「高所得な職業のひとつである医師だからこそ、もっと資産運用を勉強すべき」という専門家の意見は、少し意外に思えるかも知れません。しかしお金の管理や資産運用の知識が乏しく支出に無頓着、或いは浪費が激しく老後の為の貯蓄もしていないなど、高所得がもたらす恩恵を十分に活かし切れていない人も少なくありません。

金融リテラシーの低さ・浪費癖・長期的視点の欠如など、油断すると誰もが陥りやすい生活苦の要因は所得とは無関係です。まずは、医師だからこそ注意したい資産管理・運用の落とし穴を認識し、自分が当てはまるようであれば“早期治療”が必要です。

ファイナンシャル・プランニングを始めるのが遅い

doctor
(写真=smolaw/Shutterstock.com)

雇用形態や専門分野、経験、勤務地などで差はあるものの、日本でも医師は高所得な職業です。しかしそこに至るまでの道のりは長く、多くの人々が20代前半には社会人として働き始めるのに対し、経済的な人生設計のスタートがどうしても遅くなりがちです。

一人前の医師として所得を得始めたら、学資ローンの返済、結婚、家庭、開業費など、出費の重なるイベントが続きます。スタートが遅い上に不規則な労働時間や多忙な業務に追われ、「経済的な人生設計をゆっくり立てている余裕などない」という人が多いでしょう。

金融リテラシーを向上させる時間がない

多くの人がファイナンシャル・プラニングを通して金融リテラシーを身につけますが、前述のように医師はそうした過程に費やす時間が容易にとれない職業です。「家計の支出を自分で確認している」という医師のほうが珍しいのではないでしょうか?

家計の現状を把握したり、長期的な資金計画を作ったりすることが大切と頭で理解していても、高所得ゆえに今すぐ経済面を見直す必要がなく、ついつい先延ばしになりがちです。

しかし自ら意識して金融リテラシーを向上させたり、資産運用について学ぶ機会を作ったりしない限り、いくら所得が増えても長期的な人生設計は立てられないでしょう。

所得は多いが出費も多い

医師=お金持ちという世間のイメージを壊さないように、「平均以上の生活水準を維持しなければ」とプレッシャーを感じている医師も少なくありません。高級車や高級住宅、高級リゾートでの休暇、私学に通う子どもの学費を含むプライベートな出費から、開業医であれば医療機器、備品、広告宣伝費、人件費などの必要経費まで、一般的な会社員より遥かに出費が多いのは医師の宿命かも知れません。

しかしいくら高所得でも湯水のごとくお金を使っていては、貯蓄どころか負債を抱えてしまいかねません。使うところは慎重に使い、節約すべきところは節約する。「投資の知識を身につけ、賢く資産を増やす」が資産運用の原則です。

フィナンシャル・アドバイザーを利用する

お金の管理や資産運用が苦手だと自覚している、あるいはもっと効率的にお金を増やしたいけれど、どうしても自分で学ぶ時間や自信がないという人は、フィナンシャル・アドバイザーなどお金の専門家に相談するのも一案です。

最大限の効果を期待するのならば、自分である程度の知識を身に付けながら専門家のアドバイスを受けるという方法が理想的です。

「医師は常に人々から頼られる立場にあるため、人に相談するのが苦手」との指摘もありますが、専門家のアドバイスによって資産が何倍、何十倍に増えるチャンスを得られるのであれば、相談料は非常に賢い投資と言えるのではないでしょうか。

賢く借りて賢く返済

上手に資産運用する上で、負債の整理も重要なカギを握っています。学資ローンや住宅ローン、自動車ローンなどの負債があるなら可能な限り早く完済する、或いは金利がより低いローンに乗り換えるといった「負債の見直し」を実行することで、思った以上にお金が節約できるでしょう。

開業資金として新たに借り入れを検討する場合も、金利が低く最も効率的な返済プランを立てられるローン会社を探す努力が、長期的な恩恵につながります。例えば500万円を年利2.30%、返済期間10年(ボーナス返済なし・元利均等)で借りた場合、返済総額は560万1,734円ですが、5年で完済すれば529万7,763円で済みます。年利が6%ではどうでしょうか。同じ条件でも支払総額は5年で579万9,804円、10年で666万1,171円と驚くほど差があります。

「医師は病気や怪我を治すのが専門だから、お金のことは苦手」と言わず、今日から「経済的な治療」にも挑戦してみてはいかがでしょうか。 (アレン琴子、英国在住のフリーライター / d.folio

【オススメ記事 d.folio】
アーリーリタイアメントを実現するための4つのTo Do
医院の承継を考えている歯科医師が準備しておくべき節税
不動産投資コンサルより資産運用コンサルがいい理由
不動産投資をするなら知っておきたい団信の落とし穴
「もしも」に備えた対策にマンション投資