民間調査機関の薪付宝は「2018中国A股上市公司高管薪酬TOP100榜単」を発表した。これは国内株式市場に上場している3598社、6799万人の給与データから、高額給与所得者トップ100を抽出し、彼・彼女たちの背景を調査したレポートである。中国のビジネス界で出世し、高給を享受しているのは、どのような人たちなのだろうか(1元=17.07日本円)。

年棒は1000~2000万円

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(画像=PIXTA)

国内株式市場とは上海、深センのA株市場のことを指す。現代中国をリードするIT大手、BATJ(バイドゥ/百度、アリババ、テンセント、ジンドン/京東)は、ニューヨークまたは香港市場に上場していて、調査対象ではない。また、BATJに次ぐ存在として今をときめく、TMD(今日頭条、美団点評、滴滴出行)は、ユニコーン企業で未上場でやはり対象外である。

つまり最先端の花形企業を欠いている。しかし“普通”の従来型大企業が多い分、よりビジネス社会の実態をあぶり出しているとも言えるだろう。

調査は対象企業から、それぞれトップ3の高給取りをピックアップして分析した。ただし非現金給与は考慮されていない。その結果、トップ3の平均年棒は56~120万元(956~2048万日本円)であった。昨年の45~100万元に比べ20%ほどアップしている。

全体トップ3は、方大特鋼(鉄鋼)董事・鐘崇武4036万元、泛海控股(不動産・金融)董事・張博1771万元、浙江龍盛(染料化工)董事・徐亜林1506万元だった。

業種、地域、学歴、女性は?

2年連続でトップ100入りしたのは54人である。約半分は入れ替わっている。業績給が貫かれているのだ。

業種は製造業37%、不動産業33%、金融業19%、これら3業種で89%であった。情報技術4%、ビジネスサービスは3%に過ぎず、従来型の構成である。

地域別の分布は広東省37%、上海16%、北京12%の順で、やはり一線級都市(北京、上海、深セン、広州)に集中している。昨年比では、広東省と上海は小幅上昇、北京は小幅下落だった。4位以下は、江蘇省と山西省が5%、浙江省4%、その他はみな3%以下である。

学歴は次のようになっている。修士課程卒53%、本科(4年制)卒28%、博士課程卒13%、高卒以下4%、専科(3年制)2%である。修士が多く、学歴は非常に高い。トップ10に限れば、本科卒4人、修士課程卒6人である。

また1960年代生まれでは、修士課程卒は35%くらいだが、70年代生まれになると80%以上の人が修士課程以上を出ている。なおトップ100は40~67歳の範囲内に属し、平均年齢は52歳である。

女性はトップ10に2人、トップ100では12人がランクインしている。女性トップは全体6位、中国平安集団(保険・総合金融)の陳心穎・副主席執行官で、年棒は1303万元だった。

国有企業からは、4名の幹部がトップ100入りした。北京2名、四川省1名、広東省1名だった。財務諸表上の報酬は、間違いなく民営企業の方が高い。しかし国有企業幹部は、さまざまな既得権益を享受している。これもまた周知の事実である。

受験戦争は永遠?

中国の上場企業における出世への道は、日本同様に厳しいようだ。ただし日本のように、会社に対して前のめりになりすぎる感性はない。また1970年代生まれまでの人は、強靭な精神力を備え、人に強く、交渉やゴマすりなどを苦にしなかった。

80年代以降の生まれた人たちからは、だんだん、そういった暑苦しさは抜けつつある。人脈ではなく、勉強して上昇していこうという傾向は鮮明だ。上場企業の幹部たちが、大学院出ばかりとなったのは、その先駆けだろう。

しかし中国のビジネス界は、想像以上の学歴社会であった。6月は受験の季節だ。大学受験は一発勝負である。その熱気は、収まることはないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)