるフォトメッセージサービスで高い人気を博す「スナップショット(Snapchat)」に融資話を持ちかけたり、ゲームアプリ開発の「カパム」に1億以上の融資を行ったりと、上場後のアマゾンとは若干異なる動きを見せています。欧米では大きな力を持つアマゾンに対して、これまでとは違った業態から攻めていくというアリババの姿勢なのかもしれません。


比較その3:主な収益構造

似通った部分もあるアリババとアマゾンですが、大きく異なる部分もあります。それが主な収益構造です。アマゾンの主な収益は出店料と成約手数料、対するアリババの主な収益は広告収入です。つまりアマゾンにとっては、一人でも多くのユーザーに利用してもらうこと、より良いサービスでユーザーを集め、購入を促進するサービスを提供することが、収益の拡大につながります。

しかしアリババにとっては、広告収入を得ることができれば事業展開を図ることができます。すでに中国国内での基盤を確固たるものにしたアリババが、ユーザーの満足度を高めるよりも、出店者たちの満足度を高め、ユーザーUIなどを重視しなかった理由がここにあります。

また、Googleなどの検索順位を上げることで、外部からのユーザーを獲得してきたアマゾンと違い、アリババは広告収益が大きいという点から、サイト内回遊・検索によってユーザーが商品を探すという形を確立しています(もちろんGoogleの検索でもヒットしますが、日本では必ずしも検索順位は高くありません)。

この収益構造が、営業利益51.2%(2013年第2四半期〜第4四半期)という、驚異的な収益を稼ぎだしていますが、すでにアマゾンのオープンなネットショッピングに慣れてしまったユーザーたちにどうアプローチしていくか、そこから広告主にどうアピールするかが、今後のアリババの成長に大きく影響するのではないでしょうか。


今後の動向に注目

今回のアリババの世界進出の様子を見て、他の中国Eコマース企業も世界進出を考える可能性も考えられます。そもそも中国Eコマース市場はアリババ一人勝ちの状況でしたので、中国Eコマース市場においても転換期となるのかもしれません。

アリババを迎え撃つ形となるアマゾンですが、ジェフ・ベゾスはアリババの上場に対し、あくまでこれまで同様独自路線を貫くような姿勢を見せています。アリババの今後の動向はもちろん、アマゾンの動きにも注目しておきたいですね。

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