資産を増やす方法はたくさんある。IPO、M&A、株、FX、仮想通貨……35才で満室想定家賃約7億円を達成、8年間で60億円以上を投資してきたという筆者は、不動産投資を推奨、さらに著者は「『資産をどれだけ増やせるか』は、『借金をどれだけ増やせるか』とイコール」と強調する。それほどまでに著者が説く融資・借金のメリットとは。
(本記事は、木下たかゆき氏の著書『不動産投資「勝者のセオリー」』=ぱる出版、2018年6月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【『不動産投資「勝者のセオリー」』シリーズ】
(1)不動産投資で資金を一気に増やす方法 すればするほど得になる?
(2)不動産投資で勝つには「大阪」で融資を受けろ
(3)不動産投資 ゼロから始める「テッパンの稼ぎ方」とは?
資産を一気に拡大する方法
今の時代に、現金を1千万円から1億円へ、1億円から10億円へ、そして100億円へと跳ね上げたいとしたら、選択肢は以下の4つしかありません。
(1)株式公開(IPO)
(2)事業の売却(M&A)
(3)融資を活用した不動産投資
(4)株、FX、仮想通貨
(1)は、未上場の企業が証券取引所に株式を上場させて、持ち株を市場で売却する手法です。これが一番手っ取り早く、多額の現金を得られる方法かもしれません。
(2)は、M&Aによること業売却です(M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)で、企業の合併と買収の総称のことです)。
そして、(3)の融資を活用した不動産投資。
これに売却によるキャピタルゲインを組み合わせることで、僕は資産を増やすことを実行中です。
いくら不動産投資といえども、億単位のキャッシュを手に入れるのは容易ではないのでは?と考える方も多いでしょう。
確かに、簡単ではありません。そこでポイントになるのが、融資の活用、そして適度なタイミングでの売却です。
融資を活用することは、手持ちの現金を減らさないためです。
いくら高利回りの物件でも、手持ちの現金で購入していたのでは、アラブの大富豪でもない限り、一生かかっても億単位のキャッシュを手にすることはできません。
老後の年金代わりに毎月10万円の家賃が欲しいなら、貯金を貯めて現金でボロ戸建を2軒買えば目的は達成されますが、僕が目指すのはそこではありません。
ですから、僕は基本的にフルローンやオーバーローンの融資を引き、「他人のお金を使って、お金を生むシステム(不動産)を買う」ことで、スピーディな規模の拡大を目指しています。
また、短期間で物件を買い進めるには、適度なタイミングで物件の売却を絡めることが不可欠になってきます。
誤解してほしくないのは、売却益を得るために物件を買うのではないということです。
それは不動産屋の仕事で、僕ら投資家の仕事ではありません。
あくまでも、インカムゲインを得るための不動産をスピーディに購入するために、時には売却も行うというスタンスですので、優先順位を間違えないようにしてください。
ちなみに僕自身も、2016年の10月に一冊目の本を出してから2017年月までの一年間で、5棟の物件を売却し、6.5億円の売却益を得ました。
これは、明らかに相場が上がりすぎている現在の市場で、リーシングが厳しかったり修繕費が掛かったり、築古の物件だったりを手放して得たものです。
このようにして、売り時の物件を売却して得たキャピタルゲインを見せ金にして融資を引き、また儲かる物件を買えば、さらに賃料収入は増えていきます。
いわば、売却益は不動産投資でいうところのカンフル剤といったところです。
不動産の売却に、そんなに大きく儲かるイメージはないという人もいるかもしれません。
しかし、インカムゲインで足元の収入を固める一方で、安く買い、高く売るという売却を繰り返して、億万長者になった人は、過去に大勢います。
先ほど、2016年から2017年にかけて、約6.5億円の売却益を得たと言いましたが、僕はこの程度の利益では満足していません。
なぜなら、相場が大幅に安くなったときに物件を仕入れて、高くなってから売却した人たちの儲けは、この程度では済まないからです。
例えば2009年のリーマンショックのとき、大阪の北区や中央区にある築5年以内のRC造一棟物が、一体どのくらいで売られていたと思いますか?
なんと、表面利回り13~14%で流通していたのです(銀行の融資が閉まっていて、融資が付かない状況なのでこの価格になります。この時期に買える一部の人には大きなチャンスが巡ってくるのです)。
その頃はファンドバブルであり、不動産を「信託受益権」という証券化した状態で保有し、ファンドが運営するという形態が流行っていました。
ファンドは出口(売却)の期間が決まっています。
売却しなければいけないタイミングで銀行の融資が閉まったために買い手がつかず、ロスカットしてでも手放さなければいけない、という状況になったため、格安で売りに出したのです。
この波にうまく乗って物件を安く仕入れ、現在のような相場の高いときに売却した人は、相当額の利益を得ています。
ここ2~3年で買った物件は、高く売れても元値の2倍程度ですが、相場の波を利用すれば、2.5~3倍以上で売れる可能性も十分にあります。
しかも、物件を5年以上運用していれば、返済によって元金も2割くらい減っているので、利幅はもっと上がるのです。大きなロットでこの売買を成功させれば、一気に巨額の利益を得ることが可能です。
この利益を元に、また不動産を仕入れることで、資産を爆発的に増やすことができます。
繰り返しになりますが、不動産投資を行う上で、収入の基本はインカムゲインです。僕自身、売却をすることもありますが、稼げる物件はしっかりホールドしています。
しかし、それだけに甘んじる必要もありません。安く買い、高く売ることで得られるキャピタルゲインは、短期間でメガ大家になるための大きな足掛かりになります。
(4)の株やFXも、不動産投資と同じく、レバレッジが効く投資です。
デイトレーディングなど、どんどん売買を繰り返して増やしていけるので、うまくやれば元金を無限に増やすことができます。最近では、仮想通貨もここに入るでしょう。
資産を何百億も築いている方は、このパターンが多いといえます。
ただ、これで成功できるのは一部の天才系に限られます。普通の人には到底、真似のできない世界です。
僕も過去にチャレンジしましたが、1千万の損を出してしまいました。もう二度と、手を出さないと思います。
紹介した4つのパターン以外に、現金を飛躍的に増やす手法があるとすれば、違法なものだと思います。もちろん、そのようなやり方はおすすめできません。
不動産投資家の方は、ぜひとも(3)の不動産投資という手段を使って、億万長者という道を目指しましょう。
僕も今から、次の「バーゲンセール」を楽しみにしています。
多額の「借金」を恐れてはいけない
資産規模を拡大させるためには、多額の借金を避けて通れません。
僕は「100億まで借り入れをする」ことを一つの目標にしているのですが、時々、「そんなに借金をして怖くないのですか?」という質問をされることがあります。
結論を言うと、怖くありません。それどころか、僕は、「資産をどれだけ増やせるか」は、「借金をどれだけ増やせるか」とイコールだと思っているので、借金に好ましいイメージさえ持っています。
僕も、不動産投資についてきちんと学ぶ前は、借金に対する漠然とした抵抗を持っていました。しかし、今となってはもう「何とも思っていない」というのが正直なところです。「100億でも1千億でも借りたれ!」という感じです。
実際のところ、1億円も1千億円も、心理的にはほとんど差はありません。
怖くない理由の一つとして、日本の法律では、「借りれば借りるほど得」なシステムになっているということがあります。
最悪の場合でも、自己破産すれば借金は全部チャラになります。
つまり、自己破産したときのペナルティが甘過ぎるのです。
破産から5~10年は借り入れができない、ローンが組めないなど、その程度のペナルティはありますが、逆に言えば、その程度で済んでしまうのです。
最悪のケースでそれですから、お金をどんどん借りて、資本回転率を上げていく方が絶対にいいと思います。
かといって、危ない橋を渡れというつもりもありません。
僕の周りには不動産投資をやっている人が多くいますが、借金で首が回らなくなったという話は聞いたことがありません。
皆、余裕の状態で、どんどんお金持ちになっています。
不動産投資はまともにやってさえいれば、そうそう破綻することはないのです。
「100億でも1千億でも借りたれ!」と言えるのは、そのためなのです。
融資する銀行サイドとしても、借り入れのロットが大きくなってくる程、破産されると回収出来ない可能性があるので、簡単に倒産させられなくなります。
実際、借り入れのロットが大きくなるほど交渉力も増しますし、万が一資金繰りに苦しくなっても、それをネタに金利を下げてもらったり、返済をストップしてもらったりという交渉もできると思います。
つまり、「借金は怖くない。むしろ、すればするほど得」ということです。
世間には、初期投資をガツンと投入して、先の売上が読めない事業を始める起業家たちが毎日、誕生しています。
それに比べて、不動産賃貸業は家賃の性質上、半年後~1年後の売上がほぼ確実に読めますし、いきなり今月の売上がゼロや半分になることは、まず有り得ません。
退去も1ヵ月以上前に教えてもらえるので、退去予告が出たらそれよりも先に、入居づけをする動きをすれば、空室だらけになることも防げます。
いくら規模拡大に借金を重ねる必要があろうとも、そうやって安定的に収益を上げられる不動産投資の方が、他のビジネスよりもよっぽど手堅いと、僕は思います。
キャッシュフローを最大化するには?
不動産投資を成功させる方法はシンプルです。
(1)物件に融資をつけて、圧倒的に安く買い
(2)高利回りで賃貸して、キャッシュフロー(以下CF)を貯め
(3)買ったときより高く売却して、キャピタルゲインを得て
(4)現金保有高(キャッシュポジション)を上げる
このサイクルを繰り返して、資産規模をどんどん拡大させるだけです。
CFとは何かを、すぐに答えられる方は、意外と多くありません。わかっているようで、正確に答えるのは意外に難しいものです。
それでは改めてCFとは何か、そしてCFを最大化するには何をすべきかを、一緒に考えていきましょう。
まず、CFを定義する最もシンプルな式は、次のとおりです。
CF=売上-経費
つまり、売上を最大化し、経費を最小化すればCFを最大化できる、ということになります。至極シンプルで当たり前のことですが、この考え方が重要です。
そして、この「売上経費」を実際の項目に置き換えると、次のようになります。
CF=家賃収入(調達金利+元金+各種税金+管理コスト)(+減価償却費)
このように表すと、CFを大きくするために、具体的に「何を増やし」「何を減らせば」いいのかが、よりわかりやすくなったはずです。
大家がコントロールすべき項目に絞った上で、CFをもっと大きくしようとするのであれば、
・家賃収入を上げる
・調達金利を下げる
・管理コストを下げる
ということが、CF最大化の要素になります。
税金は、基本的にコントロールできません。
厳密には、固都税(固定資産税+都市計画税)などの各種税金を圧縮する方法もあるのですが、効率を考えるなら、それよりもCFを最大化することにフォーカスすべきです。
保有リスクに注意!
CFを増やすためには、前述したいくつかの他に、次の二点が大切な要素になります。
・元金返済額を少なくする(返済期間を延ばす)
・減価償却費を(最初に)多く取る
これらのメリットとデメリットを、自分が立つステージに合わせてしっかり考えなければなりません。
特に「元金返済額を少なくする」場合ですが、これには注意が必要です。
返済期間を延ばして返済比率を下げた方が、多少金利が高くてもCFが増えるケースが多くなります。
しかし、返済期間を延ばして得られるCFは、あくまで「将来の利益を先取り」しているだけであって、結局のところ、様々なリスクを先送りしているだけだからです。
物件を長期保有することで、将来的にどんなリスクが生まれるのかというと、次のようなものがあります。
・建物の減価
・家賃下落
・空室率の上昇
・大規模も含めた修繕リスクの増大
・残債の減るスピードが遅い(=相場が暴落すると売却しにくくなる)
・CFが残ることで判断基準が鈍る(特に売却タイミングにおいて)
・デッドクロスがくる(税金がCFを上回り、黒字倒産する)
ここを押さえた上で、返済期間を延ばすかどうかを慎重に検討すべきです。
金融機関のスキームによっては、築古の物件でも元利均等返済で金利4.5%、返済期間30年などで買えるケースがあります。
このように返済期間を長く取ることで、無理やりCFを出しているような物件を買った場合、最初の5年間ほどは金利の返済ばかりで、ほとんど元金が減りません。
そうしているうちに、先記のリスク要因によって徐々にCFが出なくなっていきます。そのうち修繕費もかさんできて、ニッチもサッチもいかなくなり破綻寸前に......。
焦って物件を二束三文で売却するも、ほとんど減っていない元金を売却額でカバーできるはずもなく、無担保の借金だけが残るという、最悪のシナリオになることも十分にありえます。
不動産ブームの昨今、CFのみにフォーカスし過ぎる人が多いのですが、きちんとリスクを考えた上で判断することが大切なのです。
返済していない元金部分や、減価償却費を先に多く取ってしまっている分は、物件を売却すると、残債の一括返済や譲渡所得の課税でそっくり跳ね返ってきます。
結局のところ、利益を先に取るか、後に取るかの違いということです。
当然、返済期間が短いほど利息の負担も減るわけで、ある程度の資産規模になったらCFだけにこだわらず、保有リスクにも十分注意すべきです。
木下たかゆき(きのした・たかゆき)
不動産投資家。1982年生まれ。関西学院大学商学部卒業後、求人広告の営業などを経て2010年12月に不動産投資をスタート。35才で満室想定家賃約7億円を達成する。トータル売却益も10億円以上。8年間の投資総額は60億円以上。2018年6月時点で住居系マンション、アパートを中心に、オフィスビル、テナントビル、ソシアルビル(スナックビル)など計70棟1200室弱の不動産を所有する。