ドル円予想レンジ107.50-111.20

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=PIXTA)

「これまでの歴史をみると米国との金利差が3%に達すると必ずドル高・円安に振れる。例外は一つもない」-。これは3/29午前の参院財政金融委員会で麻生財務相が示した見解だ。米財政赤字の現状に言及し、「間違いなく米金利(長期)は上がらざるを得ない」とも発言。4/23に米10年債金利は2014年1月以来の3%を示現した。

円売りではなく、自律反発でのドル高に

昨年末にトランプ大統領が行った大型税制改革(法人税減税等)による環境形成が好循環経路となり、賃上げ・需要拡大・物価上昇、としたデータに反映し始めた。これにより、パウエルFRB議長が示唆している年内3回の利上げシナリオが、年4回に書き直される可能性を筆者は推考。日米金利差に着目した動きに警戒心を抱いている。理由の根底はシンプルだ。トランプ減税を機に、米企業が雇用確保と従業員への還元の為に最低賃金を引き上げ始めたからである。米連邦政府が定める最低賃金(時給)は7ドル25セントだが、本年1/1から米18州で引き上げられ、NY市などでは13ドル(≒1417円)に。多くは報じられていないが、4/1のNY州議会では年末に向け時給を15ドルに引き上げる合意がなされているのだ。

4/6に米労働省が発表した3月雇用統計では、平均時給は26.82ドルで前年同月比2.7%増と判明。恐らく5/4の4月雇用統計でも基調は継続するのではないか。4/11の3月消費者物価指数(CPI)では物価基調の上昇が認められており、5/10のCPIでも好調が改めて確認されれば、賃金・インフレ圧力の上昇は米長期金利を後押しすることとなろう。結果としてFRBの利上げテンポを強める可能性が浮上する形だ。

シカゴCMEのFEDウォッチ(4/27時点)では、5/2のFOMC連邦公開市場委員会における1.75-2.00%への利上げ確率は6.7%。しかし、6/13では93.3%となり、9/26では72.1%の確率で2.00-2.25%への利上げ見通しとなっている。既に3月に利上げが実施されたが、市場は6月、9月を利上げで見込み、更に12月には2.25-2.50%への利上げ確率が39%となっている。つまり、年内計4回の米利上げシナリオは徐々に萌芽しているのだ。前出の麻生財務発言をベースに、日米10年債金利差、3%超えがGWのドル高(円安)警戒度を強めることとなろう。

4/30、5/7週4ドル円見通し

上値焦点は2/8高値109.80、節目110.00。越えたら110円前半推移の200日線、2/5高値110.30、2/2高値110.475、本年高安61.8%戻しの110.49を推考。1/22-23高値圏111.19-23期待は望外か。下値焦点は日足一目均衡表雲(上限108.19-107.552)が緩やかに支援していることを念頭に4/23安値107.69、4/20安値107.37、4/19 安値107.17を推考。

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト