(本記事は、寺嶋直史氏の著書『究極の問題解決力が身につく瞬発思考』文響社、2018年1月30日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

判断のスピードと質は、「これ」で決まる

究極の問題解決力が身につく瞬発思考
(画像=baranq/Shutterstock.com)

まずはこの「瞬発思考」のメカニズムを、思考以外の切り口で説明していきます。

どんな仕事でも、物事を完成させるためには「作業」を行ないます。

たとえば、1つのレポートを完成させるために、テーマを決める、レイアウトを構成する、文章を作成する、写真を貼り付ける、校正する、などの作業を行ないますが、これら1つ1つがまさしく「作業」です。

そして、その作業をすばやく適切に行なうためには、「どんな内容」を「どの順番」で行なうかという「手順」がとても重要になります。

この順番を間違えると、当然望ましい結果は生まれません。

具体的に、「モノ作り」の場合で考えてみましょう。

モノ作りには、

1.仕入→2.加工→3.組立→4.検査→5.完成といった、完成までに行なう決まった工程、手順があります。

すべてに決まった手順が存在するので、その製品についてまったく知識がない素人でも、パートやアルバイトとして突然その一端を任されても、スピーディかつ高品質に、製品を完成させることができるのです。

もし、その工程がなくなってしまったら、完全に作業はストップしてしまいます。

これはアルバイトやパートに限った話ではありません。

正社員であっても、最初に作り方の手順がわからなければ、作業に取り掛かることさえできません。

モノ作りにおいては、作業手順を適切に把握できていないことで、多大な時間と労力のムダを生み、たとえ試行錯誤によって完成させたとしても、品質の低下を招いてしまうのです。

●「いい手順づくり」が「いい作業」の原点

では、「何をどの順番で行なうか」という「手順」が決まっていたらどうでしょうか。

何から着手し、次の手順は何か、何をどうすればよいか、などがすべて決まっているので、迷うことも、ムダな時間を費やすこともありません。負荷を最低限に抑えられるので、作業スピードが格段にあがります。

そして、作業内容が明確であれば、1つの作業に集中できるので、品質が格段に向上します。

モノ作りのように組織的に行なうものでなくても、私たちが個人で作ったり、組み立てたりする、小規模かつ単純な作業でも同じです。

たとえば、組み立て式の家具を買ったとき、付属の手引書に書かれている手順どおり組み立てれば、誰にでも簡単に家具を完成させることができます。

もし同じ家具を2個、3個と作っていったとしたら、手順を覚えてしまい、手引書を見ずに組み立てられるようになるでしょう。

そしてもっと慣れてきたら、より効率的に、スピーディに作業を進めることができるようになります。

料理でも同じです。料理をしたことがない人でも「レシピ」を見ながら料理をすれば、ある程度のクオリティの一品が完成します。

そして慣れてくれば、レシピを見ずに、よりスピーディに料理を完成させることができます。

料理経験のない人に、材料と調味料を用意して、レシピなしでいきなり、

「コロッケを作ってください」

とお願いしても、

「最初に何から手をつけるべきか?」
「いつ、何の具材を混ぜるのか?」
「味付けのタイミングや順序は?」
「衣の付け方は?」
「どのくらいの時間、何度の温度で揚げるのか?」

など、何もわからないから、悩んでしまって作業は進みません。

記憶だけを頼りに何とか形にはできたとしても、多くの場合、イメージどおりのおいしいコロッケにはならないでしょう。

以上のように、私たちの生活で起こるどんな作業でも、あらかじめ定めてある手順どおりに1つ1つ行なうから、一定の品質とスピードで完成させることができます。

そして手順を覚えて慣れてきたら、手引書やマニュアルを見なくても、スピーディに、高品質に完成させることができるようになるのです。

正しい答えを導き出すには、「正しい考え方」が不可欠

これまで、スピーディかつ高品質にモノを完成させるには、作業の「手順」を明確にすることが重要、ということをお話ししてきました。

実はこれというのは、「作業」だけでなく「思考」にも同じことがいえます。

つまり、問題をすばやく的確に解決する策を導くためには、手順を明確にし、その手順どおり思考することが必要なのです。

たとえば、上司から漠然と、

「考えが浅い!」
「もっと考えろ!」

と言われても、多くの人は具体的にどうしたらいいのかがわからず、思考停止に陥ってしまいます。

これは、ものの考え方、つまり「思考の手順」──まず何から考えて、次に何を考えたらいいのかがわからないから起きるのです。

世の中のほとんどの人が、この「思考にも手順がある」という事実を知りません。思考の手順を知らない中で、難解な問題にも取り組んでいるのです。

この状況は、工程を知らずにモノ作りをしようと試行錯誤していること、料理の素人がレシピなしに料理を作ることと、同じ状態です。

知らないから、うまくいかなかったり、解決できなかったりするのです。だから、仕事がうまくいかなくても、問題を抱えたまま悩みつづけてしまっても当然であって、今の段階では心配することはありません。

問題を解決するための思考にも手順があり、その手順どおりに思考すれば、誰でも解決策まで簡単に辿り着ける。

この「思考の手順」を徹底的に効率化・実用化したものが、この「瞬発思考」です。

この瞬発思考法で思考することで、問題解決力を極限まで高めることができるのです。

究極の問題解決力が身につく瞬発思考
寺嶋直史(てらじま・なおし)
事業再生コンサルタント。中小企業診断士。大手総合電機メーカーに15年在籍し、部門で社長賞等多数の業績賞獲得に貢献、個人では幹部候補にも抜擢される。2010年に事業再生コンサルティング会社の(株)レヴィング・パートナーを立ち上げ、代表取締役に就任。その他、1年で一流の経営コンサルタントを育成する「経営コンサルタント養成塾」の塾長。著書に『事業デューデリジェンスの実務入門』(中央経済社)等がある。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます