アベノミクス発動から5年半。政治の混乱も叫ばれるなか、日本株は今後どのように動いていくのだろうか。あのジョージ・ソロス氏から運用を託され「最も長くソロス氏と付き合った日本人」と呼ばれた阿部修平氏(スパークス・グループ代表取締役社長)に、見通しと運用哲学について聞いた。(聞き手:ZUU online編集部 菅野陽平)※インタビューは4月25日に実施 ※文中敬称略

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(画像=ZUU online編集部)

——2015年初に『株しかない』という本を出版され、そのなかで「2020年に日経平均4万円を超える」と述べていらっしゃいます。

僕は占い師じゃないからドンピシャ2020年かどうかは分かりません。ただ、必ず4万円になると思いますよ。株は上がるようにできているんだから。株価は企業の成長の鏡じゃないですか。そして日本企業の経常利益は、もう平成バブル時を超えているんですよ。総額でいえばバブル時の3倍になっているはずです。

ただ残念なことに、売上はあんまり伸びないんですよ。株式市場というのはトップライン(売上)が伸びないのが嫌いなんですよね。でもデフレだからしょうがないです。むしろ売上が伸びてないのに、利益が3倍になっているくらい日本企業は底力があったんですよ。これでデフレから脱却すれば「売上が伸びて利益も伸びる」という株式市場がすごく好きなトレンドに入ります。

利益が増えていく企業は、いつか分からないですが株価は上がっていきます。利益がどんどん減っていく会社に長期投資してもダメですよ。利益成長していく企業を長期間保有する。この大原則を守っているから、手前味噌ながら、うちのファンドは安定的にずっと儲かっているわけです(笑)

世界では金利が上昇し始めています。金利は期待インフレ率の裏返しじゃないですか。だから、モノ、サービス、そして資産価格が上がると世界中の人が思い始めているということですよ。日本もその例外ではいられません。今はもう鎖国状態でいられる国はないんですよ。

これまでデフレの極みにあったから「資産価格は上がる」というムードがなかなか醸成されなかったですけど、普通になっていく、つまり資産価格が上がっていくトレンドに入ったということを拙著で述べたわけです。

——利益はフローの概念ですが、ストックの面から見たらいかがでしょうか。

日本の株価純資産倍率(PBR)はいま1.4倍くらいでしょうか。世界の株式市場の平均レンジは1.5〜2.5倍です。多くの投資家はPBRをバリエーションの指標と考えていて、割高になったら売って、割安になったら買い向かいます。しかし、日本市場のPBRはリーマンショック以降、レンジ下限の1.5倍をずっと下回っています。長期間に渡るデフレが原因ですが、デフレ意識はこの数年で払拭されるでしょう。そうなると、日本も世界の平均レンジ内に戻ってきます。

しかも、現在の1.4倍のPBRは「ROE8%」で計算されています。今年は10%を超えてくるはずなので、PBRはもっと上昇するでしょう。仮に8%のままで計算したとしても、日経平均の純資産は、3年後には2万円になる計算です。PBR1.5倍だと日経平均3万円、PBR2倍だと4万円、PBR2.5倍だと5万円じゃないですか。あんまり株価に理屈をつけてもしょうがないんですけど、日経平均4万円は不可能な水準ではありません。

PBR1倍、つまり市場価値と純資産の価値がイコールであるならば、ビジネスの価値はゼロということじゃないですか。ものすごく単純化して言うとね。ビジネスが縮小していくんだったらそう思われてもしょうがないですよ。長期的にディスカウントしていったらゼロになるので。でも、少しずつ伸びていく企業であれば、ビジネスの価値をゼロと置くのはおかしいですよね。

今この瞬間はほぼゼロと考えている環境にいるんだという特殊性をいかに理解できるか。長い歴史の中でどれだけ稀有な環境にいるのか。「こんな時代に生まれて良かったな」と思う人がお金持ちになると思います。こんな状況、もう二度と起こらないですよ。実は大恐慌のあとのアメリカも同様でした。今の日本は、アメリカでバフェットが投資を始めた時期と似てるんですよ。今うまく立ち回った人のなかから、日本のバフェットが出てくるかもしれません。

投資家が行うべきことは、とにかく良い企業を探すことです。そして、良い経営者が経営する良い企業を見つけたら、その株をずっと持つこと。バフェットはそうしてきただけなんですよ。

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(画像=ZUU online編集部)

——株は怖い、という印象を持つ人もまだまだ多いと思います。

正直にお話しましょう。僕は株で損したことがありません。なぜかというと、含み損があるときは売らないから(笑)

まずは「配当で十分」とマインドセットすることです。例えば、メガバンクはバーゲンセールだと思いますよ。今、投資をして長く保有することです。立場上、固有名詞を述べることはできないのですが、メガバンクは3%台の配当を出してくれているところもありますよね。確かに難しい環境だとは思います。デフレで、マイナス金利で…。それでも利益を出している。ほとんど不良債権はない。日本社会の優秀な人材が多く入行して、もっと良くしていこうと知恵を絞っている。

そもそも銀行というのは、構造的に利益が出る商売なんですよ。メソポタミア文明には、金貸しの記録が残っているんですよ。わかりやすい商売だから、紀元前から存在し、今日まで残っているのです。そういう銀行株の配当利回りが3%だったら、銀行に預金として預けておくよりいいじゃないですか。冷静に考えると銀行に預けておくリスクと、銀行株を持つリスクは、現在のような株価だと、ほとんど変わらない。もしかしたら預けておくリスクのほうが高いかもしれません。

あんまり深く考えないで単純に賢くなることです。10年後、キャピタルで儲からなくてもインカムで3%ずつ取ったら十分じゃないですか。キャピタルもたくさん取れるとは思いますけどね。配当は、基本的に利益が増えたら増える(増配する)んですよ。そこが金利と違うところです。

銀行の利益はこれからも増えますよ。銀行は過小評価されています。AI時代で一番重要なのは「データを持っている」ことです。銀行ほどデータを持っている会社は日本にはないでしょう。僕も大学時代から銀行を使っていますので、僕の歴史は銀行システムに全て蓄積されています。ほとんどの人は同様じゃないでしょうか。使い方をまだ知らないだけで、今後、その価値が顕在化してくると思いますよ。もちろん、うちのファンドでもメガバンクを買っています。言ったことはちゃんと実行していますよ(笑)

——阿部社長は30歳のときウォール街で独立し、あのジョージ・ソロス氏から運用を託されました。「ソロス氏と1番長く付き合った日本人」と呼ぶ人もいたそうですね。

当時は「一番長く付き合った日本人」と、よく周りの人から言われました。約3年ソロスさんのところにいましたので。いたというか、雇われていました。ただ、決して僕が優れていたからではありません。よく「能力的には大したことないけど、お前しかいないから」と言われていました。

「ソロス氏との出会い」や「現代での富の築き方」を語る【後編】はこちら

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阿部 修平(あべ・しゅうへい)
スパークス・グループ株式会社代表取締役社長。1980年、ボストンのバブソンカレッジでMBA取得。1981年、野村総合研究所に入社後、ニューヨークのノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルに出向し、米国の機関投資家向けの日本株のセールスに従事。1985年にニューヨークで独立し、ジョージ・ソロス氏から1億ドルの運用を任される。1989年、日本でスパークス投資顧問(現スパークス・グループ)を設立。2001年に上場。2005年、ハーバード大学ビジネススクールでAMP取得。現在の投資対象は日本の上場株だけでなく、アジアの上場株、再生可能エネルギー発電施設や不動産といった実物資産、そして米国、イスラエル、日本などの未上場企業にまで広がってきたが、価値と価格の差に着目する投資哲学は一貫している。プライベートでは作詞、作曲、ギター演奏に加え、絵画も描く。近著に『暴落を買え!~年収300万円から始める資本家入門~』(ビジネス社 2017/5/24)