(本記事は、安藤新之助氏の著書『NOをYESに変える「不動産投資」最強融資術』ぱる出版、2018年8月31日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

駆け引きなしで金利を有利にするシンプルな方法

不動産投資」最強融資術
(画像=only_kim/Shutterstock.com)

借手の立場として、金利は少しでも低い方がいい、貸手の立場として金利は少しでも高い方がいい。

ここでお互いの気持ちは相反します。

しかし必ず、この条件問題をクリアしなければなりません。

では、どうしたらスムーズに話が進むようになるのか…

金利は短プラ(短期プライムレート)、TIBOR(タイボー)などを基準にし、金融機関ごとに条件を設定しています。

金利相場は、同じ商圏内で活動している投資家、不動産業者から、どのくらいのレートで借りた実績があるか教えてもらうのが一番確実です。

たとえば、「○○銀行で先日決済した際は金利が1.3%だった」「〇〇信用金庫では1.25%だった」など、実例を入手してください。

それをもってシミュレーションし、金融機関に持ち込みます。

金融機関は、そのレートがどこからきているのか根拠を知りたいわけで、その情報元をきちんと答えられなければいけません。

そのレートが自分に合致するとは限りませんが、根拠として必要です。

ただ単に、キャッシュフローを上げたいがために、法外に低いレートを提示すれば「お行儀の悪い投資家」とレッテルを張られてしまいますので、注意が必要です。

根拠を持った金利レートをもとに数件の金融機関を回れば、金利の相場観をつかむことができます。

金利レートの話題になった際、自身の提示したレートが低ければ、「ちょっとうちではこのレートは厳しい…」となりますし、無理ないレートであれば「だいたいこのレートであれば土俵に上がる」となります。

高いレートであれば「うちはもう少し頑張れます」などと結構、正直に答えてくれます。

ここでのポイントは他の金融機関にも話を持ち掛けている話をし、ライバル意識を持ってもらう事。持ってもらわないと、真意を話してくれない可能性があるからです。

もう1つのポイントは、無理に自分の条件を言わない事です。

目的は融資の内諾を獲得することです。

自身の実績もあり、その金融機関との取引実績があれば、多少のリクエストをしても大丈夫ですが、関係実績も乏しい間柄であれば、貸手の条件を素直に取り入れる事が大切です。

そして、何行か内諾が出てきた段階になったら、そこで初めて競ってもらう。この流れがベストです。

ただし、駆け引きを駆使してダンピング合戦に持ち込むことは、あまりおススメしません。

調子にのると後の関係に影響がでますので気を付けましょう。

担当者の腕次第で融資の可否が決まることも多い

私が愛知県内にある地方銀行Sで融資をことごとく断られ、隣県の同銀行の支店で融資獲得に成功した事例です。

愛知県内にある地方銀行Sの支店すべてを紹介訪問しました。

ところが見事に完敗。

ある投資家さんに紹介を受けて訪問したのですが、支店担当者には断られるだけでなく、説教まで受けました。「サラリーマンが不動産に手を出すのは間違っている」と…電話で30分間延々とです。

そんな流れでも懲りずに再チャレンジするも、最後に担当者は怒り出す次第です。

私が悪いことをしているのか…そう思いたくなるほど、話が全く進まず冷たくあたられるばかりでした。

そんな中、また別の案件が出て、別の投資家さんの紹介で地方銀行Sを紹介してくれました。

その紹介されたS銀行は隣県の静岡県の浜松にある支店です。

その浜松支店の担当者は、不動産の融資に精通しているという情報だけが頼り。

私の中では、「またいつもの流れで、断られるんだろうな~」

そんなネガティブな思いを持ちながら、一時間半かけてダメもとでS銀行の浜松支店を訪れました。

断られることになれていた私はとてもリラックスしていて、「とりあえず、全力でプレゼンだけはしていこう」そんな感じでした。

そこで、現れたのが融資役席のK氏。

とても紳士的でフレンドリーで、不動産のことより、サラリーマンの仕事の内容や私生活の話題で盛り上がりました。

K氏:安藤さんの仕事はハウスメーカーなんですね。営業ですか?
私:いえ、営業ではなくアフターサービスです。
K氏:営業だとノルマがきついし歩合の変動もあるから転職が多いんですよね。アフターならいいですね。休みの日はどんな風にすごしているんですか?
私:私の趣味はアウトドアです。キャンプやバーベキューが好きですね。
K氏:そうなんですね。ご家族仲が良さそうでいいですね。物件の資料も拝見しましたが、なかなか良さそうなので話を進めますね。

物件は愛知県のK市、築17年RC、利回り9.5%で土地も広く、積算評価を満たしている案件でした。

ところが、その案件で買付が入り、一週間後に契約になるとの連絡が不動産業者から入り、話が白紙に。

私は仕方なく、融資役席のK氏にTELしました。

私:すみません、ご相談しましたK市の案件ですが、ほかで決まってしまいました。
K氏:そうなんですね…いい案件だったのにね。
私:申し訳ありません、また案件がありましたらお願い致します。

そして2ヵ月後、前回よりも条件の良い案件が入手できました。

今回は、他の金融機関にもっていかずS銀行の浜松支店に託しました。

その案件は愛知県のN市にある築17年RC、表面利回り10.5%、物件価格5600万の案件。融資申し込み額は5320万。

「フルローンを通すのは本部が承認しない」と言われていたので自己資金5%で依頼しました。

K氏:これなかなかいいね!早速とりかかりますよ。相談だけど、5300万でいい?
私:大丈夫です!今回は物件を一番手で確保していますのでぜひ!

その後、何度かK氏からTELが入りますがお断りの連絡でなく、追加資料の請求や内容確認話のみ。それから、数週間後、融資役席K氏からTEL、夕方5時ごろです。

K氏:安藤さん預貯金の通帳の写しをお願いできますか?
私:承知しました。帰宅したら至急用意してFAXするようにします。

その後、2時間後の19時頃に再度TELがはいります。

K氏:先ほどの融資の件ですが…
私:はい…(超緊張)
K氏:明日には必ず通帳の写しを用意するからいいだろ!って本部にいって内諾とっちゃいました。5300万の内諾です。
私:え?本当ですか? ありがとうございます!

「早く帰ろう」と会社の駐車場で車に乗り込もうとしていた時の出来事。

私は突然の吉報に驚きを隠せませんでした。

通常なら各担当者は、融資を通すべく資料の作成、エビデンスの収集に奔走するのですが、本部に強気な態度で出られる担当者は初めてでした。

後に知るのですが、融資役席K氏は行内で「ローンのスペシャリスト」と言われて一目置かれている方でした。

その後、3棟目、4棟目を購入する際にも同様で、共通しているのは「不動産に詳しい」「支店内・本部から信頼を置かれている」担当者でした。

融資審査は支店と本部との折衝がカギをにぎります。

担当者が本部を口説けないと、良い案件も流れてしまいます。

担当者の腕次第で融資の可否が決まってしまうことが、融資獲得の世界では往々にしてあるのです。

したがって、ガッツがあって、支店・本部に信頼されている担当者に巡り合えれば二歩も三歩も融資獲得に前進します。

同じ銀行でも支店、担当者で融資姿勢はまったく異なる

私はある地方銀行AのK支店で「サラリーマンに対してのアパートローンの限度枠は1億円までで、自己資金も1割~2割必要」と言われました。

その時の案件は断念。

ところが同じ地方銀行AのO支店では「アパートローンは1億までですが、別途考慮します」と回答をもらい、1億1000万円のフルローンを獲得しました。

私はもし、同一金融機関で横並びの審査基準であったら、不動産投資家として活動していなかったかもしれません。

断られ続けても、諦めずに果敢に銀行開拓していた当時の自分を、素直に褒めてやりたいと思います。

必ず、融資を獲得できる金融機関があるはず!

それだけを信じていました。

当時、私は念願のマイホームを建てたばかりで、借入れが2600万円あり、成功している投資家の方々からも「マイホームを買ったらその分債務超過になるので、融資を引くのはかなり厳しいよ」と言われてました。

それがネックで不動産投資融資に積極的だと言われていたオリックス信託銀行(現在オリックス銀行)、三井住友銀行からも、融資を獲得することができなくて、さらに2007年12月を期に融資引き締めにより基準が厳しくなり、他行も追従していきました。

言わば四面楚歌の状態でした。

でも、頑張った甲斐あって、とある地方銀行の渉外役席の方を紹介していただくご縁があって、その方に色々と質問してみました。

私:御行は中古のアパート・マンションに融資を行っていますでしょうか?
渉外役席:はい、諸条件はありますが行っています。
私:サラリーマンの資産運用でも大丈夫でしょうか?
渉外役席:安定した収入があれば大丈夫です。
私:でも、マイホームを建ててしまっていたらやはり融資は厳しいですよね?
渉外役席:それは特に関係ありませんよ。資産状況の調査確認はしますが、そのマイホームの住宅ローンを払っていける安定収入(サラリー)、返済余力があれば大丈夫です。
私:本当ですか?!
渉外役席:物件は物件できちんと収支が合えば大丈夫です。ただし、1億円までで自己資金が1割程必要です。

不動産投資に絶望感を抱いていた私は、希望の光を見たのを今も覚えています。

その後、たまたま、その時紹介してもらった案件がT市1億2000万円の物件。

地方銀行Aの条件に程遠かったので頭から外れていました。

指値が成功して1億1000万になったのですが、融資が厳しくなったご時世でしたのでどこの銀行でも頭金3割は必要と言われ、そうなると諸費用を含めて4000万は必要。

自己資金が1000万しかなかった私にはとうてい無理でした。

そんな中、追い込まれた私は、ダメもとでA銀行のO支店に電話を入れてアポを取りつけました。

対応してくれたのは、渉外役席のM氏でした。

物件概要資料と自分の作成したプレゼン資料を持参。その内容をみて、

M氏:諸費用分の700万は自己資金でまかなわれるんですね~。
私:はい。
M氏:物件と諸費用全部融資でまかなおうとしている人が多い中、諸費用を自己資金出されるなんてしっかりされていますね。
私:ありがとうございます!!

私の中で、アパートローンは1億までというガイドラインが気になっていました。

ところが、結果はアパートローン1億、プロパー1000万、合計1億1000万のフルローンの融資がつきました。

渉外役席のM氏が本来の基本である「アパートローンは1億まで」という枠を超えて別枠で1000万を加えてくれるようアレンジし、本部から承認を取ってくれたのです。

私はこの時、初めて支店、担当者が変われば考え方が違い、融資結果が違ってくることを知りましました。

その後、いろいろな金融機関と取引、お付き合いをしていますが、やはり支店長、担当者が不動産に得意か慎重かで結果が左右されます。

もし、その金融機関の支店で見込みがなければ、あえて別の銀行にしなくても同一銀行の別支店にアタックしてみるのも戦略の1つです。

NOをYESに変える「不動産投資」最強融資術
安藤新之助(あんどう・しんのすけ)
不動産投資家、株式会社サクセスアーキテクト代表取締役、国内最大の不動産投資サイト「楽待」著名コラムニスト、ゆとり生活形成塾代表。高校卒業後、建築現場の左官職人、IT関連メーカーを経て、業界最大手積水ハウスに約12年間勤務。2015年にセミリタイア。建設業界20年、不動産投資10年、不動産業界を一気通貫した業界唯一の実践不動産投資家。セミナー、講演の実績多数。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます