ライブドアショックやリーマンショックで株式・FX投資で大損を経験した著者の丸川氏は、手元に残ったわずかな予算で「新築アパート投資」を始め、いまでは利回り10%を超える新築アパートを建築し、サラリーマン向けに投資サポートを行なうほどだという。その丸川氏が教える、中古住宅よりも新築アパートのほうが高い利回りが出せる理由とは。

(本記事は、丸川隆行著『稼げる「新築アパート」実践投資法』=日本実業出版社、2018年5月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【『新築アパート実践投資法』シリーズ】
(1)サラリーマンが「新築アパート」投資で高い利回りを出す方法
(2)インターネット不要、エアコンは買わない――「新築アパート投資」を成功させる設備選び
(3)不動産投資のカギは「融資」 いい金融機関に巡り合うには

新築アパート実践投資法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

不動産投資は「新築アパート投資」がおすすめ

初めて投資用不動産を所有するのであれば、新築アパートを自らつくり上げるのが一番よいと思います。

新築アパートがよいという理由は、収益性・資産性・返済リスクの観点で、他の不動産投資方法より優れていると感じているからです。

それでいて、インターネットを駆使することで、誰でもゼロから土地を探して新築アパートをつくり上げることができるのです。

キャッシュフロー3%の「高い収益性」を目指せる

新築アパート実践投資法
(画像=Takashi Images/Shutterstock.com)

初めての不動産投資としてお勧めする最も大きな理由は、収益性の観点です。投資額に対するキャッシュフロー率、3%を実現することができるからです。

キャッシュフローは、簡単にいうと家賃収入から経費や金融機関への返済金額を引いて、「最終的に手元に残った金額」のことです。その金額を物件金額で割った時の割合がキャッシュフロー率です(精緻に計算する際は税金についても考慮しますが、物件ごとに異なるため、本記事では加味していません)。

普段、「表面利回り」を基準に物件を探している方には、キャッシュフローといわれてもピンとこないかもしれません。

表面利回りは、年間の家賃収入を物件価格で割ったもので、その利回りの高さがイコール手元に残るお金ではありません。キャッシュフローは、手元に残るお金です。

どんなに表面利回りが高くても、賃貸に関する経費が多くかかってしまっては手元にお金は残りません。また、融資を受けている場合は、融資の金利と期間によって返済金額が多くなると、やはり手元には残りません。

ここでキャッシュフローを理由にしているのは、利回りで見る家賃収入の部分だけではなく、家賃収入から返済額や経費を引いた後に残るお金のメリットをいいたいからです。

不動産業者に聞いてみると、最近の不動産投資市場では、キャッシュフローは投資額の1.5?2%が普通だといいます。少ないキャッシュフローでうまく運営していければよいのですが、初めて不動産を購入する方や、現在なかなか収益が上がらないと嘆いている投資家さんにとって、この程度のパーセンテージのキャッシュフローではリスクがあると感じます。

自らが新築アパートをつくり上げるということは、自分で納得のいく土地を見つけ、高い家賃をもらえるような部屋を工夫することで、納得のいくキャッシュフロー/利回りで不動産投資を始めることができるのです。

新築アパートが投資額の3%以上のキャッシュフローを残せるのは、「長期間かつ低金利の融資を受けられること+低いコストでのアパート運営」を行うことができるからです。

では、キャッシュフローの計算を実際にしてみたいと思います。

物件価格が1億円で、表面利回りが9%のアパートを想定します。

9%の利回りの物件をつくり上げるために、例えば都内で安い土地を見つけることは難しいですが、東京に近い神奈川県・埼玉県・千葉県などであれば、十分可能です。

私が購入した土地は、神奈川県の川崎市と横浜市で、神奈川県では人口1、2位の都市です。

キャッシュフロー(CF)の計算例(1)

・物件価格:1億円
・土地:5,000万円
・建物:5,000万円(1部屋の建築費500万円の10部屋で計算)
・年間の家賃収入: 900万円 (1部屋75,000円×10部屋×12か月で計算)
・利回り:9%(家賃収入900万円÷1億円×100)
・金利:1.5%
・返済期間:30年
・年間返済額:約415万円(元金:約266万円、利息:149万円)
・経費率:20%(管理費用:3%、税金:4%、修繕・募集費用:3%、空室率:5%、家賃下落:5%)

<キャッシュフロー(CF)の計算>

・CF:305万円=(収入900万円)-(返済約415万円+経費180万円)
・CF率:3.05%(CF 305万円÷物件価格1億円×100)

上記の計算例を見てください。1億円の物件価格に対して、金融機関からの借入はフルローン(物件価格すべての金額を借り入れるローンのこと。)で、金利は1.5%、返済期間30年とします。

経費については、ざっくりと率で計算することとし、20%で見ておきます。

経費の内訳は、管理費用3%、税金4%、修繕・募集費用3%、空室率5%、家賃下落率5%としています。

この経費率20%というのは、1棟目の融資を受ける際に金融機関の担当者が収支計算で実際に使っていた数字のため、計算に用いるのに妥当だと思います。

とはいえ新築なので、これらの経費のうち修繕費用は3%もかからないのが現実であり、空室率も新築で5%も発生するようでは入居付けの活動ができていない証拠で、実際はもっと経費率は低くなるはずです。

このシミュレーションでは、利回り9%、キャッシュフロー3.05%の物件となっています。

投資利回りを「自分で決める」ことができる

・中古物件の利回りの考え方

通常、中古の投資用不動産を購入する時は、次のように、その不動産が生み出す家賃収入で投資用不動産の価格を割ることにより、物件の利回り(表面利回り)を計算して、買うかどうかを検討することになります。

家賃収入は上げられないのが普通なので、不動産を買う側が利回りを上げるためには、利回りを計算する式の分母にあたる売買価格の値下げ交渉を行うしかありません。つまり、次のようになります。

「現在の家賃収入→売買価格の交渉→利回りが決定」

しかし、その中古の不動産が魅力的であればあるほど、同じように投資用不動産を探している人たちとの競争となってしまうので、売買価格の値下げ交渉が難しくなります。複数の買主から売買希望があれば、売主は強気の交渉ができるからです。

・新築アパートの利回りの考え方

一方、自分で建てる新築アパートの場合は、建築前に想定する利回りを計算することができます。

なぜかといいますと、希望とするエリアの家賃収入の状況を事前に調べることができ、土地の購入費用と建物の建築費用について事前に計算することができるからです。

自分が希望する利回りを得るためには、いくらの家賃相場のエリアで、土地の購入費用をこれぐらいに抑えなければいけないということが計算できるのです。

「希望する利回りを決定→家賃が高く、土地が安いエリアを調査→希望の利回りに合うかを検証」

このように、中古不動産が結果的に利回りが決まるのに対して、新築アパートでは初めに利回りを決め、その希望に合う土地を見つけ、アパートを建てることになるため、考え方がまったく異なります。

上記のキャッシュフロー計算例では、都内に近いエリアを想定し、9%の利回りでの例を示しましたが、もっと高い利回りを求めたい時は、より土地の値段の安いエリアで探すことで、9%以上の利回りの新築アパートをつくることもできます。

純資産の増加によって「資産性が高く」なる

新築アパートは、融資の際に低い金利で借り入れをすることができます。そのため、月々の返済のうちに占める元金の割合が多いので、純資産が増えやすいのです。簡単にいうと、融資の元金分をどんどん返していけば、その分だけ自分自身の資産(アパート資産)として残るということです。

金利の低さによる純資産の蓄積(元金返済)と、キャッシュフローの獲得により早期借入額の回収が行え、10年間で建物分の借入額を回収することができるのです。

先ほどキャッシュフロー計算の例で使用したものと同じ不動産で、資産性を計算してみます。

キャッシュフロー(CF)の計算例(2)

・物件価格:1億円
・土地:5,000万円
・建物:5,000万円(1部屋の建築費500万円の10部屋で計算)
・年間の家賃収入: 900万円 (1部屋75,000円×10部屋×12か月で計算)
・利回り:9%(家賃収入900万円÷1億円×100)
・金利:1.5%
・返済期間:30年
・年間返済額:約415万円(元金:約266万円、利息:149万円)
・経費率:20%(管理費用:3%、税金:4%、修繕・募集費用:3%、空室率:5%、家賃下落:5%)

<キャッシュフロー(CF)の計算>

・CF:305万円=(収入900万円)-(返済約415万円+経費180万円)
・CF 率:3.05%(CF 305万円÷物件価格1億円×100)

5,000万円の土地に5,000万円の建物を建てた1億円の新築アパートの場合、家賃収入から経費を引いたキャッシュフロー分305万円に年間の返済額のうちの元金返済分266万を足すと、年間571万円の純資産が増えることになります。

単純に、この金額が10年間貯まると5,710万円となり、建物分の5,000万円以上を回収したと考えられます。

そうなりますと、残った借入額は値下がりがほとんどない土地分の残債として考えられます。

残債は返済のつど減少していきますが、土地資産は価格が変わらないため、土地評価分と建物の残存価値が資産となり、資産超過の状態となります。

資産超過の状態でアパート経営をすることができれば、金融機関からも評価され、引き続き次の投資に向けた融資を受けることができます。

ただし、この考え方で注意してほしい点がいくつかあります。

1つ目は、高金利で融資を受けてしまうと、返済金額のうちの元金返済分が少なくなるため、同様の想定にはならない場合があります。新築のアパートだからこそ、金融機関は賃貸経営経験の少ないサラリーマンにも低金利で融資をしてくれるので、そのメリットを最大限に活かすべきです。

2つ目は、総費用のうち建物比率が高くなってしまうと、同様の想定にならない場合があることです。木造アパートの建築費用は、どこでもそれほど変わらず、だいたい1部屋あたり400万~550万円を想定していますが、安い土地に建物を建てる場合、借入金に占める建物比率が多くなるため、10年での回収ができないケースもありえます。

返済比率50%にすると「リスクを軽減」できる

新築アパートでは、フルローンを借りても返済比率(金融機関への返済額の家賃収入における割合)を50%にすることができます。要するに、家賃収入の半分が返済額になるということです。金利1%台で30年の長期融資で借り入れることにより、月々の返済額を抑えることができるからです。

先ほどの計算例(2)の場合、年間の家賃収入900万円に対して、金融機関への返済は年に415万円であり、返済比率は約46%になります。

私は返済比率を大事な目安にしています。

なぜならば、返済比率が低いということは、その割合まで家賃が減ったり、空室ができて月々の家賃収入が減っても、金融機関への返済が可能であると考えられるからです。不動産投資は、金融機関への返済さえできていれば、負けない投資なのです。

私自身が不動産投資を始める時、家族には最悪でもこの家賃であれば入居者がいるはずだから金融機関への返済ができるということをわかってもらうと同時に、この返済比率をもって、最低でも何部屋が埋まっていれば金融機関への返済ができると自分自身で納得することができ、購入を決心することができました。

仲介手数料が少なく「初期費用をセーブ」できる

1億円の中古物件を1棟購入する場合、不動産業者に支払う仲介手数料は、「(1億円×3%+6万円)×消費税」となり、330万4,800円となります。

一方、同じ1億円の物件でも、土地が5,000万円で建物が5,000万円の物件を自分で建てる場合、土地売買の際の仲介のみに仲介手数料がかかることになり、168万4,800円になります。

建物については、建築会社と直接、建築請負契約を締結するため、仲介手数料がかかりません。

この差額は、162万円にもなります。この金額を賃貸経営のキャッシュフローで稼ごうとすると、1億円の物件で3%のキャッシュフロー率として、約半年分の金額になります(3%だと年間のキャッシュフローは300万円になるため)。

とくに、投資初期には突発的な出費や建物完成からの入居付けのための経費がかかってくるため、自己資金は可能な限り手元に残しておきたいところです。

この仲介手数料に関して、不動産業界でよくいわれる話があります。

収益不動産をメインで扱っている不動産仲介会社に土地だけの紹介を依頼しても、いつまで経っても紹介はないでしょう。

なぜなら、仲介会社の担当者は、土地を紹介して土地分のみの仲介手数料を売主と買主からもらうよりも、一度建築会社にアパート建築用土地として売買を仲介し、売主と建築会社の両方から仲介手数料をもらい、その後建築プランを入れたうえで、新築アパート(土地・建物)の売買を仲介すると、再度それぞれから仲介手数料が入り、1つの土地で二度仲介手数料を稼げる取引になるからです。

したがって、土地を探す際の不動産会社の選び方としては、投資家向けに投資用不動産を紹介している不動産会社よりも、一般の人向けに戸建て住宅や住宅用地を紹介している地元に根付いた不動産会社や、駅前に店を構えている大手不動産会社のほうがアパート用の土地を紹介してもらいやすいと思います。

丸川隆行(まるかわ・たかゆき)
IT企業に勤めるサラリーマン。26歳で株式投資を始めるもライブドアショックで3分の1に。次に始めたFXでは資産を2倍にしたがリーマンショックで退場。自己努力で資産を増やせる投資を探した結果、不動産投資にたどり着く。平均的な給料、資産背景のない中、自身で考えた投資法の実践により2014年に利回り10%超えの新築アパート、2017年には利回り9%弱のアパートを建築。築古アパートについても半分空室のアパートを購入し満室にした実績を持つ。現在は、サラリーマンの新築アパートによる不動産投資のサポートを行っている。