高齢の親の病気やけが、介護で保険金を請求するとき、保険の内容を確認する必要が生じる。親本人が手続きできるなら問題ないが、代理する家族が内容を知っているとは限らない。「保険会社に問い合わせをすれば契約内容を教えてくれる」と思うかもしれないが、それは間違いだ。

契約の内容を教えてもらえるのは契約者だけ

家族情報登録制度,指定代理請求制度
(画像=igorstevanovic/Shutterstock.com)

保険会社は、保険契約者以外に契約の内容を伝えることはない。保険契約者とは、保険契約の内容を知り保険料を支払う契約者や、年金支払・据置き支払を選択した保険金などの受取人などのことだ。

親の保険について家族が保険会社に問い合わせても、契約の内容を知ることはできない。このため家族がその内容を知らなければ、適切な請求ができないというトラブルが起こる。

考えられるのは、親が脳卒中などで倒れてそのまま入院し意思表示ができない場合や、認知症を患った場合、「がん」など病名を知らされず家族だけが知っている場合などだ。

親に代わって保険の契約内容などを知ることができる制度とは?

しかし最近ではそういった事態にならないように、家族情報登録制度を新設する保険会社が増えている。

家族情報登録制度とは、契約者以外で保険契約に関する内容を知らせることができる家族や、緊急連絡先として指定する家族をあらかじめ登録しておく制度である。転居した場合や災害時など、契約者本人と連絡が取れない時に、保険会社は登録した家族に連絡する。

登録は保険契約者がしなければならない。保険会社によって詳細は異なるが、おおむね登録できる家族は1~3人程度で、日本国内に住所がある3親等以内の親族、被保険者、受取人、指定代理人とされている。

被保険者でなければ保険金の請求はできない?

注意したいのは、家族登録情報制度に登録していても保険金、給付金、年金などの請求はできないということだ。給付金の請求は原則として、保険の対象となる被保険者本人が行わなければならない。

ただし本人が病気や事故などで意思表示できない場合などは、被保険者と同居または生計を一にする配偶者や、3親等以内の親族から請求できる保険会社もある。手続きには住民票などの公的証明書や健康保険証のコピーなどが必要だ。

一人暮らしの場合は成年後見制度を利用しなければならない場合もあり、選任までには相応の時間と費用が必要になる。

指定代理請求制度を利用すれば保険の請求で困らない

保険金、給付金、年金などの請求を迅速かつ確実に行うためには「指定代理請求制度」を利用すればいい。

契約者は被保険者の同意を得たのちに1人を指定代理請求人に指定できる。指定代理人が契約者に代わってできるのは、被保険者が受け取ることとなる入院給付金や手術給付金、満期保険金、死亡保険金、年金などの請求や保険金の支払いに関わる重度障害の通知などだ。

親の保険の指定代理請求人として登録しておくことで、親が意思表示できない場合、本人に代わって保険会社に連絡し、保険金を請求することができる。

指定代理請求人になれるのは、被保険者の戸籍上の配偶者、被保険者の直系血族、被保険者と同居または生計を一にしている3親等以内の親族などと定めている会社が多い。

契約途中でも登録・変更できる

家族情報登録制度、指定代理請求人制度は、保険金の請求漏れ防止に有効なので、多くの保険会社が採用し利用者が増えている。契約時に登録することが多いが、契約途中でも被保険者の同意を得たうえで登録や変更が可能だ。

便利な制度ではあるが、それを活用するためには親が加入している保険を把握しておくことが必須なので、早い段階で登録内容を確認しておこう。

文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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