新築アパートの利回りを高めるには、コストの掛けすぎず入居者が求める設備を用意することだ。今やインターネット接続は常識のように思えるが、著者の丸川氏は最初の物件こそネット環境を整えたものの、次の物件では導入しなかったという。新築アパート投資で成功している丸川氏は、どのようにしてコストを抑えながら入居者のニーズを満たしているのだろうか。

(本記事は、丸川隆行著『稼げる「新築アパート」実践投資法』=日本実業出版社、2018年5月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【『新築アパート実践投資法』シリーズ】
(1)サラリーマンが「新築アパート」投資で高い利回りを出す方法
(2)インターネット不要、エアコンは買わない――「新築アパート投資」を成功させる設備選び
(3)不動産投資のカギは「融資」 いい金融機関に巡り合うには

新築アパート実践投資法
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

新築アパートの間取りや設備を決める

新築アパート投資をするにあたり、土地探しと並行して、新築アパートの間取りや設備を決めていかなければなりません。これは、アパートの建築費用を詳細に確認するためです。

この調査をしていないと、建築士から出てきた建築プランに対して意見がいえません。建築士や建築会社のプランは、多くの場合が建てやすい、または設計しやすい間取りや設備になっています。そのため、自分で建てるといっても他の物件との差別化をはかりにくいケースが多いのです。

それでも新築時は埋まるかもしれませんが、2~3年経つと他の物件と代わり映えがしないため、賃料でのアピールしかできなくなります。そうなってしまったら、せっかく稼ぐための新築アパートを計画したのに、本末転倒になってしまいます。

とはいえ、部屋が広いほうがいい、オートロックはほしい、インターネット完備、収納はたくさん、といった入居者のニーズをすべて満たそうとすると採算が合わなくなります。

だからこそ、入居者が求める部屋にしながら、しっかりと収益が出るように意識しなければなりません。何を選び、何を省くのかを決めていくことが大切です。

次に、その判断をする情報を得るための調べ方を説明します。

順番としては、以下の順で行なっていきます。

●部屋の設備の調べ方

・入居者となってくれる方のイメージを固めます

・大手ポータルサイトの検索項目を参考に、想定する入居者がどのような設備をほしがるのかをイメージします

・人気設備ランキングを参考にアパートに取り付ける設備を絞ります

・「SUUMO賃貸経営サポート」等で、競合アパートの設備状況と部屋を探している人々がチェックしている検索項目を確認します

・賃貸仲介会社に、自分が取り付けようとしている設備と、実際にお店に来られる方のニーズにギャップがあるかどうかを確認します

・再度の見直し

賃貸サイトの検索項目を参考に設備を考える

新築アパート実践投資法
(画像=Butsaya/Shutterstock.com)

SUUMOやライフルホームズ、アットホームなどのサイトには、部屋を借りたい人が検索する際に、ほしい設備にチェックを入れて検索数を絞るための機能があります。

このチェック項目は、基本的に部屋を借りたい方のニーズが高い内容が設けられています。だから、この項目の中でどの設備を付けるかを考えていくことで、ニーズをうまく拾うことができます。

設備を付けるかどうかの判断基準を明確に決めることは難しいですが、想定する入居者がその設備を望むのかどうか、その設備を付けることで他の物件との差別化ができるのかどうか、導入費用が多くかかってしまわないかどうか。また、設備が壊れた時に修理費用が多額にかかってしまわないかどうか─などの要素を参考に判断をしていけばよいと思います。

例えば、2口コンロは、通常の1口コンロと比べて圧倒的に女性の支持率が高くなります。最近では自炊をする男性も増えていますので、若い男性の支持もあります。

それでいて、競合が付けているケースが少ないため、お勧めといえます。

エアコンについては、1台5万円程度で、部屋数が増えるとその金額のインパクトも大きくなります。

そこで活用したいのが、プロパンガス会社からエアコン設備を提供してもらう方法です。

プロパンガス会社は、ガスの提供以外にも各種設備の提供をしてくれる場合がありますので、無償で提供を受けることができる可能性があります。設備に関しては相談をしてみるとよいと思います。

当然、プロパンガス会社は、その分のコストを入居者が使用しているガス代から回収しています。

昨今、この仕組みを利用して入居者へ高い単価でガスの提供をしているケースもありますが、入居者が快適に暮らせることを踏まえた適正な単価でのガスの提供を行いつつ、プロパンガス会社に協力してもらえることがないかを聞くのがよいと思います。エアコンの提供であれば、協力してくれる会社はあるはずです。

人気設備のランキングを見る

(株)リクルート住まいカンパニーや全国賃貸新聞などが人気設備ランキングの調査を行っています。それぞれの会社が単身者・ファミリーにおける人気設備ランキングを出していますので、ランキング結果を参考にしてみましょう。

このランキングは参考になりますが、2つの注意が必要です。

1つ目は、この人気設備ランキングの結果を満たそうとすると、コストは当然割高になってしまいます。そのため、これらの設備が本当に必要か、周りの競合物件も付けているのかなどを賃貸仲介会社に聞いて検証する必要があります。

2つ目は、このランキングにないからといって、必要がないと考えないことです。

例えば、シューズボックスについてはランキングには出ていませんが、新築アパートであれば付いていることも多いですし、女性の入居者にとってはシューズボックスのあるなしが決め手になることがあるかもしれません。

「SUUMO賃貸経営サポート」で調べる

新築アパートを計画するエリアで求められる設備については、大家さん向けに(株)リクルート住まいカンパニーが情報提供している「SUUMO賃貸経営サポート」というサイトで調べることができます。同じ賃料帯・広さ・築年数・駅距離の中で、どのような設備が求められていて、どのようなアパートが建っているかがわかります。

これを見ますと、最低限付けなければならない設備、付けても差別化につながらない設備などがわかります。

例えば、周辺物件の設備装着率として浴室乾燥機が11位(装着率58%)に入っています。しかし、このサイトでは、物件検索時にほしい設備としてチェックしている方は、それほど多くないことがわかります(これは右側の「こだわり条件の人気度」を見るとわかります)。

浴室乾燥機は、導入に10万円ぐらいかかります。その分を家賃に転嫁できるでしょうか。設備なので10年ぐらいで壊れることも想定しなければなりません。

このように、求める人が少ない設備の場合は、そこに住む方が払える家賃が高額でない場合、例えばエアコンの前に室内洗濯物干しをつけることで浴室乾燥機を使うニーズに代替できないかなどの工夫を考える必要があります。

代替手段があれば、部屋を探している人が賃貸仲介会社とアパートの内見に来た際も、浴室乾燥機の代わりとしてエアコンの前の室内洗濯物干しをPRしてくれる可能性が高くなります。

私の場合、インターネット回線を初めの物件では導入しましたが、次の物件では導入しませんでした。理由は、最近の単身者はパソコンを持たず、スマートフォンで済ます人が多いと聞いたからです。

インターネット回線料金を管理料金に含んでいる場合、スマートフォンのみを利用している人からすると余計なお金を支払わなければならないと感じ、自然と対象外物件になってしまうからです。

時代とともに求められる設備は変わりますので、自分がターゲットとする入居者がどのような生活をするのかをイメージして設備を決めるとよいと思います。

その設備を導入しなければ、全室埋まらないほど必須なものなのか、導入することにより家賃を上げることができるものなのか、以上を考えながら設備の導入を決める必要があります。

賃貸仲介会社に聞く

間取りについて深く考えたことがありますでしょうか。なぜワンルームよりも1Kが人気なのでしょうか。具体的にイメージしてみてください。

ワンルームは、部屋にキッチンがあり、仕切りがありません。1Kは部屋とは別に仕切られたところにキッチンがあるものをいいます。

1人暮らしの社会人で20代の女性が生活する場合を考えてみます。洋服やバッグ、色々なものを持っていて、おそらく備え付けの収納だけでは収まらず、部屋に棚を置いたり、洋服はハンガーでカーテンレールに掛けていたりすると思います。

毎日外食やコンビニエンスストアでは食費もかかりますので、家で料理をする機会も多くなると思います。

その場合、キッチンが部屋にあるワンルームですと、調理の煙や匂いは換気扇を回していたとしても部屋に充満してしまいます。次の日、会社に着ていこうとしている服に匂いがついては困ってしまいます。

もし、1Kであれば、キッチンと部屋が分かれていますので、洋服に匂いがつくのを防げます。

このように、実際に入居する方の生活をイメージしながら、どのような間取り・設備にするとよいかを考えてほしいと思います。

しかし、どのような方が入居者として住んでもらえるかを土地を見ただけで想像することは難しいと思います。そのため、自分でゼロから考えるのではなく、調べる方法があります。

それは、その土地の最寄りの駅近くにある賃貸仲介会社や、最寄り駅がターミナル駅でない場合は、最寄りの駅に近いターミナル駅にある賃貸仲介会社に聞いてみるのです。

次の質問は、私が間取りや部屋の設備を考える時に、そうした会社に尋ねる質問です。

間取りその他について質問したい内容

・××駅から10分の○○(地名)で、アパートを建てようとしています
・この駅近辺での賃貸付けは行っていますか(営業範囲を知る)
・駅から徒歩10分で、間取りは1Kの予定です
・設備としてはバストイレ別・独立洗面化粧台・室内洗濯機置き場があり、2口コンロを売りとして装備しようとしています(こちらが考える売りを伝えて、ギャップがあるかどうかを尋ねます)
・このあたりですと、どのような方が入居候補となりますか(入居者候補を知る)
・周辺の家賃や初期費用はどのような条件ですか(周辺相場を知る)
・いくらぐらいの家賃なら、絶対決められる自信がありますか(決まる家賃がわかる)
・傾向として、設備が充実しているほうがいいですか。家賃が安いほうがいいですか(物件の方向性を確認する)
・望まれる設備はありますか。無料インターネットを導入しようか迷っています(入居者候補がどのような設備を望んでいるのかを知る)

これらの質問を最寄駅・近くのターミナル駅の賃貸仲介会社3社ぐらいに確認をして、意見を集めます。

1社だけでは、たまたま電話に出た担当者の思い込みや直近のお客さんの情報を伝えてくる場合があるからです。

複数の仲介会社に尋ねることで、3社がいうなら間違いないでしょう、1社はこのようにいっていたが2社は逆のことを話していたから2社の話すことのほうが信ぴょう性がありそうだ、といった判断をすることができます。

以上のような活動を経て、新築アパートの間取りや設備を決め、建築費用を細かく決めていきます。

丸川隆行(まるかわ たかゆき)
IT企業に勤めるサラリーマン。26歳で株式投資を始めるもライブドアショックで3分の1に。次に始めたFXでは資産を2倍にしたがリーマンショックで退場。自己努力で資産を増やせる投資を探した結果、不動産投資にたどり着く。平均的な給料、資産背景のない中、自身で考えた投資法の実践により2014年に利回り10%超えの新築アパート、2017年には利回り9%弱のアパートを建築。築古アパートについても半分空室のアパートを購入し満室にした実績を持つ。現在は、サラリーマンの新築アパートによる不動産投資のサポートを行っている。