(本記事は、小山竜央氏の著書『パブリック・スピーキング 最強の教科書』KADOKAWA、2018年月8日22刊の中から一部を抜粋・編集しています)
メルカリが後発でも成功できた理由
お客様目線で考えるとすると、コンテンツは自分で作ってはいけない。
「えっ、じゃあ、どうしたらいいの?」と思うかもしれませんが、冷静に考えてみてください。
あなたができること、やってきたことは大概、すでに他の人もやっているはずです。
おそらく、その分野で実績のある人が何人もいることでしょう。
だから、ここから先は市場を見なければならないのです。
仮にあなたがコンサルティングをテーマとしてコンテンツを考えていたとします。当然、市場にはコンサルティング業界の人たちが、似たようなビジネスを展開しているはずです。
先にビジネスを始めている人たちが一体どんなことをしているのか、コンサルティングというテーマでお金は稼げるのか──。
あなたはまず、徹底的に市場をリサーチしなければなりません。
さて、十分リサーチをしたら、次にすでに同じようなことをやっている人、自分のライバルに対して「TTP(Tettei Tekini Pakuru)」をしましょう。すなわち「徹底的にパクれ」です。
なぜこれをやるのかというと、ゼロから形を作るというのは非常に大変だからです。大変なわりに、やってもうまくいかないことがほとんどですから、無駄な作業です。
それよりも、すでにやっている人のコンテンツの中身を徹底的に真似するべきでしょう。
ただ、そのまま真似るだけではあなた独自のコンテンツは完成しません。優れたビジネスとは、そこから「磨く」ことが必要となります。
とはいえ、「磨く」というのは一体どういうことなのか、そこがピンときていない人も多いと思います。
実例として、「メルカリ」というサービスで説明しましょう。
ご存じのように、メルカリはネットで中古品を売買するビジネスです。要するに、ネット上でフリーマーケットを作ったのです。
しかし、この形式のビジネスモデルとしては後発で、すでに「ヤフオク」など大手の中古売買サイトが数社存在していました。
そのなかで、当時のメルカリは、先行する「ヤフオク」とそっくりなサービスがまたできたな、そんな印象でした。
けれども、メルカリは似ているように見えて、大手ではできなかった課題を解決できるサービスを磨き上げました。
その結果、登録が面倒なのはイヤ、送料の設定で悩みたくない……といったニーズに応えた、個人がより簡単気軽に利用できる中古売買サービスとして、市場で圧倒的なユーザーを持っていたライバルとは別の発展を遂げたのです。
メルカリの例でわかるのは、すでに強力なライバルが存在する市場でも、アプローチ次第で十分成功できるということです。
ライバルが多数いるというのは、そこにニーズがあるからとも言えます。
既存のコンテンツ、サービスに飽き足らないお客様が流れてくる可能性があり、ある意味で、あとから参入してもヒットさせやすい市場でもあります。
このように、「TTP」から「磨く」というのは、極めて成功率の高いビジネスモデルなのです。
個人のビジネスのみならず、メルカリのように近年台頭してきた注目企業の多くもこの戦略を取っていることからも、初心者が失敗しにくい優れた手法だと言えます。
売れるコンテンツが当てはまる7つのモデル
それではいよいよ、皆さんが「TTP」でビジネスコンテンツを作り、それを「磨く」やり方を具体的に説明していきましょう。
まずは売れるコンテンツの前提を考えていきましょう。
そこからどういった形に磨きをかければいいのか、徹底的にリサーチして考えていきます。
ここでは、代表的な売れるコンテンツのモデルを7つ紹介します。これらのどれかに当てはまるビジネスが、成功する可能性が高いと言えます。
1.悩みが深い
→肥満、薄毛、失恋、アンチエイジングなど
悩みや問題が深いほど、人は多くのお金を払ってでも解決したくなります。
たとえば、パーソナルトレーニングサービスの「ライザップ」は人によっては数百万円、安くても何十万円と支払うビジネスですが、単なるトレーニングジムではなく、通い続けることで確実に肥満という問題が解決する点で人気を集めています。
2.達成願望が強い
→お金、快楽、美容、モテなど
自分がぜひ達成したい、これによって優越感を味わえるといったサービスは、多くの人が習いたい、受けてみたいと思うものです。
そのため、価値が高いビジネスとして展開できます。
3.金額を上げられる
→富裕層向けビジネス
最初から対象者をお金を持っている層に絞っておけば、ヒットする前提ができます。
「私はこういった人しかお客様にしません」と宣言しておくのもいいでしょう。
4.シンプルにする
既存の商品よりもサービスや機能をシンプルにすれば、それだけで売れるコンテンツになります。
わかりやすい例としては、iPhoneがあります。
高機能のスマホは、ともすれば難しいというイメージになりがちです。その点、iPhoneはボタン1つで使えるサービスを進化させることで、世界的なヒットにつなげているのです。
5.ネットではできない
今の時代、ネットだけでは問題が解決できないサービスは、より大きな価値を持ちます。
最近、オンラインサロンが注目されていますが、人と人とのつながり、コミュニティなどは今後さらに求められる傾向にあるでしょう。
6.払った価値以上を提供できる
人は自分が払った金額以上のリターンが得られると思えば、お金を払いたくなるものです。
極端なことを言えば、仮に「私に今すぐ、100万円をください。1週間後に必ず倍にしてみせます」と言えば、どんなことをしてでも100万円用意するはずです。
そこまで大きな違いではなくても、要するに「もとが取れる」と思わせられれば、あなたのビジネスへの関心は高まります。
7.成果が出やすい、わかりやすい
全般的に、すぐに変化を感じやすいサービスや商品は、ヒットしやすいと言えます。
便利になる、お金・時間が増やせる、きれいになる……など、お客様の悩みや問題に対して、即効果が感じられるサービスが提供できるのであれば、それだけで注目度は高まるでしょう。
ひと目でわかる自分だけの「USP」を打ち出そう
すべてがそうとは言い切れませんが、今紹介した7つのモデルパターンのどれか、もしくは複数を含んだビジネスモデルであれば、あなたのコンテンツは成功する前提ができていると言えます。
ただし、ここから徹底的に解決策をブラッシュアップして、「磨き上げ」なければいけません。売れそうなコンテンツにはすでに大勢のライバルがいるはずです。
これらのライバルのなかで差をつけて、自分を知ってもらう必要があります。
そのために必要なのが、自分だけの「USP」を持つことです。
USPとは「Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)」の略で、自分だけが持っている独自性、ウリを意味します。
まずは、これを持つということを念頭に置いてください。
ただ、USPさえあれば自然と注目されるかというと、それだけでは不十分です。
なぜなら、お客様は「一瞬で」ウリがわからないと、その商品やサービスを購入しないからです。
世界中を見ても業界でトップを走る企業は、自社のウリをひと目でわかるようなキャッチフレーズにしています。
たとえばドミノ・ピザは、ピザの味だけではなく、1960年、アメリカでの創業時に「30分を超えたら50セント引き」と宅配システムの素早さをアピールすることで、圧倒的な支持を得ました。
ピザはシーズンによっても需要が変わり、特にオリンピックやワールドカップ開催時などには注文が殺到します。
そのとき、「今は混んでいるから、2時間待ちになります」と言われるのでは、注文する気にならないでしょう。
30分以内に熱々のピザが届くのであれば、ここで買おう──、そう思わせるから、ドミノ・ピザは世界中で支持されるのです。
同じようなキャッチフレーズは、国際航空便会社のFedExも使っています。
「世界中どこでも翌々日までに届く」という他が真似できないウリを示すことによって、料金が高くても企業の信頼を得ているのです。
ただ、FedExが本来のサービスそのものの優位性でアピールしているのに対し、ドミノ・ピザはピザそのものよりも付加価値でUSPを持っている点で、皆さんのビジネスにも非常に参考になると思います。USPとは、コンテンツそのものの価値だけではないことを覚えておいてください。
USPとは「お客様との究極の約束」である
では、一瞬でわかるような「独自のウリ」をあなたが持っているとして、果たしてそれで本当にお客様を集められるのでしょうか。
実はまだ、これだけでは弱いです。
たとえば、あなたがコンサルタントだとして、あなたにしかないウリが「1分間で餃子を20個食べられる」ことだったとしたら?
確かに他が真似できない独自性かもしれませんが、あなたが餃子を何個食べられようが、お客様にとっては関心がないことですよね。
ここで重要なポイントは、USPとは「お客様との究極の約束」である、ということです。
すなわち、お客様がそれを欲しい状態になっていなければ、どんなに優れたUSPでも意味がないのです。
これについては、友人の起業家プロデューサー・星渉さんによる教えがわかりやすいので、紹介しましょう。
星さんは「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」をビジネスコンセプトとし、これまでに数多くの成功者を生み出しています。
ゼロの状態から起業した経営者の月商を6ヵ月以内に100万円以上に到達させる成功確率が、日本でナンバーワンの91.3%という、驚異的なノウハウを持っている人です。
彼がプロデュースした個人起業家のなかには、特に資格を持っていたり、卓越したスキルがあるわけではない人もいます。
にもかかわらず、そうした個人の起業家たちが確実に実績を出せる秘訣は、星さんが「お客様の望む状態、理想の状態」を打ち出したUSPを作ることを教えているからです。
たとえば料理教室で「私の教室に通えば、料理がうまくなります」といくらアピールしても、たいして集客できません。
「○○を教えられます」という自分目線でのアプローチではなく、お客様の本当の問題に目を向け、そこにフォーカスしたUSPを作ることで、集客はガラリと変わってくるのです。
星さんの教え子で、現在は「スイーツプロフェッサー」として活躍している川路さとみさんの場合は、フランスのサロン・デュ・ショコラ5つ星のお店で修業するなど日本トップクラスの実力を持ちながら、最初に教室を開いたときは生徒がゼロという状態でした。
そこで星さんのアドバイスを受け、「お菓子作りを本格的に学んでみたいけど、専門学校に入ったり、フランス留学までする時間もお金もない」「普通のお菓子教室では物足りない」という人のために、日本の千葉県で本場フランスのサロン・デュ・ショコラ5つ星のテクニックを学べる、「お菓子マニアの短期留学」というUSPを打ち出したところ、4ヵ月で月商が100万円以上になったそうです。
このように、あなたが持つべき独自性というのは、コンテンツや教えられるノウハウそのものではなく、お客様が欲しい状態、困っている問題を解決した状態であるべきです。それを一言で表せれば、一気にあなたのビジネスの認知度は増すでしょう。