初心者が高利回りの優良物件を手に入れるのは簡単ではない。だが著者は、初心者でも手に入れることができて利回りを高められる“鉄板の物件”があるという。それはどんな物件で、一体どんな手法なのだろうか。
(本記事は、木下たかゆき氏の著書『不動産投資「勝者のセオリー」』=ぱる出版、2018年6月18日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【『不動産投資「勝者のセオリー」』シリーズ】
(1)不動産投資で資金を一気に増やす方法 すればするほど得になる?
(2)不動産投資で勝つには「大阪」で融資を受けろ
(3)不動産投資 ゼロから始める「テッパンの稼ぎ方」とは?
「ゼロ」から再スタートするなら
僕がもし「ゼロ」から再スタートを切るのであれば、どういった戦略で買い進めていくか、というテーマについて解説します。
物件購入で一番大事なポイントは、「相場よりも安く買う」ことです。
大して儲からない物件を買うくらいなら、何も買わない方がマシです。
特に、現在は不動産の相場が高騰していますから、業者の言いなりになって安易に物件を選んでしまうと、高値掴みをして後悔する可能性が高くなります。
相場よりも安い物件を手に入れるためには、やはり不動産投資家としての「実力」をつける必要があります。
そういう意味で、現金や銀行取引数が少ない初心者が、高利回りの優良物件を手に入れることは簡単ではありません。
(1)ボロ戸建を狙え!
もし、僕がサラリーマン時代に戻り、「ゼロ」から再スタートを切るならば、「ボロ戸建など、ロットが小さい物件を買って再生し、売却していく」という手法でいくと思います。
融資が付かないような築古の、ボロボロの戸建を買い叩いて激安で再生し、高利回り物件を作っていくのです。
具体的には、修繕費用を含めて200万~300万くらいの物件を、利回り20~30%に仕上げて、利回り15%程度で売却していくことで、1物件あたり、100万~200万くらいを稼ぎます。
これを繰り返していくことで、「現金」を積み上げながら、「経験」も積んでいけます。戸建は管理がほぼ不要ですので、CFが欲しい場合は、売却せずに持ち続けても良いでしょう。賃料は5万~7万くらいと考えると、戸建を5~6棟所有すれば、CFだけで生活できます。
実際に、僕もサラリーマン時代や独立直後は戸建をよく買っていて、最大で8棟所有していました。
(2)戸建投資をステップアップの足掛かりにする
ボロ戸建投資は、借金や金利上昇のリスクが怖いなど、投資としてのリスクを負いたくないという人にもオススメの戦略です。
また、再生系の投資手法にチャレンジしたいけれど、いきなりロットの大きい物件に取り組むのは怖いという方も、ボロ戸建から始めて、小規模アパートから中規模アパートへと徐々にロットを大きくしていけば、無理なくステップアップしていくことができます。
そうやって、修繕費用の相場感やレベル感を掴み、トラブルへの対処法を身につけ、信頼できる業者とのつながりを作っていくのです。
戸建再生の手法は、時間も労力もある程度かかりますが、実力をつける非常に良い機会になります。
初心者の方で、良い物件がなかなか買えない場合のほか、中上級者の方も、選択肢の一つとしてチャレンジしてみると良いでしょう。
不動産投資で成功するには、投資家としての実力を磨いていくことが、絶対的に必要です。
ここを疎かにして、始めから「ラクして儲けよう」というマインドでは、業者のカモとして「養分」にされる運命が待ち受けています。
資金力がないなら、知恵を出しましょう。努力ナシで成功はできません。
「ボロ戸建再生投資」のメリット
不動産投資の実力をつけるのに最適な「ボロ戸建再生」ですが、ここではメリット、デメリットなどを交え、もう少し深掘りしたいと思います。
まずは、メリットから見ていきましょう。
(1)管理にお金も手間もかからない
戸建は共同住宅と違い、「隣の物音が気になる」「声がうるさい」などのクレームがくることはありません。
清掃は借主自身がしてくれますし、共用部やエレベーター、各種機器の点検、ゴミの処理など、共同住宅では必須の維持経費やメンテナンスも不要です。
やることといえば、毎月の入金チェックくらいです。
また、固都税が極めて安いのも大きなメリットです。
地方の大型RC物件や、積算評価の出る物件などは、8%前後の税率で固都税が掛かりますが、例えば再建築不可のボロ戸建では、固定資産税評価額が低いために、1~2%で済むこともあります。
(2)賃料が高く取れる上、長く住んでもらえる可能性が高い
一般的に、戸建は共同住宅よりも供給数が少ないため、需給バランス的に賃料が高めに取れます。
ペット可など、競争力のある条件に設定することで家賃を上げることもできるので、結果的に利回りが高くなる傾向があるといえます。
また、共同住宅の場合は1戸当たり、ワンルームだと2~3年、ファミリータイプなら3~4年くらいの回転率で退去が発生しますが、戸建の場合は、自分の家のように感じて愛着が湧くためか、5~6年は住んでもらえるケースが多くがあります。
退去が発生するとリフォーム費や広告宣伝費が掛かるため、戸建賃貸の「回転率が低い」という特徴は大きなメリットなのです。
(3)客が付けば売れやすく、流動性が高い
収益物件として、ロットの小さい戸建を探している投資家は結構多くいます。
利回りが15%以上であれば、詳細まで調べず、見ないで買う人もいるくらいです。そのため、戸建の多くは売りに出すとスムーズに売れていきます。
ちなみに、僕が過去に8棟持っていた戸建は、利回り25~30%で仕上げて、4~5年回して初期投資を回収した後、利回り15~17%で全て売却しました。
投下資金の1.5~2倍で売却できたので、ロットは小さいですが、効率よく儲けることができました。
(4)減価償却が取りやすい
法定耐用年数の築22年を超えた戸建は、原価償却期間が4年(法定耐用年数の20%)と決まっているため、減価償却費を大きく取ることができます。
ご存知のように、減価償却費は決算書上の利益圧縮に効果が絶大なため、大幅な節税とCFの確保につながります。
「ボロ戸建再生投資」のデメリット
メリットばかり書きましたが、ボロ戸建投資には、次のようないくつかのデメリットもあります。
(1)融資が使いにくく、ロットも小さいのでレバレッジが効きにくい
対象となる物件は、築年以上や再建築不可など、融資づけが難しい物件です。
公庫やノンバンクで融資を受けることができる場合もありますが、実際には現金で購入せざるを得ないケースが多くなります。
また、ロットが小さいため、「一気に買って即座にリタイア」というわけにもいきません。
属性や資金力が乏しい場合、売却を絡めて現金と経営実績を積み上げていきます。
その後、融資を使ってレバレッジを掛け、ロットの大きい物件に移行していくか、戸建だけでリタイアを狙うのであれば、地道に数を重ねていく必要があります。
(2)物件数を増やしていくと、ある程度手間が掛かってくる
基本、管理に手間が掛からないとは言え、10棟20棟と数が増えていけば、トラブルへの対応や入退去時の立会いなど、それなりに手間は増えていきます。
管理会社に任せることもできますが、物件によっては管理をしてもらえないケースもあるので、その点はデメリットになります。
このようにメリットとデメリットを比べると、メリットが大きく、逆にデメリットは少ないことがわかるはずです。
レバレッジが効かないので、僕は今となっては積極的に買いませんが、次のような人にとっては、ぴったりの投資手法だと思います。
・ガンガン買い進めるタイプではない人
・生活費としてのCFをメインに考えている人
・リスクを取らず、気楽にやりたい人
僕自身は規模をガンガン大きくしていますが、他の人にもそれを押しつけるつもりはありません。自分の目的に合った手法を使って、納得のいくやり方で資産を増やすことが大切です。
ルーツは超高利回り&売却益の戸建再生手法
少し話題がそれますが、戸建投資に話が及んだついでに、僕の投資手法のルーツを紹介します。
僕が専業大家として独立したのは、2010年の6月です。
今でこそガツガツ物件を買っていますが、その頃はまだ一棟物の物件を買ったことがなく、区分マンションから始めて、戸建てをちょろちょろ買う程度に留まっていました。
当時は大きな物件を買うのが怖かったですし、資金も少なく、融資の引き方もよくわかっていなかったのです。
そんな初心者の僕が大家の会に入り、色々と学んでいたところ、Aさんという投資家に出会いました。
話を聞いてみるとエゲツない、いや、かなり面白い物件を扱っていたので、彼に興味を持ちました。
そこで、彼と行動を共にしたところ、面白い光景を見ることができたのです。
それは、彼のアパートに住む入居者とのやりとりだったのですが、それを興味深く観察した後で、彼に尋ねてみました。
「Aさん、何をやってるんですか?」
「あのな、オレ、オッちゃんたちを相手に××(以下省略)」
「......」
これ以上はエグいので詳しくは書けませんが、Aさんが実行していたのは、生活保護者を入居させる「とある」スキームでした。
僕は当時、先代大家だった祖母から築古の文化住宅を引き継ぎ、リフォームや運営の勉強をしているところでした。
文化住宅の入居対象はAさんの持っていた築古戸建と同じような生活保護者やそれ以下の人でした。そのため、Aさんをマークし、彼のやり方をそっくり真似ることにしました。
同時に、生活保護に強い客づけ業者を紹介してもらいました。このときに学んだ手法こそが、僕の不動産投資の原点ともいえます。
その内容とは、次のようなことでした。
・価値のないボロ物件を再生して
・高い利回りを追求し
・売却を絡めて規模を拡大していく
僕が今、やっていることは、当時の手法にレバレッジを掛けて規模を大きくしただけなのです。金額の桁は大きくなりましたが、基本的には、その頃と同じことを今も実行しています。
このことから、ボロ戸建でも、アパートでも、大型マンションでも、安いボロ物件を再生して、売却を絡めながら規模を拡大することが、不動産投資においては鉄板の稼ぎ方ということがわかります。
Aさんの手法について、もう少し詳しく説明します。
Aさんは僕よりもエグい物件を扱っていて、「よー、こんなのやるな......」とドン引きするような変態物件でさえ見事に再生させる、その道のプロです。
お風呂やトイレが共同のボロアパートや倉庫等をシェアハウスに転換することで、利回り50%以上の物件に仕上げたり、元デザイナーの経験を活かして、なんの特徴もないボロ物件をリノベーションし、コンセプトを付加して再生したりすることを得意としています。
ブランド化することで価値を高め、1千万以下で仕上げた物件を4千万近くで売却するなど、尋常でない結果を出しています。
僕自身も、彼に物件をコンサルしてもらい、激安かつ、お洒落にリノベーションして、新築並みの賃料で貸している物件や、2~3倍の価格で売却した物件もあります。
さらにAさんのすごいところは、コスト意識に非常に長けており、デザインだけできる人とは目線が全く違うということです。
取れる賃料はこれだけだから、修繕にはこれくらいのお金を掛けるしかない。この予算の範囲でどう効果的にやりくりするべきか。
そういった投資家目線でのリフォーム手法や、目標金額への収め方が非常にうまいのです。
僕がAさんの投資手法を見て、「オレが目指す投資とは規模が違う」と思ってしまったら、Aさんのエグいノウハウを学ぶことはできませんでした。
僕らの周りには、目立たないけれどすごい人がたくさんいます。常にアンテナを立てて、貪欲に知識を吸収していきましょう。
木下たかゆき(きのした・たかゆき)
不動産投資家。1982年生まれ。関西学院大学商学部卒業後、求人広告の営業などを経て2010年12月に不動産投資をスタート。35才で満室想定家賃約7億円を達成する。トータル売却益も10億円以上。8年間の投資総額は60億円以上。2018年6月時点で住居系マンション、アパートを中心に、オフィスビル、テナントビル、ソシアルビル(スナックビル)など計70棟1200室弱の不動産を所有する。