(本記事は、大川護郎氏の著書『新聞少年が一代で4903世帯の大家になった秘密の話』ぱる出版、2018年7月26日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

1棟目キャッシュ、2棟目から融資がスピードを加速させる

新聞少年が一代で大家になった話
(画像=Ned Snowman / Shutterstock.com)

融資のレバレッジの考え方は人それぞれです。

フルローンやオーバーローンのように、とにかくたくさん引ければいいと考える人もいれば、自己資金はある程度入れたほうがいいと思う人まで、実にさまざまです。

私の場合は、既存のローンを完済して、それが担保になりだしてから資産が加速度的に増えていったという印象です。

よく「すぐに規模が大きくなりましたね」と言われるのですが、実際は20数年かかっているのです。

ですから、これから融資が受けにくくなる時期になりますが、最初の物件はキャッシュで購入し、その物件を担保に買い増していくというのは一手だと思います。

そういう意味で、2棟目以降は現金をできるだけ使わず、1棟目だけキャッシュで買って、その物件を担保にするのがよいと感じています。

3000万円の現金を使うくらいなら、担保価値6000万円の物件を買って担保に入れて融資を引くことをオススメします。

理想は、3000万円の物件で評価が6000万円です。

そうすることで3000万円の余力を担保として使いながら、合わせて家賃収入も得られます。ですから、そういった物件を買えば、担保余力があり、返済の原資にもなるので、毎月キャッシュフローを多く生んでくれます。

だからこそ融資条件を妥協してはいけません。

それは金融機関側の都合のいい条件なのであって、投資家目線で好条件とは限らないからです。多額の自己資金を求められたら、それを何とかできないか知恵を絞りましょう。

といっても私は、自分の属性が優れていると思わなかったので、金融機関同士を競わせるということはしませんでした。ですから、金融機関間での競争は「できる人はやったらいい」と思っています。

私のようにあまり属性がよくない人は、競争させようと思っても相手にされないでしょう。

むしろ、金融機関を競わせて良い融資条件を目指すよりも、それぞれに違う案件を持って行って、全部買ってしまったほうが結果的に儲かると思います。

私のようにどんどん買い増しをしていると、よく「キャッシュアウトはしないのですか?」という質問を受けます。

ただ、基本的に私は毎月のキャッシュフローが出る物件を買っているので、買い増し時の諸費用は工面できます。

例えば、1億円の物件に対して、融資が7000万円しかつかなかったとします。

そうなると3000万円のキャッシュが必要なわけですが、こういった場合、私は3000万円に対して約4000万円の担保に入る物件を見つけて、担保に入れて満額融資をしてもらいました。

仮に1億円の物件が利回り10%、4000万円の物件が利回り20%だとすると、それぞれ年間家賃収入が1000万円、800万円となり計1800万円になりますが、返済自体は1億円の物件のみ発生します。

もし25年ローンだったら、毎月40万円程度ローン返済になるので、手元に残るキャッシュは年に1200万円です。

そういう意味で、正直なところ、私にはなぜキャッシュアウトという現象が起こるのかよく理解できません。

もちろん、リフォーム費が予想以上にかかった、思ったよりも入居率が悪かったというケースはあるのかもしれません。

しかし入居率の悪さに関していえば、新しい物件で歳月を経るごとに家賃が下がらない物件を除いて、価格が落ち着いた中古で買っていれば、そこまで大きな変動はないはずです。

当然、修繕リスクはあるものの、そんなことを言っていたら、あらゆる物件には何らかのリスクを孕んでいるわけです。新築であっても退去されたら修繕リスクがあります。

ですから同じ修繕といっても、キャッシュフローをたくさん生み出す物件の修繕と、ほぼ生み出さない築浅の物件では、意味が異なるのです。

自分の基準を持つことが大切

人口減少が加速しているにもかかわらず、どんどん新築物件を建てている日本では、当然ながら空室率が上昇するわけですから、周りの環境を見極めなくてはなりません。

私が投資している兵庫県姫路市はマックスの人口が56万人なのですが、わずか5年で約3万人減少するといわれています。

これはつまり、全体の0.5%が空き家になるという計算です。

これは何も姫路市に限ったことではありません。基本的には、東京以外は競争が激化するといえるでしょう。

とはいえ、東京は新築マンションが乱立していますから、東京であろうと勝負が容易いわけではありません。都心には投資用ワンルームが乱立していますし、少し離れた郊外になれば地方と同様にライバルは地主になります。

購入にあたって重要なのは、“自分の基準”をしっかり持つことです。

基準は、入居者ターゲットが単身なのか、ファミリーなのか、また所得についても高所得者層なのか低所得者層なのかに分かれますが、基本的に居住年数の長いファミリー向けを狙うことを私はオススメしています。

物件の構造については、特別なこだわりはありません。

よく「木造よりもRC造の方がいい」という人もいますが、RC造は法定耐用年数が長く融資付に有利に運ぶメリットはあれど、維持管理にランニングコストが掛かるため、必ずしもいいとはいえません。

またRC造の解体費にかなりのお金がかかるのがネックです。

その一方で、「木の文化」と称される日本の木造建築は、築200~300年の物件もあるロンドンのように、きちんと手入れをさえすれば長きにわたって物件としての価値を維持することが可能です。

不動産投資の基準を持つことは非常に大切です。ゴルフのスイングと同じで、育った環境や筋肉のつき方は異なるわけですから、決まった型にはめることなんて無理なのです。

不動産投資でいえば、エリアや年齢、価値観によってやり方は変わってきます。

ただ、何らかの基準を設けて、そこに沿ってやっていく必要があります。最終的に頼れるのは自分と、家族と応援していただける方だけということを忘れてはいけません。

たまにとんでもない物件を紹介されることがあります。具体例を出すと、先ほどの大阪某区のような、買ったら最後、絶対に埋まらない物件です。

要は仲介手数料が入れば、あとはどうなろうが知ったことじゃないのです。そのような“売り逃げ”する不動産会社が圧倒的に多いのが現実です。そのことは肝に命じておきましょう。

物件を買うときは、最終的にすべて自己責任です。しっかり自分で検証するしかありません。

セミプロクラスの個人投資家は、相場を上げる人種です。

本当のプロの投資家というものは、それよりも安く買って、それを個人投資家に売っています。

つまりプロからセミプロの個人投資家、最後に素人の個人投資家に高く売られていく図式があるのです。

購入を検討している物件があるなら、土地・家賃・値段は必ずチェックすべきです。まずはインターネットで検索すればいいでしょう。

とくに私が好むのは、学校や病院が近くにある物件です。どれだけ過疎化が進んでも、病院は最後まで残るからです。

特に新しい大病院は移転のリスクがまずありません。

あえて「売れ残り物件」を買う

物件の探し方は、実にさまざまです。

ただ、私ならではという意味では、「売れ残っている物件」に注視しています。

例えば、過去10年間掲載し続けてある物件があったとすれば、「なにか安く買える方法はないかな」と考えるようにしています。

それだけ長く売れていなかったのなら、指値ができる可能性も上がりますし、「絶対に売れない」という物件を商品化したとき、大きな利益を得られるといえます。

もちろん、売れ残っている物件にはそれなりの理由があるわけです。

でも考えてみてください。一つの欠点もない100%の物件など、そもそも存在しないのです。

とはいえ、「駅前にあり利回りの高い物件だと、安く買うのが難しいのでは?」とあきらめている人も多いのではないでしょうか。

ですが、安く買えるのなら、例えば「大きく傾いている」という物件でも全く問題ないと私は考えています。

たしかにこのケースは玄人向きですが、私は以前、600万円ほどで購入した物件が、購入翌日に倒壊したことがあります。

ただ、もともと家の壁の隙間から外が見えるような物件でしたから、まあこんなものかなと納得しました。

階段を上ればパキパキという音がして、今にも折れそうな佇まいだったのです。しかも、そんな物件でも入居者はいました。

早く取り壊してほしいとご近所からの要望がありましたが、私はあえて再生したわけです。近所の方々など、「あの家を再生するのか?」と驚いていました。

この土地は相場でいうと、坪20万円は下らない場所でしたが、そこにボロボロのアパートが建っていたため安くなっていました。

けれども、家賃は1戸3万円で、毎月計18万円入ってくる物件でした。しかも満室ですから、利回りで考えるとものすごく高いわけです。

では、そんな一見、優良物件がなぜ破格の値段で売りに出されていたのか。

理由は、やはり物件が古かったというのが大きかったと思います。

購入後、私は屋根に積んであった普通の瓦をすべて取ってもらい、軽くするためにカラーベストを貼り付けました。そして、今にも壊れそうな階段が問題だったので、鉄骨を組んで強化しました。

結果として、700万円くらいかかりました。しかし、それでも利回り10%以上でまわっています。

更地にして売るという選択肢ももちろんあるので、自分としては大成功だったと思っています。

こうしたことは、購入前からある程度予測しておきます。

新聞少年が一代で4903世帯の大家になった秘密の話
大川護郎(おおかわ・ごろう)
1972年生まれ。姫路市に育ち、小学生のときに親の会社が破綻、貧困生活を送る。16歳で新聞販売店に就職。23歳のときにコツコツ貯めたお金で不動産投資を始める。23年で274棟4903室(2018年6月末現在)、家賃収入を含めた総年間収入48億円までに。全国セミナー等で「ゼロ家賃」構想を打ち立て大反響を浴びる。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます