ビットコインはバブル? そのリスクは?

ビットコイン,田口仁
(画像=The 21 online)

最近話題の「ビットコイン」を始めとする仮想通貨。投資先として魅力的に映る一方、不正流出事件などもあり「本当に大丈夫なのか?」と懸念する人も多いだろう。そこで本企画では「誰もが気になる仮想通貨についての素朴な疑問」を、実際に取引所を運営するDMMビットコインの田口仁社長に直接、聞いてみることにした。

Q1「仮想通貨」とは、そもそもなんですか?

簡単に言えば、「暗号化されたデジタル通貨」であり、「特定の国家による保証を持たない通貨」です。国が価値を担保する「法定通貨」とは違って、紙幣などの形で実体があるわけではありません。とはいえ、交換や決済、送金といった法定通貨でできるほぼすべてのことができ、法定通貨と交換もできます。

こうしたデジタル通貨はかつて、セキュリティ上の問題がありましたが、「ブロックチェーン」を始めとした技術の進化により、偽造や盗難などのリスクが大幅に減ったことも、仮想通貨が注目されている一因です。

Q2 実体のない通貨がなぜ、これほど人気なのでしょうか。

それはやはり、仮想通貨が近い将来「通貨になり得る」と多くの人が思っているからでしょう。実体のないものが通貨になるのか、と考えるかもしれませんが、そもそも現在の法定通貨そのものが、すでに実体のない「共同幻想」のようなものです。

通貨の歴史を紐解けば、かつては金や貴金属など誰もが価値を認めるものが通貨になった時代があり、その後「金本位制」という、その国家が持っている金の量に見合うだけの紙幣を発行できる仕組みになりました。

しかし、約50年前に金本位制は崩壊し、通貨はその価値の裏付けを失いました。それでも通貨が価値を持つのは、それが実際に利用されており、商品やサービスなどと交換できるからに他なりません。つまり、仮想通貨も実際に利用され、商品やサービスと交換できるようになれば、それが実体となり価値を持つようになるのです。

Q3 仮想通貨は本当に広まる? 価値がゼロになるリスクは?

もちろん、リスクはゼロではありません。ですが、仮想通貨が使える場所はどんどん増えています。ビットコインのみで販売する高級車が現われるなどの動きも出てきています。

この動きがさらに進み、より深く実体経済とつながっていく。たとえば金やダイヤモンドといった貴金属、あるいは不動産などの取引に使えるとなれば、一気に潮目は変わるでしょう。

こうした仮想通貨への本格的なシフトは、早ければこの2年、遅くとも5年で起こるのではないかと見ています。

Q4 ビットコインの価格が乱高下する理由は?

「新しい通貨が生まれようとしている」と考えると説明がつきます。そもそも現行の通貨システムは、長い時間をかけて整えられてきました。たとえばこの50年間で日本円と米ドルの関係は、1ドル360円が、一時は1ドル80円を切るまでになった。ドル円の交換価値が4分の1以下に変動したわけです。

仮想通貨はその歴史をわずかな時間で再現している。そのため、変動が激しいのだと考えることもできます。

Q5 ビットコインの価格はバブルというのは本当?

1ビットコインの価格は、数年前は5万円ほどだったものが、一時は100万円を超えるなど、一気に20倍に。ビットコイン全体の時価総額は約20兆円に達しています。これは日本のGDPの3~4%に当たります。

ですが、「日本のGDPの3~4%に過ぎない」とも言えます。全世界の経済取引の5%くらいが仮想通貨に置き換わると考えれば、仮想通貨の時価総額は日本一国のGDPである500~600兆円くらいになってもおかしくない。1ビットコインが将来的には1000万~2000万円になると予想する人は、こうした未来を見据えているのです。

また、「ビットコインは投資ではなく投機だ」という話もよく聞きますが、ビットコインの将来性を見越して長期で持つことを選ぶ人にとっては投資であり、相場の乱高下を利用して利ザヤを稼ごうと思う人にとっては投機。これは株式でも不動産投資でも同じことですよね。

Q6 投資の初心者がビットコインに手を出しても大丈夫?

大丈夫ですが、仮想通貨はその特性上変動が激しいので、初心者の方がいきなりビットコインだけにすべての資金をつぎ込むことはお勧めできません。

一般に投資のリスクヘッジのためには「分散」が重要とされますが、これは仮想通貨取引でも同じです。一つはアセットの分散、つまり株式や不動産などポートフォリオの一部としてビットコインを組み込む。その点、DMMはグループとして証券やFXを持っており、同一のシステムでポートフォリオを組めるというメリットがあります。

あるいは時期の分散。「ドルコスト平均法」などを用いて、価格が高いときには少なく買い、価格が安くなったら多く買うといった方法を取れば、リスクヘッジをすることが可能です。

Q7「ビットコイン」以外の仮想通貨とは?

現在、世界には1000を超す仮想通貨があると言われています。圧倒的なシェアを持つビットコインに対し、代替(アルターナティブ)のコインということで、「アルトコイン」と総称されます。中でも有名なのは「イーサリアム」で、スマートコントラクトという技術を採用していることが特徴です。その他にも「ネム」や「リップル」など数々のアルトコインがあります。

ただ、中には信憑性の低いものも存在します。そこで我々は、アルトコインの中でも一定以上の取引額があり、かつ、マネーロンダリングなどの犯罪に使われていないと判断できるものだけを取り扱っています。

ただ、現物取引ができる(日本円で購入が可能)のはビットコインとイーサリアムの2種だけで、その他、5倍固定のレバレッジ取引ができるサービスにおいて取り扱っている全7種類の仮想通貨(通貨ペアとしては14種類)は、ビットコインとイーサリアムを介した取引となります。アルトコインを現物で購入・売却できる取引所もありますが、多くの場合、日本円での購入ないしはビットコインとの交換サービスとなっています。その意味でも、投資初心者の方はまず、ビットコインから購入してみるのがいいでしょう。

Q8 仮想通貨取引ならではのリスクとは?

基本的には他の投資商品と同じです。たとえば価格変動のリスク、流動性の問題、システム障害、セキュリティ。レバレッジ取引をする場合は、投資した元本以上の損失を被るリスクもあります。

ただ、仮想通貨の取引は歴史が浅いだけに、システムのリスクが相対的に高いのは事実です。たとえば銀行や証券会社のシステムは長年にわたって構築されてきたものなので、さすがに盤石です。それに比べFXなどの分野はまだ歴史が浅いぶん、システムにトラブルが生じる可能性が高い。仮想通貨も同様で、だからこそ、取引所を見極めることが重要になると言えます。

Q9 数多くある取引所は、どのような観点で選べばいい?

扱っている仮想通貨の量、手数料の安さ、処理スピードの速さなど、いろいろな判断基準があると思います。ただ、とくに一般の投資家の方にとってはやはり「安全性」が何よりも大事だと思いますし、我々が心がけているのもまさにそこです。

ここで知っておいていただきたいのは、「利便性と安全性は二律背反だ」ということです。

専門的な話になりますが、ビットコインを始めとする仮想通貨は「ブロックチェーン」という仕組みの上で動いています。一つの取引が正しいかどうかを、何人もの人(コンピュータ)がチェックするというシステムで、一般にはブロックチェーンが3サイクル経過し、不正なブロックではないと認証されたものは、その後も不正なブロックとみなされる可能性が低いとされ、これは三段階認証と呼ばれています。DMMビットコインでは安全性を重視し、六段階認証を取り入れています。

ただ、多くの人が正しいと判断するまで待てば、取引が成立するまでに時間がかかるのも事実です。それを嫌い、一回のブロックチェーンの更新サイクルのみで取引を成立させる取引所も存在しますが、当然、そのぶんリスクがあるわけです。

田口仁(たぐち・ひとし)DMM Bitcoin代表取締役
1972年生まれ。商事会社にてIT企画、経営企画部門を、戦略コンサルティング会社にて事業戦略策定、マーケティング企画、事業再生等の支援を行なう。その後、ITベンチャー企業の証券子会社においてネット証券事業の責任者を務める一方、新規事業領域への進出や、買収企業の経営と事業再構築を経験。DMMグループの金融事業領域の中核企業であるDMM.com証券の「DMM FX」サービスの立ち上げの際には、主要メンバーとしてサービスシステム構築から事業運営まで深く参画。こうした経緯から、DMM.com証券の兄弟会社として取り組みを進める仮想通貨交換業「DMM Bitcoin 」の代表取締役に就任し、会社をリードしている。《写真撮影:小林靖》(『The 21 online』2018年4月号より)

【関連記事 The 21 onlineより】
それでも揺るがぬブロックチェーンへの評価
野口悠紀雄の「ブロックチェーン」講義 第1回「ブロックチェーンとは何なのか」
野口悠紀雄の「ブロックチェーン」講義 第2回「2つのブロックチェーン」
野口悠紀雄の「ブロックチェーン」講義 第3回「DAO」は会社と仕事をどう変えるか?
「お金の悩み」をすべて自動で解決するサービスを