新築アパート投資では土地購入までのスピードが大事。融資が決まるのに時間が掛かっていると、いい物件は他人に取られてしまうからだ。しかし日ごろ金融機関と取引のないサラリーマンやOLが、自分の望む条件で融資を決めてくれる金融機関をスピーディーに見つけるのは難しい。良い金融機関に巡り合うための方法や、融資をうまく活用して投資するコツとは。

(本記事は、丸川隆行著『稼げる「新築アパート」実践投資法』=日本実業出版社、2018年5月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【『新築アパート実践投資法』シリーズ】
(1)サラリーマンが「新築アパート」投資で高い利回りを出す方法
(2)インターネット不要、エアコンは買わない――「新築アパート投資」を成功させる設備選び
(3)不動産投資のカギは「融資」 いい金融機関に巡り合うには

新築アパート実践投資法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

プランの金額は概算でOK

建築会社がほぼ決まり、どのくらいの建築費用になるかがわかったら、金融機関からの融資を受けるための活動を始めます。

この時点では、土地と建物プランの金額が固まっていなくても、だいたいの金額の内訳と、合計額ぐらいを伝えることができれば大丈夫です。

土地については、販売図面の情報と不動産仲介会社にヒアリングした結果を受けた状況を伝えます。多少の値幅があることを金融機関の担当者に知っておいてもらいます。

建築費用は、ボリュームチェックの結果を経て、建築会社が算出した見積りを出してもらいます。

この時、設備をあらかじめ追加する予定だったり、凝った内装にする予定の場合は、ある程度の余裕を持って建築会社に見積りを出してもらいましょう。

最低限の建築費用で出してもらった見積りで金融機関に融資の相談をした後に、受けたい融資金額が上振れ(増える)してしまうと、金融機関の担当者は、再度審査をやり直さなければならず、手間が増えてしまします。

最も高くてもこのくらい、というラインの金額を出しておいたほうが、後々金融機関に迷惑がかからず印象が悪くなりません。

その他費用は、この時点では未確定の内容が多いと思います。

外構はどのくらいの広さになるのか、砂利で埋めるのか、コンクリートで埋めるのか、タイルで埋めるのかでも値段が変わってきます。

水道加入金は、都市によって値段が違うため、1戸につき15万?20万円ぐらいで概算の根拠としたことを伝えればよいと思います。

地盤改良費は、実際の地盤を調べてみないといくらかかるかわからない費用です。

購入前に調べることは難しいため、購入候補の周辺の土地で建築する際に地盤改良をしたことがあったかを、不動産仲介会社の知り合いの建築会社等に確認してもらい、それをもとに概算で計算しておきます。

また、全国地盤サーチGAIAというサイトで、購入する土地の近隣の地盤調査の結果を確認することができます。購入する土地が軟弱な地盤かどうかを判断するうえでの参考になると思います。

初期費用は、それぞれの金額が確定していない段階では決まりませんので、土地価格、建築費用、その他費用の合計金額に対して8%前後で計算した金額を金融機関には伝えます。

中古不動産では初期費用が8~10%程度かかるといわれますが、新築の場合は建物分の仲介手数料がかからないので8%で計算します。

まずは、これらの購入に際して必要となる金額と想定する賃料を伝え、各金融機関の新築アパートに対する融資姿勢と、自分の属性でどのくらい借りることができるのかを確認しましょう。

その際、自ら金融機関を開拓することは大事なのですが、普段サラリーマンとして働いている場合、金融機関を開拓するのは難しいと思います。まして、いままで取引のないサラリーマンが突然融資依頼をしにくるのです。よほど融資に貪欲な金融機関でない限り、なぜうちに相談をしてきたのかと考えるのが普通です。

そのような印象を受けず、より高確率でよい金融機関に出会うためには、次のやり方を実践するのが近道です。

金融機関の見つけ方

新築アパート実践投資法
(画像=Pressmaster/Shutterstock.com)

・不動産会社からの紹介を受ける

最も効率的なのは、土地の仲介をしてもらう不動産会社に相談することです。

不動産会社は土地を売りたいため、融資に対して積極的に動いてくれるでしょう。

日頃付き合いのある、もしくは過去に融資を相談した金融機関の情報を持っていると思いますので、それらの金融機関に対して融資の打診をお願いしましょう。

アパートの融資に慣れた不動産会社の担当者でしたら、あなたの属性や物件の内容を踏まえて適切な金融機関を紹介してくれる可能性が高いです。

土地を販売している不動産会社は、土地や戸建、収益物件など様々な不動産を取り扱っており、お客さんや不動産によって様々な金融機関や信用金庫、信用組合などの金融機関を使い分けているケースがありますので、複数金融機関へまとめて確認してもらえる可能性があります。

しかし、金融機関の審査が芳しくないと、不動産会社から買えない人という印象を持たれる可能性もあります。

せっかく不動産会社と良好な関係をつくり上げ、土地情報をグリップしてもらっていたとしても、そうなってしまうと担当者は他の購入者を探し始めると思いますので、今後この金融機関に聞いてみる予定ですとか、購入のために自らも動いていることを共有するようにしましょう。

また、不動産会社によっては、金融機関との繋がりがあまりなかったり、ほぼ住宅ローンしか扱ってなく、収益物件を建てる際の融資依頼が不得意な場合もあります。

そのような時は、「金融機関を紹介していただきたいのですが、どちらの金融機関を紹介していただくことが可能ですか」とお尋ねし、相手が提示してくれた金融機関で過去にどのような属性の人がいくらぐらいの収益物件の融資を受けられたかの詳細をうかがい、自分の属性や物件の内容等の条件が似ているか確認しておきましょう。

融資の審査をさんざん待った挙句、結局、融資が下りなかったのでは、後から購入申し込みをして来たライバルに簡単に奪われてしまう可能性があるからです。

・建築会社からの紹介を受ける

2つ目の探し方は、建築をお願いする建築会社に金融機関を紹介してもらうことです。

建築会社も不動産会社と同様に、日々の取引で金融機関と懇意にしているケースが多く、戸建などをよく建てる建築会社が、その融資をいつも決まった金融機関に紹介しているケースがあります。

金融機関側は、建築会社からの紹介による融資を増やしており、建築会社もお客様の融資が通るおかげで注文を受けることができるといった、相互補完関係になっています。

あくまでも建築会社と金融機関との関係によりますが、これまでの紹介件数などによっては、金融機関側に金利などを優遇してもらえる可能性があったり、金融機関の規定の融資期間よりも長い返済期間を取ってくれる場合もあります。

私の2棟目の新築アパートの融資は、この建築会社からの紹介を受けたパターンでした。

金融機関としては、この時の建築会社から紹介を受けた場合は、全力でサポートする方針でした。

通常では、耐用年数と同じ22年間の融資で、金利は1.8%だということでしたが、他の金融機関の状況などを総合的に判断していただき、30年間、1.3%の金利で借りることができました。

推測ですが、金融機関としては建築会社の経営も支援しており、建築会社のビジネスが伸びることが金融機関にとってもよいことなのだと思います。

・不動産セミナーなどで担当者と出会う

不動産会社や建築会社から紹介された金融機関から融資を受けられない可能性もあります。

そうなってから他の金融機関を探しても、土地の購入はスピード勝負の面もありますので出遅れてしまいます。

掘り出し物の土地であればあるほどそのスピードが早いので、そのようなことにならないように、日頃から金融機関と知り合っておくことも重要です。

では、どのように知り合うかといいますと、「楽待」や「建美家」など、不動産投資のポータルサイトで、不動産会社が金融機関の担当者を招いて定期的に開催しているセミナーなどに参加することで知り合うことができます。

そうしたセミナーに来る金融機関は、不動産投資への融資に積極的だと思いますので、自分が検討している投資内容を伝えると、融資の可能性を尋ねることができます。

ただし、そのようなセミナーの多くは、金融機関の融資姿勢の概要を説明するにとどまります。

セミナー終了後、あるいはセミナー後の懇親会などで、自分の属性や資産状況における今後の融資の可能性について突っ込んで聞いてみることが重要です。

口頭でのやり取りで、資産状況などの情報もない中での話になりますので、金融機関としては確実なことはいえない場合が多いかと思いますが、大まかな可能性やこんなやり方があるといった、前向きな方法を考えてくれるかもしれません。

建築プランが決まっていない段階であっても、積極的に名刺交換をしておき、後日建築プランが固まった際には相談させていただきたい旨を伝えておいたほうがよいと思います。

融資を受ける際の考え方

・フルローンかオーバーローンか

こうした方法を実施することで、数多くの金融機関と知り合うことができます。知り合った後は、金融機関と融資に向けた相談を行っていきます。

金融機関から融資を受ける際、購入にかかる金額のうち、いくらまで融資を受けられるかという問題があります。

物件価格(土地の購入費用・建物の建築費用・その他付随費用)、売買に関する諸費用などのうち、物件価格のすべてを融資で購入する場合を「フルローン」といい、物件価格に諸費用(不動産取得税や保険料など)も含めて融資を受けることを「オーバーローン」といいます。

これから不動産投資を始める、ないしは2棟目の不動産を購入しようとしている場合は、自己資金が少ないか、温存しておきたいケースが多いと思います。

可能な限り自己資金は残し、入居者募集にかかる費用や突発的な費用に備えておきたいところです。

また、不動産投資において融資を家賃収入で返済していくと考えるのであれば、自己資金ではなく全面的に融資を活用して投資を行い、月々のキャッシュフローを得ていくことができたほうが投資効率がよくなります。そもそも自分のお金を使っていないので、投資という概念もなくなります。

しかし、オーバーローンを受けることによって月々の家賃収入と月々の返済額との差があまりにも少なくなって、返済比率(返済額÷家賃収入)が高くなってしまうと、空室が出た時に返済ができなくなるリスクが高まります。

私としては、投資初期は月々の家賃収入に対する返済金額は50%前後に抑えることを目指しながら物件を買い進めていき、全体の返済比率をコントロールしていくのがよいと考えます。

なぜかといいますと、家賃収入の半分(50%)を返済にあてるように投資を設計しておけば、家賃を半分にまで下げたとしても返済が行えますし、部屋の半分が空室でも返済ができると考えることができるからです(ほかにも経費や税金が発生するため、純粋に半分ではありません)。

自己資金ではなく、融資を利用するということは、レバレッジの力を最大限活用することですが、もし、オーバーローンで借りるのであれば、レバレッジはプラス面にもマイナス面にも大きく働くことを認識したうえで、活用してほしいと思います。

私は、金融機関から借りられて、なおかつ返済比率が50%程度になるのであれば、オーバーローンでも大丈夫だと考えています。

・プロパーローンを目指す

アパート経営を目指す方に対する金融機関の融資は、大きく2種類あります。

1つは、もともとは資産家向けであったものの、サラリーマンの資産形成のために使われている「アパートローン」です。アパートローンは、金利や融資期間があらかじめ決まっています。

そしてもう1つは、金融機関が貸し出し案件ごとに融資の条件を決める「プロパーローン」です。

アパートローンは、プロパーローンに比べて融資期間が長くとれる分、金利が高いケースが多くなります。

長いといっても、概ね35年ぐらいが最長の期間になります。新築アパートであれば、同じくらいの年数でプロパーローンの融資を受けられる可能性がありますので、わざわざ金利の高いアパートローンで融資を組む必要はないと思います。

収益物件を多く取り扱っている不動産会社によくありがちなケースは、サラリーマンが審査に通りやすいアパートローンを手っ取り早く紹介してくるケースです。

確かに、様々な金融機関と交渉する手間はなくなりますが、金利が高いと手元に残るキャッシュフローも少なくなってしまうため、そもそも新築アパートに取り組む意味がなくなってしまいます。

プロパーローンでの融資を目指して各金融機関と話してみるとわかりますが、金融機関によって新築アパートに対する融資の考え方が異なっており、金利や融資期間に違いがあります。

新築アパートをプロパーローンで借りる場合、融資期間を法定耐用年数(22年)で考えるところもあれば、新築アパートの住宅性能表示制度による性能評価があれば30年や35年として考えるところもあります。

金融機関によっては、他の金融機関と同等の基準にするといってくるところもあります。

金利については、1~2%ぐらいが多い印象ではありますが(2018年3月現在)、他の金融機関と比較している場合は、相手方の金利に合わせて柔軟に対応してくるケースが多いです。

金融機関を選ぶ観点としては、投資初期の段階ではキャッシュフローの増加が第一目的になるため、金利を1%下げるよりも融資期間を伸ばすほうがキャッシュフローに対する効果が高くなります。

融資を受ける時は、それぞれの金融機関の金利と融資期間によって計算される月々の返済金額を比較して、少ない金額になる金融機関を選びましょう。

丸川隆行(まるかわ たかゆき)
IT企業に勤めるサラリーマン。26歳で株式投資を始めるもライブドアショックで3分の1に。次に始めたFXでは資産を2倍にしたがリーマンショックで退場。自己努力で資産を増やせる投資を探した結果、不動産投資にたどり着く。平均的な給料、資産背景のない中、自身で考えた投資法の実践により2014年に利回り10%超えの新築アパート、2017年には利回り9%弱のアパートを建築。築古アパートについても半分空室のアパートを購入し満室にした実績を持つ。現在は、サラリーマンの新築アパートによる不動産投資のサポートを行っている。