(本記事は、玉川陽介氏の著書『常勝投資家が予測する日本の未来』光文社、2018年2月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

会社員の働き方と事業家の仕事の違い

常勝投資家が予測する日本の未来
(画像=Jacob Lund/Shutterstock.com)

大企業に勤める社会人たちは、多方面で均等に能力がなければ生きていかれない。

それは、そこに至るための試験を見るだけでもよく分かるだろう。

国語、数学、日本史、物理、化学、英語、それぞれで90点を取らなければ試験を通過できないわけだ。

さらに、社会人として仕事をするには、朝7時に起きられなければならない。上司とうまくコミュニケーションをとらなければ出世できない。

社会で生きていくには多様な能力が必要なのである。

そのため、学校教育もそれを目標として、均等に能力を伸ばすようにしている。

苦手な科目があれば、最後まであきらめずに頑張って成績を上げる必要がある。足キリされないために。会社から追い出されないために。

一方、事業家(起業家、経営者)は、何かひとつだけできればOKだ。

実際、国語0点、数学0点、物理も化学も一般常識も0点。唯一、政治経済だけ1000点のようなプレイヤーは多い。

センター試験では政治経済の試験科目としての価値は低い。多くの大学では政治経済を選択科目として認めていないからだ。

それゆえに、簡単なので少し頑張れば誰でも高得点が取れる。そんなマイナー科目を履修していても、合計では1000点だ。

次は、この試験の点数を売り上げだと考えてみよう。

優秀な大企業のサラリーマンは5科目すべて90点だとして、計450点。事業家は計1000点だ。たとえば1点を1万円と換算したとして、450万円と1000万円になる。

難易度の高い、物理と化学をW履修で均等に90点を出してくるバランスの取れた優秀な社会人よりも、マイナー科目で楽々と高得点を刻む偏屈な人のほうが儲けが多いことが分かるだろう。

なぜこれが成り立つかといえば、ビジネスの成果は最終的にお金という定量的なものに帰結するからだ。

お金は差し引きして損益通算できるので、不得意なことはすべて捨てて、一点集中することが許される。お金に色がないとはそういう意味だ。

試験と違って不得意分野での足キリはなく、トータルでお金の勘定がプラスになっていれば誰も文句を言わないわけだ。

そのため、事業家や投資家なら、苦手なことは努力して改善するよりも「やらない」べきである。

投資と同様に、傷は浅いうちにやめたほうがいい。苦手なことを頑張れば傷が深くなるだけだ。だめなら放棄すればいい。

最後まで精一杯頑張る必要はなく、そんなことをしている暇があったら、得意分野でプラスを増やすのが合理的なのだ。

苦手分野で稼いでも得意分野で稼いでも、どちらも同じお金であるからだ。

このように、企業でまじめに働く面々と、事業家は、点数の稼ぎ方がまったくことなる。

そのため、事業家が手っ取り早く高得点をたたき出すには、とにかく打席に立ち続け、満塁ホームランを狙い続けるのが効率的だ。0点が何度出てもよい。一度だけ1000点を出せば合格なのだ。

さて、話は変わって番外編となるが、世の中には驚くべき利益の上げ方もある。FXデイトレーダー投資家の稼ぎ方はさらに特殊だ。

デイトレは、例えるならば一日中パチスロを打っているギャンブラーのようなものだ。ときに、一日の取引回数は数百回を超える。

パチスロは娯楽であり、遊び続けていれば勝てるはずはない。客が勝ち続ければ店は潰れてしまうからだ。

そう考えるのが常識人の正しい考え方だろう。

しかし、実際にはパチスロのギャンブル性は低く、統計確率論で動く機械に過ぎない。

払い戻しの期待値が100%を超えるスロット機ならば、一年中それを打ち続ければいつかは必ず勝てるのだ。

人を雇って打たせてもいい。

FXのデイトレでは、それと同じ理論が成り立つ。

完全にランダムのように見える、極めて短期のチャートの動きを自分なりに分析し、51%以上の確率で勝てると思うパターンが出たら毎回必ず勝負する。

負けることもあるが、期待値は100%を超えているため、長い目で見れば必ず利益が出る。仕組みはパチスロの確率論と同じだ。

しかし、一回の博打で打つ金額を自分で決められる点は、パチスロとは違うところだろう。

数億円単位の賭け金を張り、毎日、数百回もの取引を繰り返すデイトレーダーは多数いる。

1回の利益は数億円の賭け金に対して、たったの1万円。

だが、それを数百回繰り返して、1日、数百万円の利益をコンスタントに続ける達人もいる。

先の例でいえば、試験科目を大量に受験するタイプのプレイヤーだ。それぞれの試験では合格最低限の点数しか取れないが、累計で1000点をたたき出す人たちということになる。

しかも、その試験の受け方は、マークシート試験では統計的に2番目の選択肢が解答となることが多いため、毎回、2番をマークし続けるというものだ。

世の中には、さまざまな点数の稼ぎ方があるものだ。

常勝投資家が予測する日本の未来
玉川陽介(たまがわようすけ)
1978年神奈川県大和市生まれ。学習院大学卒。学習院さくらアカデミー講師。大学在学中に統計・情報処理受託の会社を立ち上げ、28歳のときにM&Aにより上場会社に売却。その資金で世界の株式、債券、不動産などに投資する個人投資家となる。世界20ヵ国以上で銀行と不動産市場を調査し、経済誌などへの執筆も行う。主な著書に『不動産投資1年目の教科書』(東洋経済新報社)、『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて』(技術評論社)などがある。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます