(本記事は、大川護郎氏の著書『新聞少年が一代で4903世帯の大家になった秘密の話』ぱる出版、2018年7月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

急拡大したサラリーマン投資家への懸念

新聞少年が一代で大家になった話
(画像=Sean K / Shutterstock.com)

この1、2年で急拡大して資産数十億円と声高にアピールしている投資家が最近増えていますが、私はすごいとはまったく思いません。

スピード重視になり過ぎていて、それ以外は思考停止になっている気がするのです。

そういった投資家は、「こういう物件だったら、この金融機関が融資をしてくれる」と考えて、金融機関に合わせた物件を選び、日本全国で物件を買い漁っています。

選ばれた物件が良い物件であればいいのですが「金融機関評価の良い物件」が必ずしも良い物件とは限りません。どちらかというと物件を買わせたいと考える不動産業者のカモになっている図式です。

これは「多法人スキーム」と呼ばれるもので、属性がよくなければ実践できないスタイルです。

例えば、年収1000万円を超えるエリートサラリーマンであれば、その人の与信で何億円もの融資が引けるわけです。

そして、法人を金融機関ごとに設立します。金融機関からすると債務が見えないので、それを同時に行ない、お金を借りていきます。

また、法人の決算もすべてバラバラに行なっています。

東京の投資家が大阪に法人をつくり、その後、北海道、福岡に法人をつくり、それぞれのエリアの金融機関から融資を引くというイメージです。

地銀は支店をもっているので、営業エリア内に入るのです。

こうした極めて特殊なスキームに対しては賛否両論があります。

金融機関を騙していることになるから絶対にやめるべきという人もいれば、最速で規模拡大ができるので羨ましいという人もいます。

ただ、多法人スキームを実践している人から話を聞くと、書類の量が膨大になって、その対応だけでも忙しいということです。

また、拡大ばかりに目がいきすぎて、ダメな物件を?まされている人も多いようです。こうした人は「破綻予備軍」と懸念されています。

一見、うまくいっている人も将来的にどうなるかはわかりません。

良好な経営を維持してから法人を金融機関に見せていく、という方法が妥当だと思いますが、このスキームが流行ったのはここ2、3年の話なので、まだ何とも言えません。

そして最近は、多法人スキームに対して、金融機関も取り締まりを強めています。「事業の実態を開示してほしい」、「従業員がいなければ認められない」など、厳しくなっています。

不動産売買......購入にあたっての注意

どの会社で買うのかですが、知名度があり安心感のある大手の不動産業者は、クレームをいうと二度と付き合いができなくなることがあります。

金融機関も同様ですが、大手の会社は稟議書に悪いことが書かれ、申し送りされるため気を付ける必要があります。だからといって媚びる必要はありませんが、そういう性質があることを知っておきましょう。

対して小さな不動産会社は、隙あらばこちらから利益を取ってやろうという姿勢があります。物件を売り逃げして責任を感じないのも同様です。

このように大手にしても中小の会社にしても、どちらが良い悪いとは一概にはいえません。

ですから、どちらとも適当にお付き合いするのが良いのだと思います。

いずれにしても不動産を買う際の注意点でまず挙げられるのは、契約時に重要事項の説明がきちんと行なわれているかということです。

説明する人は宅建の資格を持っていなければならず、何かあったら告知義務違反で仲介業者を訴えることも可能です。

私は宅建業を持っていないのですが、その理由は“弱者”でいたいからです。

不動産を売るつもりはないですし、宅建業を持つ同士になったときの揉め事も避けたいと思っています。ある新聞に私のことを、“世界最強の弱者オーナー”と書かれたこともあります。

もちろん、すべてのケースで瑕疵があったからといって訴訟するわけではありませんが、話し合いの立場を持つようにしています。

以前に私の購入したもので、室内から空が見えるようなボロ物件がありました。

ただ、これは事前に説明を受けており、それ以上の瑕疵が見つかったら指摘したうえで金額の交渉をしていたはずです。

購入時の注意点について話をしてきましたが、私は基本的に「買って問題が出たら解決しよう」と考えるタイプです。

もちろん、購入に際しては必ず物件を確認する必要があります。

区分所有マンションなら、これまで入居していた人がどういう属性なのか把握します。入居率が悪い物件は、一つの例として同じマンション内に往々にしてクレーマーがいることが原因だったりします。

こうしたことは、近隣の人に質問すればすぐにわかるでしょう。

区分所有マンションを選ぶときに大切なのは、自分なりの賃料基準を確実にクリアできるかということです。

私の場合、例えば姫路であれば60平米で4万円なら絶対に貸せると確信していますので、その条件を満たす物件であることが大前提です。

この条件は人によって様々だと思いますが、自分なりの基準を持つことが大切です。

木造アパートは、土地の値段(実勢価格)で買うことを基準に考えています。最高なのは路線価で、それがダメだったら実勢価格、そのあとは自分の妥協ラインで判断します。

このとき、土地値であることを重視しているので、建物の状態は気にしません。木造は何かしら悪いところがあるものなので、言い出したらキリがありません。

対してRCや重量鉄骨の場合、「どこが危ないか」を見極めることが大切です。

例えば、RCであれば新耐震基準(1981年6月以降)なのか旧耐震基準なのか、アスベストの有る無しなどリスクを把握します。

ちなみに私は、テナントや事務所は難易度が高いため、レジデンスをオススメしています。

また、築古の物件で融資の年数を伸ばすにはコストがかかりますが、鑑定評価を入れたり、「エンジニアリングレポート」などに準じて耐震工事を行ない耐用年数を60年まで伸ばす方法があります。

サブリースを過信しない

私は、サブリース(借上げ)については全面否定します。

借上げには一長一短がありますが、借上げを行なう管理会社は「借りてやっている」といったように上から目線で接する会社が多いように思えます。

オーナーもつい「借りていただいている」という気持ちになっています。

実際のところをいえば、儲からない物件に対して借上げはしません。入居付けがしにくい物件であれば、1年で契約を打ち切りますし、逆に良い物件であれば10年借り上げるかもしれませんが、それはオーナーのためではなくて、自社が儲かるからです。

彼らも慈善事業を行っているわけではないのですから、利益を追求するのは当然のことなのです。

借上げを「空室でも家賃収入が入るから安心だ」と魅力に思うオーナーは多いですが、常に利用できなくなる状況は常に頭に入れておかなければなりません。

繰り返しますが、サブリース業者は慈善事業をやっているわけではありません。儲かるからやっているのです。

彼らはおよそ家賃相場の8掛けの賃料を補償します。

しかも、様々な免責があり、入居募集に必要な広告費はオーナーが払うなど、細かい出費があります。

そうであれば、最初から自分で相場賃料の8掛けで募集をすればいいのです。そのほうが入居者も喜びますし長く入居してくれます。

家賃相場6万円の物件を、サブリースに任せれば毎月4万8000円しかもらえません。そこをサブリース会社が6万円で客付けしているのであれば、自分で4万8000円で貸し出したらいいのです。

そこまで下げなくても5万円でも決まるはずです。その方がサブリースより手取りが増えます。

滞納リスクに対しては家賃保証会社に加入してもらえれば何の問題もありません。これが、サラリーマン大家であれば自分で持ち出しが怖いからとりあえずサブリースにしようと考えてしまうケースが大半です。

地主さんの場合は「営業マンに言われたから」とお任せでサブリースをしています。

その結果、自分に不利な条件を飲まされていることすら理解していないケースが多いです。

大手メーカーのサブリースでは、退去時のリフォームでも儲けています。退去時に原状回復などで、法外な値段を請求されていることも多くあります。

このようにオーナーのお金を根こそぎ持っていくシステムになっているわけです。

自主管理まではまだしも、ある程度、物件の管理運営にはオーナーが関わらなくてはいけません。それを面倒と感じて嫌がるくらいであれば大家なんて辞めた方がいいでしょう。

行なうべきリフォーム・やらなくていいリフォーム

現在は数え切れないほどの不動産投資本が溢れかえっています。

築古がいい、新築がいい......薦める対象やスキームは違うものの、すべてに共通しているのが、修繕費が収益を圧迫するということです。いくら高利回り物件を買っても、次から次へと修繕が発生しては儲けが残りません。

私も当然修繕費の問題は大きいと思っていますが、だからこそ「最初から修繕できる物件」を選ぶようにしています。

最近は、築20年、30年でも融資を受けられるようになりましたが、初期のころはまったく買えませんでした。今考えてみれば、最初から修繕が発生するような物件を選んでおいてよかったのだと思っています。

最初から修繕が発生するような物件は融資も出にくいのですが、現金で購入できれば、その後は改装費として融資を受けられる可能性が高まります。

私が最初に購入した物件は、220坪の土地に立つRC造の物件でしたが、全空で廃墟のような状況でした。窓ガラスが割れていたり、外壁も崩れそうだったりしたのです。

ただ、それでも私は「修繕すれば、なんとか住めるのではないか」と思いました。そこで、1LDKに改装したところ、今では満室経営できています。

ちなみにこの物件は、バブル時代であれば坪100~150万円でしたが、私は坪8万円で購入できました。なぜ破格の値段で買えたのかというと、建物がボロボロすぎて誰も買い手がいなかったからです。

ただ、金融機関は土地の価格を評価します。ですからバブル時代に約3億円だった土地に対して、リフォーム費6000万円(500万円×12部屋)の融資をしてくれたのです。

私が購入したのは1800万円で、キャッシュで支払いました。それを担保に入れて6000万円の融資を引いたわけです。

最初の物件は本当に融資が出なくて、信用金庫を40支店以上まわり、ようやく借りられました。

2軒目に買ったのは、1階に店舗が付いた3階建ての戸建てでした。戸建てにしては珍しく重量鉄骨造で、外階段がついています。

そこで、その階段を利用してワンフロアずつに世帯を割ることにしました。1フロアが120平米あるため広さは十分です。

金額は修繕費も合わせて1500万円でしたが、今は2LDKで3戸に分けて賃貸に出しており、家賃その他で月25万円以上が入ってきています。

このときも事業融資という名目で、リフォーム費用を2000万円、10年返済で借りました。

管理運営のコツ

私が物件を所有している姫路エリアは、広告費が高く2~3カ月はかかります。

ただ、私はエリア別に分けて自主管理しています。

大阪においても私が1600戸所有するビッグオーナーということもあり、待遇がとてもいいです。入居率でいうと、姫路は83%前後に対し、大阪は97%です。

大阪の管理会社は複数に依頼していますが、どこも仕事ぶりが素晴らしいです。管理を成功させるのなら、「管理会社をいかに徹底して管理できるか」ということが最重要ポイントです。

そのためには、まず物件のもとへ足を運び、状況をチェックする必要があります。そのうえで「ゴミが散乱しています」「共用部の掃除をお願いします」などと管理会社に報告すればいいと思います。   以前、姫路のAショップFCの会長が家賃を持ち逃げしたのですが、その雇われ社長がある日私のもとに「大川さん、掃除をして償いをさせてもらいたい」と言いにきたことがありました。

断る理由もありませんからお願いをしたのですが、物件を見に行ったところ、3階にある事務所の階段にタバコの吸い殻が落ちてい ました。

電話をして「掃除はどうなったのですか?」と聞くと、「週3回は掃除に入っています」と答えます。

その後、3週間定期的にチェックしたところ、「掃除をしています」というにもかかわらず明らかに吸い殻が放置されており、とても掃除をしているとは思えません。

月に3万円も支払っているのに、この状況はありえないと怒りを覚えました。

実は、全国でチェーン展開している不動産屋の場合、こうしたことは珍しくないと個人的には思っています。

日ごろは掃除をせず見回りだけをして、それらしい写真を送ってくるだけです。さらには半年に1回「特別清掃」と称して10万円も取るなんてこともあります。

こういった悪質な実態は、物件の近くに住む人であれば気づくはずです。しかし、都会の投資家が遠方の物件を購入する場合はチェックがしにくいため、被害に遭う可能性が高まりますから注意が必要です。

詐欺行為で訴えたいところなのですが、掃除をしたのかどうかの証拠は示せません。

もちろん、すべての管理会社はこのような不正を行っているわけではありません。しかし、油断してはいけないと思います。

また、多くの全国チェーンのFCはオーナーを下に見ています。

関東はライバルの会社が多く、競争の原理が働きますが、地方にいくほど知名度のある会社が偉いと思っているような風潮があります。

ただ、こういった不正が横行するようになった背景には、地主やサラリーマン大家が管理会社へ任せきりにしているのも大きな原因だと思います。

例えば、名古屋であれば、物件数と管理会社の需給バランスが崩れているので、管理会社は一生懸命業務にあたります。これは東京でも一部同じことがいえるでしょう。

物件の数に対して管理会社の数が多ければ、管理会社同士の競争が激化しているので、サービスが全体的に向上します。

一方、地方だと競合が少ないため、のんびり営業していても頼ってもらえるので経営努力をしなくなるのです。

逆に言うと、そういう怠慢な会社(全国チェーンなど)に管理を任せている物件ばかりのエリアでは勝ちやすいといえます。

全国チェーンでは、直営店は少なく、そのほとんどがFCです。つまり、ほぼ地場業者なのです。看板だけは有名でも、それほど信頼度が高くないので、私は自分の近くで見える物件でなければ購入意欲がわきません。

「自分の近くで見える物件」とは、人によって異なると思いますが、私の場合は「自分が行ける範囲」ということになります。

新聞少年が一代で4903世帯の大家になった秘密の話
大川護郎(おおかわ・ごろう)
1972年生まれ。姫路市に育ち、小学生のときに親の会社が破綻、貧困生活を送る。16歳で新聞販売店に就職。23歳のときにコツコツ貯めたお金で不動産投資を始める。23年で274棟4903室(2018年6月末現在)、家賃収入を含めた総年間収入48億円までに。全国セミナー等で「ゼロ家賃」構想を打ち立て大反響を浴びる。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます