世界同時株安
今週は世界的に株式市場が荒れています。先週ゴールデンウイークでお休みだった上海市場が、週明けに-4%で始まったことが世界のマーケットの地合いを決定づけたと思いますが、その背景にはエスカレートの様相を見せる米中貿易戦争への世界の投資家の不安があると思います。
米中貿易戦争は中国経済にとってはGDP成長率を押し下げる効果をもたらし、米国経済にはインフレを煽る効果をもたらします。どちらも株式市場にとって悪いです。
なぜ円高に?
このように世界の株式市場がギクシャクしはじめると投資家はリスク回避の姿勢を取ります。それは世界に投資していた資金を引き揚げることを意味します。
日本の投資家も世界に投資しているのでこれは「外国の資産を売り、お金を日本に戻す」ことになり、これは円高要因です。
今回、突然、円高になったのはそのような理由だと考えます。
米国は対立回避に動く
連日のニューヨーク市場の下落を見た米国政府は米中貿易戦争をエスカレートすることを思いとどまる素振りを見せ始めています。具体的には米国財務省が中国を為替操作国に認定しないということを繰り上げ発表しました。これは11月にアルゼンチンで行われる米中トップ会談に向けて米国側がムードを改善すべきだと考えていることの表れだと思います。
長期金利上昇は一服
もうひとつマーケットにとって良い材料としては米国10年債利回りが3.15%の水準まで下がってきたことです。株式市場が荒れているので(ここはいったん、債券に避難しておこう)という買いが債券に入り、債券価格が上昇したことがその理由です。
決算発表シーズンに突入
今週から米国は第3四半期決算発表シーズンに突入しています。米国の企業業績は好調であり今回の決算発表シーズンでも米国企業は高水準のEPS(一株当たり利益)成長率を記録すると予想されています。
センチメント的にも「陰の極」
これを書いている10月11日(木)引け後の時点でCBOEボラティリティー指数は24.98に達しています。これは投資家がかなり慌てていることを示唆しています。
またインベスターズ・ビジネス・デイリーの計算によるプット・コール・トレーディング・ボリュームも1.20という極端に悲観的な数値を示しており、過去にこのような水準になった場合は絶好の買い場でした。
投資戦略
現在、市場参加者は極端に悲観的になっているため今は買い場ではないかと考えています。マーケットはかなり鋭角的にこれまでの調整幅(-7.2%)の半値戻しを達成すると思います。
ただ相場は一本調子には出直りにくいもの。したがって、もう一度二番底を模索する展開があると思います。
ただ年末のニューヨーク市場は、いまよりは高い位置にあると思います。
広瀬 隆雄(ひろせ たかお)
コンテクスチュアル・インベストメンツLLC マネージング・ディレクター
1959年、広島県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。S.G.ウォーバーグ証券(現UBS証券)、ハンブレクト&クィスト証券(現J.P.モルガン証券)を経て現職。ブラジル、ロシア、インド、中国などの新興国市場に特化。
(提供=トウシル)
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