(本記事は、渡邊浩滋氏の著書『税理士大家さん流キャッシュが激増する無敵の経営』ぱる出版、2018年11月13日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「満室が最大収入」の賃貸経営で支出の削減は必須!

税理士大家さん流キャッシュが激増する無敵の経営
(画像=ArtFamily/Shutterstock.com)

●穴の空いたバケツに水は貯まらない

空室を埋めて、収入を上げるだけでは、お金はそれほど残りません。

支出を減らさないと、お金は残りません。

水道の蛇口を力いっぱいひねって水を出しても、バケツに大きな穴があいていれば、水が貯まらないのと同じです。

また、賃貸経営は、一般の事業とは大きく異なる点があります。

それは、満室以上の収入を増やすことは難しいということです。

賃貸物件の部屋数というキャパシティは決まっているわけですから、満室以上に賃料が入ってくるとすれば、家賃を値上げするしかありません。

しかし供給が過剰な賃貸市場の現状では、値上げすることは至難の業なのです。

もっというと、年数とともに値下げも想定しなければなりません。

すると、支出を削減していく努力をしていかないと、よりお金が残らない状況になります。

●支出削減の3つの優先順位

では、どこから支出を削減していけばよいのでしょうか?

優先順位としては、次のような優先順位で見直していくのがよいと考えます。

・支出は優先順位をつけて見直す

1.経費にならない支出:生活費、借入金の元本など
2.固定費:収入の増減にかかわらず一定額かかる費用
 (例)火災保険、メンテナンス費用、借入金の利息など
3.変動費:収入の増減に比例してかかる費用
 (例)管理を委託する場合の管理費、水道光熱費など

経費になる支出を減らすと、税金が増えてしまいます。

支出の削減効果としては、薄くなってしまうので、まずは、「経費にならない支出」を見直すべきです。

次に、「経費になる支出」を見ていきます。

収入に比例する変動費を減らすのは、収入を上げることと矛盾してしまうので、後回しにします。

収入とは関係しない固定費であれば支出だけを下げられるので、固定費優先になるのです。

固定費を簡単に削減できる4つの鉄板テクニック

●ベースは相見積もり

固定費として見直すべきものをみていきましょう。

そもそも大家さんは、支出となるものを比較検討しない人が多いのです。

ビジネスでは、相見積もりは当たり前の世界ですが、大家さんはあまりしません。

管理会社さんからいろいろな業者さんを紹介される場合が多いのも事実です。

その管理会社さんとの関係上、紹介された業者さんにお願いするという事情もあります。

しかし、そのような場合に限って、「紹介された業者さんが良くなかった、高かった」という声はよく聞きます。

最終的に紹介された業者さんに選ぶにしても、その業者さんが他の業者さんと比べて、どの点がよいのか、値段がどのくらい高いのか、知っておくべきです。

たとえば、どんなものがあるでしょうか?

大きく分けて、次の4つになります。

(1)火災保険

火災保険は、融資を受けた銀行や農協、建築会社や不動産会社で加入するケースが多いと思いますが、当初の諸費用予算に合わせてプラン設計をしている場合があります。

そのため、適正な契約内容にすることで、保険料が下がるケースもあります。

1.保険金額

建物の保険価額に基づいた保険金額が設定されている必要があります。

建築時の外構工事費用の全額が加算されている場合は、補償されない駐車場の舗装費用なども含まれます。

また、物件を購入した場合は土地代金が含まれていないかの確認も必要です。

なお、火災保険における建物には、建物の基礎、門・塀・垣、延のべ床面積66㎡未満の付属建物(物置・車庫等)も保険の対象に含まれます。

2.保険期間と免責金額

火災保険の保険料は、保険期間5年以下と6年以上で異なる計算をしています。

そのため、賃貸経営を長期で行うのであれば、6年?10年の保険期間で契約しましょう。

こうしたほうが、1年あたりの保険料は低くなります。

免責金額については、0円?10万円の範囲で定めることができますが、保険会社によって設定できる金額は異なります。

保険金の支払い金額は、損害額から免責金額を差し引いたものになるので、免責金額の設定額が大きいほど、保険料が低くなります。

3.契約プラン

火災保険の契約プランは、基本的に付加するべき補償と立地や道路付けによっては付加しなくても良い補償があります。

基本補償としては、火災、落雷、破裂・爆発、風災・雹災・雪災、水ぬれ、盗難を付加するべきです。

立地や道路付けにより判断するのは、水災、破損・汚損・飛来です。

水災は、建物地域の「洪水ハザードマップ」を参考にし、建物への浸水予測を確認して付加するかの選択をします。

補償の対象となるのは、床上浸水または地盤面より45cmを超える浸水を被った場合になりますので、洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れにより、その程度の災害予想がなければ付加しなくても良いでしょう。

破損・汚損・飛来については、不測かつ突発的な事故による建物損害が対象になります。

たとえば、建物が道路から離れていて車が門や塀に突っ込んで来るリスクが低い場合は、飛来の心配は少ないでしょう。

4.特約プラン

自動的に付加される特約に、損害保険金の一定割合を支払う諸費用保険金と地震火災費用保険金があります。

これらは、支払保険金の割合を下げることで、保険料を下げることができます。

その他、マンションに限り、水災補償に支払い保険金額の限度額(10%or30%)を設定し、保険料を下げることもできます。

(2)メンテナンス費用

アパートやマンションはいろいろなメンテナンス費用がかかります。代表的なものは次の3つです。

1.エレベーターメンテナンス費用

エレベーターがついているような物件であれば、毎月メンテナンス費用がかかります。

エレベーターメーカーがメンテナンスをやる場合もありますが、別のメンテナンス会社にお願いすることも可能です。

メンテナンス頻度を調整することでも、月々の費用を抑えることが可能になります。

2.消防設備点検費用

消防用設備点検報告とは、消火器やスプリンクラー設備、自動火災報知設備などの消防用設備が、火災の際に正常に作動しないと人命にかかわることから、定期的に点検し、管轄する消防署へ報告する制度です。

3.清掃費用

管理会社さんに清掃までお願いすることも多いでしょう。

しかし、清掃をどのくらいの頻度で、どこまでやったかの報告を受けている大家さんはあまり多くないように感じます。

1回あたりいくらくらい清掃費で取られているか、計算すると意外に高額になっていたりします。

アパートやマンションの清掃だけを請け負う業者さんもいるので、そういう専門の業者さんを検討してみる、もしくは、シルバー人材で清掃をお願いすることができれば、大きく費用削減できる可能性もあります。

(3)通信費

最近は、入居者サービスとして、無料でケーブルテレビが見られたり、インターネットにつなげられたりすることが、当たり前のように行われています。

これらは、大家さんが入居者さんの代わりに、費用を出しています。1室あたり月額いくらでと設定されていることが多いです。

部屋数が多いと、金額も相当なものになります。少しでも下げられないか、比較をしてみてください。

(4)固定資産税

「固定資産税って下げられるの?」という疑問があると思います。

下げる方法はあるのですが、専門的な内容になるので、詳しくは専門家に尋ねるか、拙書(共著)「Q&A固定資産税は見直せる適正納税の方法と実践」 (清文社)という本をお読みいただければと思います。

しかし、大家さんとしてぜひやっていただきたいことは、固定資産税が間違っていないかどうかの確認です。

毎年、固定資産税の課税明細書が送られてきますが、そこに記載されている物件が自分の所有するものなのか、面積や構造は合っているか、下記を参考に確認をしてみてください。

意外に誤りも多く、余計な固定資産税を何年も払っていたなんてこともあります。

[課税明細書のチェックポイント7つ]

(1)単純ミス(名義人、対象地、構造、住宅軽減)
(2)登記簿面積より実測面積の方が小さい場合
(3)アパートと駐車場が一体利用されているが、分離して評価されている場合
(4)店舗・事務所から居宅に転用したが、住宅用軽減の適用がされていない場合
(5)不整形の形をしている宅地だが不整形の減額がされていない場合
(6)私道で非課税が受けられるが、非課税の申請していない場合
(7)セットバックにより道路になったが、道路での評価がなされていない場合

税理士大家さん流キャッシュが激増する無敵の経営
渡邊浩滋(わたなべ・こうじ)
税理士、司法書士、宅地建物取引士。税理士・司法書士渡邊浩滋総合事務所代表。明治大学法学部卒業。税理士試験合格後、実家の大家業を引き継ぎ、空室対策や経営改善に取り組み、年間手残り-200万円の赤字経営から1400万円までV字回復をさせる。2011年12月、同事務所設立、現在に至る。2018年には、大家さん専門税理士グループ「Knees(ニーズ)」を設立し、フランチャイズ展開を開始。

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