Eコマースの王者であるアマゾンが、「銀行業への参入を検討している」と複数の報道機関が報じました。ブルームバーグによると、アマゾンは銀行業界参入を目的にJPモルガン・チェース銀行やキャピタル・ワンなどの複数の銀行と協議しているそうです。ここにきて、なぜ、アマゾンは、銀行業に参入するのでしょうか。

Z世代は「通帳」より「モバイルバンキング」

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(写真=RB-Phot0 /Shutterstock.com)

アマゾンが銀行業参入でターゲットとするのは「Z世代」だと言われています。まずは、Z世代について簡単におさらいしましょう。Z世代は、1995~2008年ごろに生まれた世代のことで、全米の人口の約25%を占めます。Z世代は、生まれたときからインターネットがある環境で育ち、インターネットやモバイル端末を抵抗なく使いこなすことができます。Z世代は、今後のインターネット社会を大きく変える可能性を持つ「第一世代」なのです。

彼らは、銀行における行動にも特徴があります。J・Dパワーの調査によると、Z世代の38%がモバイル端末を使用してオンラインバンクを利用しているといいます。これは、他の世代の平均19%を大きく上回りました。また、モバイル端末でオンラインバンクを利用する頻度も、他の世代に比べて高い結果を示しました。

このようにインターネットやモバイル端末との親和性が高いZ世代ですが、IBMの調査によると、インターネットで買い物をするZ世代は76%にすぎません。そのうち、「頻繁に買い物する」Z世代は22%にとどまっています。彼らの大半はまだ未成年で、クレジットカードやデビットカードを保有していないからだと考えられます。Eコマース各社にとっては、彼らがクレジットカードを持つ今後が力の入れ時なのでしょう。

アマゾンが考える銀行サービス

では、アマゾンはどのような銀行サービスを提供しようとしているのでしょうか。彼らは若年世代のEコマースをアマゾンに囲い込むような銀行サービスを導入する可能性があります。

アマゾンはアメリカで、Amazon Cashと呼ばれるサービスを提供しています。これは、セブンイレブンなどの小売店で、アマゾンで使えるお金を購入前に事前入金するサービスです。これも、クレジットカードやデビットカードを持たない層に対するアプローチの一環だそうです。

「アマゾン銀行」は、Amazon Cashが取っている戦略の延長線上にあると言っていいでしょう。未成年でも、アマゾン銀行にお金を預け、そのお金で商品を買えるようにするのではないでしょうか。そうすれば、Z世代が今までオフラインで入金していた手間が省け、利便性が向上します。どこまでも顧客の利便性を追求する、アマゾンらしい戦略と言えるでしょう。

アマゾンにはもうひとつ戦略があると考えられます。それは、「購買行動から顧客のクレジットスコアを独自で測り、独自のクレジットカードを作る」という戦略です。

今までクレジット会社がカードを発行する際は、今までのクレジットカードの利用実績などをベースにクレジットスコアを作って審査してきました。この実績などに加え、購買行動もスコア化することで、独自の「信用」を創造するのではないでしょうか。そうすれば、今までクレジットカードを持てなかった人たちも、アマゾンではクレジット払いできるようになるかもしれません。いずれにせよ、アマゾンは、銀行業への参入で「新たな顧客開拓」に取り組むことが予想されます。

既存の銀行は大打撃?

アマゾンが銀行業に参入すると、他の銀行はどうなるのでしょうか。アマゾンの参入に怯えている異業種の企業は多くあります。しかし、現時点で得られる情報をもとに考えればウィンウィンの関係が築ける可能性があるといえるでしょう。

銀行は「預金」「貸出」「決済」「信用創造」の各機能を持ち合わせています。アマゾンが担うのは今のところ「信用創造」と「決済」の一部分のみだと考えられます。実際、アマゾンが従来型の銀行業に参入するメリットは多くありません。既存の銀行のシステムを活用しながら、アマゾンのいわば「経済圏」を広げるのが目的ではないでしょうか。アマゾンが既存の銀行に協力を仰ぐこともあるでしょう。その観点では、既存の銀行は、かえってアマゾンの恩恵を受けられるのかもしれません。

アマゾン銀行は、新しい信用創造の第一歩になるのでは

アマゾンの「銀行業参入」のニュースは、多くの人を驚かせました。既存の銀行のシステムを使い、独自の経済圏を広げていくという方法は、顧客の利便性を第一に考えるアマゾンらしい施策かもしれません。

アマゾンが銀行に参入することで、Z世代をはじめ、今まで信用が低かった層に「信用」が生まれることでしょう。アマゾンが持つ顧客の信用情報を活用すれば、あらゆる企業が銀行業や保険業などに異業種参入するチャンスが生まれてきます。今回のニュースは、新たな信用を創造する第一歩になるかもしれません。(提供:J.Score Style


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