不動産投資は、会社の経営に近い感覚が求められます。会社員にとって、はじめて「ROE」「利回り」などさまざまな数字・用語を念頭に置いた意思決定を迫られることになります。こうした数字の意味を知っていないと、不動産投資で成功できる確率は低いでしょう。

今回は、その中でも重要度の高い用語である「キャッシュフロー」について考えます。なぜキャッシュフローが重要なのか、キャッシュフローがあるとどんなメリットがあるのか理解しましょう。

不動産投資やるなら重視したいキャッシュフロー

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(写真=yanatul/Shutterstock.com)

キャッシュフローとは、文字通り「現金の流れ」を指す言葉です。入ってくるお金から出ていくお金を差し引いて、手元に残るお金をキャッシュフローと呼ぶことが一般的です。不動産投資で言えば、家賃収入から経費とローン返済額を差し引いて残った金額がキャッシュフローとなります。ただし、これはあくまで税引き前キャッシュフローであり、税金をさらに差し引いて税引き後キャッシュフローを計算するのがより正確でしょう。

不動産投資を行うと、「ストック型」と「フロー型」の両面でメリットがあるとよく言われます。ストックとは一定時点での蓄積を指していますが、不動産投資の場合は不動産に他なりません。最初は、ローンの返済を発生させる負債であった不動産が、返済が進むにつれて少しずつ資産となっていくわけです。

フローとは一定期間における流れを指していますが、不動産投資の場合はキャッシュフローに当たります。不動産を購入してきちんと運用していくことで、安定的な家賃収入を生んでくれるのです。

つまり、キャッシュフローは不動産投資におけるメリットの片面であるということになります。

減価償却とキャッシュフローの関係

決算上の数字と、実際のキャッシュフローは異なることがあります。それは、減価償却によって現金の出費がないのに毎年帳簿に記載される経費が存在するためです。逆に言えば、減価償却をうまく活用することでキャッシュフローを手厚くできるということでもあります。

減価償却とは、時間の経過とともに劣化する資産の取得費用を按分する処理方法です。たとえば、300万円の資産を20年で減価償却する場合、初年度に300万円ではなく20年で15万円ずつ償却します。

このとき、資産を購入した次の年以降は「実際には出費がないのに会計上は経費が出ている」という点がポイントです。少しずつ経費を計上することで、長く節税効果を発揮できるというわけです。つまり、手元に残るキャッシュフローが多くなります。減価償却は、一般的にキャッシュフローにとってはプラスの効果を発揮します。

ただし、「デッドクロス」と呼ばれる問題の原因にもなるため注意が必要です。これは、減価償却期間の終了後に、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る事態を指しています。ローンの返済でキャッシュが出て行くのに加えて、税金負担も重くなってしまいます。キャッシュフローが急激に悪化し、不動産運営が破綻に追い込まれることもあります。

デッドクロスは、減価償却期間が短い(=築年数が古く耐用年数が短い)物件やローンの借入比率が高い物件で早く訪れます。デッドクロスの前に繰り上げ返済する、あるいは次の物件を購入して新たな減価償却費を発生させるなどの対策が必要でしょう。

キャッシュフローを出すための2つの方法

キャッシュフローを出すためには、一回当たりのローン返済額を減らす手が考えられます。その手段として、金利を下げるか融資期間を長く取るかという2つの方法があることは知っておくとよいでしょう。金利の低い金融機関を見つけるのは、特に不動産投資を始めたばかりの段階では難しいかもしれません。しかし、運営が安定してくると金融機関によっては金利を下げてくれる可能性もあります。途中で借り換えを行うことも念頭に、運営の安定化を進めるとよいでしょう。

融資期間を長く取ると、毎年の返済額が少なくなるためキャッシュフローを残しやすくなります。確かに、利息の総額が多くなるため、返済総額も膨らみます。また、完済までの期間が長くなります。このため、普通の借金であれば「一回当たりの返済額を減らす」というのはあまりおすすめされません。しかし、融資によってキャッシュを生む不動産投資であれば、年当たりの返済額を減らしてキャッシュを確保し、デッドクロスに備えるという戦略もあります。

融資期間を長く取るためには、耐用年数の長いRC造(法定耐用年数47年)や重量鉄骨造(法定耐用年数34年)などがよいでしょう。金融機関は、デッドクロスによるキャッシュフローの悪化を恐れて残存耐用年数の範囲内でしか融資期間を認めないケースが多いためです。(提供:Incomepress

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