日本でも民泊が解禁されましたが、運営・受け入れが大変というイメージを持つ人も多いでしょう。世界で流行するシェアリングエコノミー(共有経済)の代表格とも言える民泊ですが、多忙な開業医が副業として取り組むことはできないのでしょうか。多忙な人でも「不動産投資としての民泊」を始める方法があります。

日本でも合法になった民泊

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(写真=MissNiko/Shutterstock.com)

Airbnb(エアビーアンドビー)の登場で一気に世界に広まった民泊が、ここ数年日本でも普及しつつあります。部屋や住居を民泊向けとして訪日外国人などに貸し出す人が増える中、2018年6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行によって、届出をすることで合法的に民泊サービスを提供できるようになりました。

2018年10月時点での届出数は、全国で1万件を超えています。民泊新法ではなく旅館業法の下で民泊を運営している施設もあるので、民泊市場がいかに大きいかが分かります。

民泊施設の種類は? 管理代行の手数料は?

民泊には家主同居型(ホームステイ型)と家主不在型がありますが、どちらにせよすべて1人で対応するのは難しいでしょう。開業医が副業として、管理や運営まですべて行うのは現実的ではありません。

共通して対応しなければならないこととしては、AirbnbやBooking.comなどの民泊仲介サイトへの物件掲載や予約管理、問い合わせ対応はもちろんのこと、民泊新法で求められる受け入れ実績申告も3ヵ月ごとに必要です。

またゲストを受け入れる以上、清掃が必要です。特にシーツや枕カバーなどのリネンの洗濯・乾燥には時間と手間がかかります。家主不在型の場合は、鍵の受け渡し方法も検討しなければいけません。

そこで考えたいのが、民泊新法で管理業者登録をした民泊運営代行会社を活用することです。代行会社によって対応可能なサービスはさまざまですが、民泊サイトへの登録から問い合わせ対応、清掃、鍵の受け渡しまで、ワンストップで対応可能な会社が増えています。多くの場合、民泊による売上の20~30%程度が手数料となります。

民泊を始める際の心構え

ただ民泊運用代行会社に業務を委託できるからと言って、それだけで民泊ビジネスが成功するわけではありません。オーナーとして、相応の心構えや知識は必要です。

不動産投資として民泊を行う場合は、マンションの区分物件や一軒家を賃貸・購入して家主不在型で始めることになりますが、民泊新法や自治体の条例によって民泊サービスの提供が可能な地域が決められています。マンションの管理規約で民泊が禁止されているケースも多いので、事前確認は必須です。

また立地も非常に重要です。一昔前は民泊物件自体が少なかったため、特に都市部では予約サイトに情報を掲載するだけで満室になることが多かったのですが、最近では企業も民泊ビジネスに参入し始め、競争が激しくなっています。好立地にある良い物件をいかに見つけられるかが、成否を分けるポイントになるでしょう。

不動産投資として民泊を始める場合、宿泊施設としての基準を満たすために必要な消防設備などを新たに設置する必要が生じる場合があります。事業の立ち上げ時には、家具・家電などの購入も必要です。

運用代行会社に支払う手数料を差し引いても利益が出るかを含め、事前の検討が必要です。

それでもなお民泊を不動産投資の手段として選択する魅力は?

民泊は不動産投資として難易度が高いと感じるかもしれませんが、それでも民泊を新たに始める人が増えていることには、主に3つの理由があります。

1つ目は、訪日外国人マーケットの成長性に対する期待感です。2017年の訪日外客数は前年比19.3%増の2,869万人を記録しています。格安航空(LCC)の拡充なども追い風となり、2020年に4,000万人という政府目標の達成は現実味を帯びてきています。

2つ目は「民泊は楽しい」ということ。民泊運用代行会社に業務を委託する範囲によってゲストとどれだけ接点を持てるかは変わりますが、さまざまな国籍の人との交流が生まれ、日本にいながら世界との接点を持てることに魅力を感じる人も多くいます。

そして3つ目は、立地などの問題がクリアできれば、高い利回りを達成できる可能性が大きいことです。訪日外国人のリピーターも増えていますが、彼らは有名観光地以外の新たな旅行先を探しています。

しかし、往々にしてそうした地域には宿泊施設が少ないのが現状です。そうした地域の将来性を見越してその地域で民泊を営めば、利回りは年々上昇し、宿泊価格を変動制にして高くしていくことで、より大きな収益に結びつけることもできます。

新興マーケットならではの可能性

いまや民泊は不動産投資の選択肢の一つになりましたが、一方でまだまだ成功のセオリーは確立していません。だからこそ知恵を絞り、ノウハウを確立し、運営する民泊施設の評判を高めていくことで、他の人よりも大きな収益を上げることも可能になります。これは新興マーケットならではの魅力と言えるでしょう。

民泊運用代行サービスの誕生によって、多忙な人でも民泊を始めることができる環境は既に整っています。上述のように、立地や外国人から見た地域の魅力などが成否を分けますので、現状分析とシミュレーションを行った上で可能性が見出せるのであれば、民泊は不動産投資の有力な選択肢になるでしょう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio