相続税を計算するとき、相続や贈与を受ける財産の評価額をまず計算する必要があります。不動産の場合は土地や家屋の評価額を算出することになりますが、路線価を基準とする計算方式や土地の利用目的、特例の減額措置などを正しく理解する必要があります。この記事では具体的な事例を示しながら、その計算方法について解説していきます。

土地の評価額の計算:路線価方式と倍率方式

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(画像=PIXTA)

土地の相続税を算出する場合には、「路線価方式」と「倍率方式」のどちらの方式で評価を行います。評価は「宅地」「畑」「山林」などの地目ごとに行います。

評価方式については、路線価が定められている地域では路線価方式を使い、路線価が定められていない地域では倍率方式を採用します。ちなみに路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの1000円単位の価額のことで、国税庁が路線価を毎年公表しています。

路線価方式で評価額を計算するときには「正面路線価 × 奥行価格補正率 × 面積」の数式を用います。奥行価格補正率は土地の区分と奥行距離によって率が0.8~1.0の間で定められています。例えば路線価が20万円、奥行価格補正率が1.0、面積が150平方メートルの宅地の場合は以下のようになります。

20万円(路線価) × 1.0(奥行価格補正率) × 150㎡(面積) = 3000万円(評価額)

また、宅地が複数の路線に接している場合は「側方路線影響加算額」や「二方路線影響加算額」などを計算して、最終的に評価額を算出します。

倍率方式で計算をするときは「固定資産税評価額 × 倍率」の数式を使います。この倍率は地域によって異なり、地域ごとの倍率は国税庁がWebサイトで公開しています。例えば固定資産税評価額が2000万円、倍率が1.1の場合は以下のようになります。

2000万円(固定資産税評価額)× 1.1(倍率)=2200万円(評価額)

家屋の評価額の計算:固定資産税評価額がそのまま家屋の評価額に

家屋の場合は「固定資産税評価額 = 家屋の評価額」となります。固定資産税評価額が2000万円の場合は、家屋の評価額も2000万円です。

小規模宅地等の特例:被相続人の事業用または居住用の宅地等が対象

相続する宅地等の評価額を減額する特例があります。これを「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」といいます。被相続人等(財産を引き渡す人)の事業用または居住用だった宅地等が対象となります。

利用区分や要件によって減額の対象となる「限度面積」が定められており、減額率は50%または80%のどちらかになります。例えば限度面積以内の宅地等の場合で、評価額が1億円で減額率が80%の場合は、減額される金額は以下のように計算され、最終的な評価額も算出することができます。

1億円 × 80% = 8000万円(減額される金額)
1億円 − 8000万円 = 2000万円(最終的な評価額)

自用地と貸家建付地での違い:計算方法が異なる点に注意

相続税の評価額を計算するとき、所有者が自ら使用している「自用地」と、所有地に建てた家屋を貸し付ける目的で使われている「貸家建付地」では、その評価額の計算方法が異なります。

自用地の場合はこれまで紹介してきた宅地等の計算例がそのまま当てはまりますが、貸家建付地の評価額は「自用地とした場合の価額 − 自用地とした場合の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合」の数式で計算されます。

不動産評価額の算出は相続税計算に必須

土地・家屋でそれぞれ計算方法が異なり、特例の減額措置が設けられていることや土地の利用目的で評価額が変わることが分かりました。

不動産の評価額が分かると、被相続人のほかの現金や株式などの財産などをそれに加えて、具体的に相続税を計算できます。相続税の総額の計算方法は「相続税の計算を理解するための4つのステップ」を参考にしてみてください。(提供:事業承継ガイド


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