(本記事は、寺嶋直史氏の著書『究極の問題解決力が身につく瞬発思考』文響社、2018年1月30日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

長い年月でしみついた「思考のクセ」にご用心

究極の問題解決力が身につく瞬発思考
(画像=dotshock/Shutterstock.com)

●5つの思考タイプ

1.思考不足タイプ……思考不足・思考停止、言われたことだけやる
2.思い込みタイプ……早とちり、経験頼り
3.判断依存タイプ……ルール依存、上司依存
4.評論家タイプ………知識豊富、議論好きで机上論先行
5.問題解決タイプ……結論提案、現場を動かす

本書で目指すのは言うまでもなく5の問題解決タイプですが、これらのタイプは、皆さんが長年かけて身につけた「思考のクセ」。

ただ何となく「考えよう」とすると、ついクセどおりに思考してしまいます。そのため、タイプ5の問題解決タイプ以外の思考のクセがついてしまっている人が「瞬発思考」を身につけるためには、

・自分がどの思考のタイプなのかを知る
・その思考のクセにとらわれずに、問題解決力を磨く

という、ある程度のトレーニングが必要になるのです。

●思考のクセにご用心

そこでこれからは、それぞれの思考タイプの特徴をご紹介しますので、まずは自分がどのタイプなのかを理解しましょう。

その特徴を知ったうえで「問題解決の手順」の思考をトレーニングすることで、5の問題解決タイプの思考のクセを効率よく身につけることができます。

タイプ1:思考不足タイプ

特徴:基本的に自分で物事を考えないタイプで、「言われたことだけをやればいい」という思考の持ち主です。

会議などでは自分の意見を発言することはなく、ただ聞いているだけ、という傍観者となる場合が多くあります。

そもそも「自分で考えよう」という気持ちが不足しているので、議論の内容を理解していない場合も多く、「理解しよう」という意識も不十分です。

また、話の中身より「言葉」自体に反応してしまう傾向があります。「自身に与えられた仕事だけしかしたくない」「給与が少ないから今以上の仕事はしたくない」と考える傾向にあり、仕事に対してモチベーションの低い人に多く見られるタイプです。

改善方法:思考不足タイプの人は、「自分で考える」「自分の意見を持つ」ということを日常的に行なっていないため、まずは、自分で考え、自分の意見を持つことの大切さを認識することから始める必要があります。

そのうえで、手順どおり、1つ1つ思考していくようにしてください。

・タイプ2:思い込みタイプ

特徴:決断が早い反面、少しの情報で、自分の過去の経験から結論を導き出そうとするので、短絡的で浅い思考になりがちです。

思考が過去の自分の経験の範囲内に限定され、主観的になりがち、というのも課題です。思考範囲が狭いので、物事の全体を捉えることが苦手で、自分がわかるところにだけに反応します。

また、原因と結果の因果関係がないまま物事を決めつけやすいため、ピントがずれることもしばしばです。

思ったことをそのまま発言したり、先走って発言することも多く、行動力のある体育会系の人に多く見られます。また、プライドが高く、頑固な人も多いタイプです。

改善方法:このタイプの人はまず、視野を広げて物事を捉えるようにしなければなりません。そのためには、思考の軸を変えていくことが必要です。

つまり、「自分の軸で(=自身の知識と経験に当てはめて)考えるのをやめ、相手軸で、相手の立場に立って考える」ように心がけることです。

また、1つの情報からすぐに結論を出すのではなく、多方面の様々な情報をしっかり把握するように努めましょう。

タイプ3:判断依存タイプ

特徴:ルール、基準、方針、また上司の指示などにしたがい、忠実に実行することが思考と行動のベースに「自分だけが正しい」と思っているタイプなので、一定のルールに沿って仕事を行なうことを得意としています。

ルールや権威者の言うことをそのまま自分の意見として受け入れることも特徴です。

このタイプの人は、得てして「何を言うか」より「誰が言うか」を優先しがちで、臨機応変さに欠けるところがあります。

事務的・官僚的で、細かいチェックや、難易度の高い事務作業なども得意とするため、とくに役割やルールが明確で縦割りの組織体制が確立している大企業や自治体に勤めている人に多く見られます。

政治家にもこのタイプが見られますが、これは、現場の状況ではなく、憲法や法律を軸に議論をしていることが要因です。

改善方法:「ルールどおり行なう」「言われたことを忠実に行なう」という思考から、「自分で考え、自分で判断し、自分で決断する」という思考に切り替えるためには、思考の出発点を変えることが必須です。

思考の出発点が「ルール」や「上司の指示」になっている限り、「それに沿っているか、外れていないか」をチェックするような思考になってしまいます。

そうではなく、思考の出発点を現場の状況、つまり「現状」に置くようにするのです。

また、「ルールどおり、上司の指示どおり実行することが正しい」という価値観から脱却し、「相手に最適な解決策を導き出して、実行することが正しい」という意識を持つことが大切です。

タイプ4:評論家タイプ

改善方法:豊富な知識を持ち、議論好きで論理的に議論を繰り広げます。客観的で冷静であり、周囲の気づかない問題に気づき、指摘することも得意です。

一見「デキる人」に見られますが、一方で、自己主張することや相手を論破することに自己満足し、指摘中心・議論中心の傾向に陥りがちです。

また細かいところを掘り下げることが得意なこともあって、思考がミクロになる傾向があります。

その分、ゴール・イメージを描いたり、全体を捉えて優先順位や、物事のポイントを見極めるのは不得手なので、「周囲を巻き込んで現場を動かす」というリーダー的立場での仕事は苦手なタイプです。

このタイプは、大企業の社員や各種専門家、士業、大学教授や研修講師などの先生業に多く見られます。

内容が専門的になるほど、この思考タイプに陥りやすくなります。

改善方法:このタイプの人で多いのは、「自身の持っている知識から結論を導き出す」という思考です。

つまり、「相手に最適な解決策を構築する」という思考ではなく、「自身の豊富な知識から相手に当てはまりそうな解決策を検索する」という思考になりがちなのです。

また、元々机上で学んだ知識が豊富である分、提案内容も机上論になりがちです。問題点の原因の掘り下げが不十分な中で改善案を提示するので、ミスリードにつながりやすいのも問題ですね。

そこでまずは、「自身の知識を相手に当てはめる」という思考法から脱却し、「解決策提示の前に原因を掘り下げる」「相手に最適になるよう加工して解を導き出す」という意識を持つこと。

そこから、的確な問題解決法を提示できるようになっていきます。

タイプ5:問題解決タイプ

特徴:目指すのはこのタイプです。頭の回転が速く、正確な情報を迅速に収集し、最適な解決策を、最短で導き出します。

常に現場を動かすことに重点を置くため、ポイントを押さえ、優先順位を決めて取り組みます。

合理的に導き出した改善策であるため、効果的で、無理なく効率的に物事を進められます。

さて、あなたはどのタイプでしたか?

「自分がどのタイプかを知る」ことが、「問題解決タイプ」になるための第一歩。

そこから、日々の生活の中で「瞬発思考」を心がけ、5の問題解決タイプを目指していきましょう。

究極の問題解決力が身につく瞬発思考
寺嶋直史(てらじま・なおし)
事業再生コンサルタント。中小企業診断士。大手総合電機メーカーに15年在籍し、部門で社長賞等多数の業績賞獲得に貢献、個人では幹部候補にも抜擢される。2010年に事業再生コンサルティング会社の(株)レヴィング・パートナーを立ち上げ、代表取締役に就任。その他、1年で一流の経営コンサルタントを育成する「経営コンサルタント養成塾」の塾長。著書に『事業デューデリジェンスの実務入門』(中央経済社)等がある。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます