(本記事は、玉川陽介氏の著書『常勝投資家が予測する日本の未来』光文社、2018年2月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

ニッポンの新しい基幹産業5選

常勝投資家が予測する日本の未来
(画像=HQuality/Shutterstock.com)

2025年の日本は新基幹産業として何を擁立したのだろうか。

2025年以降の新基幹産業の1つ目は植物工場だろう。

これは、農業の担い手がいなくなる日本には都合の良い新産業だ。現在、すでに工場で生産されているレタスなどの葉ものだけでなく、2025年には、米や小麦、ジャガイモなどの主要食物にも、その道が開けるようになるかもしれない。

水と設備と電気だけで収穫が得られる点はビットコインの採掘のようでもある。

もちろん、植物育成用LED照明の性能比較サイトのようなものではなく、大量生産に直結する、ど真ん中の研究開発が必要だ。

そして、生産物の流通面ではJA(農業協同組合)との調整も必要だが難航は必至だ。これは政府のトップダウンで命令していくしかないだろう。

2つ目は、建設機材の輸出。

未来の低価格アパートは巨大な3Dプリンタで作られ、鉄骨の組み上げはロボットが行うことになろう。

レゴブロックとアーム付きのロボットがあれば、部品を自由自在に組み上げてオモチャの家を作れることは想像できるだろう。

ならば、実際の建築現場で使われている鉄骨でも原理は同じだ。

このような製造装置を世界中の建築現場に輸出すればいい。そうすれば、国内の不動産市況に影響を受けることはなくなる。

日本が世界に誇る耐震技術は「TAISHIN」と英語化されて、高く評価される日が来るだろう。

じつは、3Dプリンタで作られた建物は、小規模ながらすでにドバイに存在する。あり得ない未来ではないはずだ。

3つ目は、自動運転用のインフラ整備という官需だろう。

現在の自動運転技術は、自動運転1.0ともいえる原始的なものだ。

走行する道路には何の仕掛けもなく、自動車側に自動認識のための装置をすべて盛り込んでいる。

それでは仕組み上、複雑になりすぎて誤認識や予期せぬ事故は避けられないだろう。

エヌビディアの画像認識チップを搭載した車だけが走っているならばいいだろう。

しかし、他社製のバグを含む機器や、想定外の無謀な運転をする人間と同じ道路を走るには、膨大なパターンの学習が必要だ。

これでは、人々が思い描いているような、車間距離が極めて狭く、交差点で縦横無尽に車が交差するような自動運転はあり得ない。

自動運転で市街地を縦横無尽に走るには、道路にタグを埋め込むことが必須なのだ。

海外の市街中心部を走るトラム(都電荒川線のような路面電車。自動運転のこともある)のレール部分を非接触のICタグに置き換えるようなイメージだ。

これならば、走行ルールは大幅に単純化され、信頼できる自動運転が実現するはずだ。

2025年くらいからは、道路インフラ側の自動運転対応が始まるだろう。

自動運転2.0時代の幕開けだ。

4つ目は製薬だ。

20世紀の人間の死因は、なんといっても癌だった。癌の特効薬があれば先進国の平均寿命は100歳まで延びるだろう。

筆者は、医学や薬学に関しては、まったくの素人だが、「遺伝子改変T細胞療法」と呼ばれる癌の治療法は画期的だと感じた。

じつはすでに、ノバルティスやギリアド・サイエンシズといった海外企業が治療1回あたり5000万円程度の値付けで癌の特効薬を販売しており、実際に多くの癌が治っているとのことだ。

いまは富裕層限定価格ともいえるが、将来的には誰でも使える価格に落ち着くのは間違いないだろう。

この高額医療のニュース記事を見て、筆者はひとつの類似療法を思い出した。

ナチュラルキラー細胞療法といって、もともと自分の体の中で免疫機能のある細胞を一度、注射器で吸い出し、それを人工培養して体に戻すものだ。

若いうちは多く存在した免疫細胞が加齢により減少するために病気になるが、それを体外培養で人工的に増やして体に戻せば、若いときと同じように病気に強い体を維持することができるという理論だ。

すでに、日本でも一部の富裕層のあいだで流行っている。

もし、この2つの治療法が、ほぼ同じものであるならば、富裕層の健康に対する嗅覚は、なかなかのものであるといえよう。

病気の治療以外にも、アンチエイジングや若返りなども研究が進み、2025年の日本では、外観と年齢がまったく一致しない富裕層が増えるかもしれない。

5つ目は希望的観測を込めて宇宙開発だ。

15世紀の大航海時代では、航海の舞台は地球だった。20世紀にはそれがネット空間になり、21世紀は宇宙空間となる。十分にあり得る話だ。

限られた地球上の地図だけで経済を考えるから行き詰まるだけで、宇宙にまで手を広げれば、無尽蔵の資源獲得が視野に入る。

たとえば、宇宙空間に巨大な太陽光パネルを設置して、地球に無線給電で電力を送る(携帯端末の非接触充電と同じ原理)など、想像のつく範囲から実験を進めることになろう。

渋谷のスタートアップ企業のなかには、スペース・デブリ(宇宙ゴミ)を回収するベンチャーが誕生するかもしれない。

もっとも、この頃には渋谷ではなく、つくば(茨城県)あたりが宇宙開発ベンチャーの主な拠点になっていることも考えられる。

2025年の基幹産業がこの記述の通りになっている確率はそれほど高くないだろう。産業の未来を占うのは株式投資で連戦連勝を続けるのと同じように難しい。

それでも、流れとしては当たらずとも遠からずだと筆者は考えている。

これまでのシナリオが正しいとするならば、新基幹産業の育成は、渋谷のスタートアップ企業ではなく国と大企業の仕事だ。

そこで、重要なのは国と民間が文字通り一体となり、人材的にも予算的にも膨大な資源をひとつの領域に集中してつぎ込むことだ。

それでも当たる保証はなく、かなり博打的だ。このような大きな賭けは、どこの役所でも大企業でも稟議が通らないだろう。

しかし、博打の責任をとることを避け、ぬるま湯につかり続けていれば、2025年以降には、取り返しの付かない未来がやってくるのは確実だ。

万難を排して、この大博打を成功させることが、日本が世界経済のなかで生き残るために必要なのだ。

常勝投資家が予測する日本の未来
玉川陽介(たまがわようすけ)
1978年神奈川県大和市生まれ。学習院大学卒。学習院さくらアカデミー講師。大学在学中に統計・情報処理受託の会社を立ち上げ、28歳のときにM&Aにより上場会社に売却。その資金で世界の株式、債券、不動産などに投資する個人投資家となる。世界20ヵ国以上で銀行と不動産市場を調査し、経済誌などへの執筆も行う。主な著書に『不動産投資1年目の教科書』(東洋経済新報社)、『Excelでできる不動産投資「収益計算」のすべて』(技術評論社)などがある。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます