はじめに
今回のアンケート調査は10月29日(月)~10月31日(水)の期間で行われました。
2018年10月末の日経平均株価は2万1,920円で取引を終え、月間ベースで4カ月ぶりの下落に転じました。また、前月末(2万4,120円)からの下げ幅も約2,200円と、10年ぶりの大きさです。今から10年前ということは、2008年10月のリーマンショック直後以来の下落幅ということになります。
改めて10月の国内株式市場の動きを振り返ってみると、日経平均は前月からの上昇基調を引き継ぐ格好で、年初来高値を更新。10月2日には27年ぶりの高値をつけるなど好調な滑り出しだったのですが、その後は米国の長期金利上昇への警戒が引き金となり、以降は下落が目立つ相場展開へと転じました。
もっとも、日経平均が下げはじめた当初は、利益確定売りや高値警戒感、急ピッチな上昇に対するスピード調整によるものという見方も多かったのですが、米中摩擦などの懸念材料が蒸し返されるのに伴って次第にムードが悪化。米中株式市場の下落が続いたことや需給的な売りも加わったことで下げ足が加速して、株価水準を切り下げていきました。 注目の決算発表シーズンについても、先行きの業績を慎重に捉える企業も散見されるようになり、好業績を受けて個別に買われる銘柄はあるものの、全体としては軟調な相場地合いが続きました。
そのような中で行われた今回のアンケートは、3,000名を超える回答を頂きました。株式市場の急落を受けて、日経平均および為替の見通しDIがともに好調だった前回調査から大きく悪化に変化し、「株安・円高」の結果となりました。
今月の質問
楽天証券経済研究所
応援したい自治体(都道府県・市区町村)に寄附ができ、節税にもなる「ふるさと納税」。 2018年度の申込期限が近づいてきました。 そこで、みなさんに「ふるさと納税」について聞いてみました。
今月の質問1 利用している節税制度はありますか?(複数選択可)
ご回答いただいた約85%の方が節税制度を利用していることが分かりました。みなさん、どの制度を利用しているのでしょうか。
一番多かったのは「NISAまたはつみたてNISA」、その次が「ふるさと納税」、「iDeCo(確定拠出年金)」、「医療控除」ということが分かりました。
そして、節税制度を利用している方の約7%が4つの制度全てを利用、約24%が「NISAまたはつみたてNISA」と「ふるさと納税」の両方を利用していました。また、何もしていない方が約15%いることも分かりました。来年、消費税増税が予定されておりますので、これから節税対策をご検討いただくのもよいと思います。
今月の質問2 ご自身のふるさと納税できる上限額を知っていますか?
※ふるさと納税できる上限額は、年収や家族構成により異なります。
上限額を「知っている」が59.18%、「知らない」が40.82%でした。
今回アンケートにお答えいただいた約半数の方が「ふるさと納税」を利用していました。上限額を「知らない」の回答のほとんどは「ふるさと納税」を利用していない方ですが、利用している方でも約8%の方は「知らない」とのことでした。おおよその上限目安は「楽天のかんたんシミュレーター」から算出することができます。より正確な金額を知りたい場合は、お住まいの市区町村や税理士にご確認いただくことになります。
今月の質問3 2018年のふるさと納税はいつしましたか、または、いつする予定ですか?(複数選択可)
今の時期10~12月に利用する方が39.52%と、もっとも多く、複数回、季節ごとに利用される方も多いことが分かりました。一年中受け付けている「ふるさと納税」ですが、利用時期や季節により返礼品が違う自治体もあります。
年末に集中してしまうと人気の返礼品は品切れになることもありますし、同時期に返礼品が集中してしまうこともあります。今年は間に合いませんが、来年は1~3月、4~6月、7~9月、10~12月と分散して、季節ごとの品を楽しみにするのもよいと思います。
今月の質問4 ふるさと納税で失敗したことなどがあれば教えてください。(複数選択可)
約83%の方は「特にない」とのことでしたが、返礼品が同時にたくさん届き冷蔵庫の保管に困った方やワンストップ特例届け、確定申告を出し忘れなど失敗経験のある方もいることが分かりました。
この他にも
・限度額より多めに寄付してしまった。
・単身赴任先の住所(住民票を置いていない場所)で申し込んでしまった。
・計画的に寄付ができず年末にバタバタしてしまった。
・年末ぎりぎりに注文した為、自分の欲しい時に返礼品が品切れで注文できなかった。
・同じような返礼品を続けて、寄付していたので、同時に届いて困った。
などの失敗談をいただきました。
日経平均の見通し
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
株価急落を受けて見通しが悪化
今回調査における日経平均の見通しDIの結果ですが、1カ月先DIはマイナス28.20、3カ月先DIがマイナス4.55となりました。前回調査の値がそれぞれプラス29.51とプラス27.23でしたので、両者がともに一気にマイナスに転じた格好です。
前回調査の株価見通しが今年に入ってから最も強気だっただけに、今回調査の結果の悪化は10月の株式市場がいかに荒れ模様だったか、そしてムードの急変が解ります。回答の内訳円グラフを見ても、強気派の割合が1カ月先で16.79%、3カ月先で26.98%となっていて、前回(それぞれ43.97%、44.78%)から大きく減らしています。
今回のアンケート実施期間中(10月29日~31日)の日経平均は、大きく値を戻す動きを見せていたものの、それでも今回のような弱い結果となったことを踏まえると、「まだ安心するには早い」という心理がうかがえます。
確かに、月末にかけての国内株式市場は反発を見せていました。日経平均が節目の2万1,000円台割れが意識される水準まで下げていたこと、そして、TOPIX(東証株価指数)についても連日で年初来安値を更新していたタイミングだったこともあり、「さすがに下げ過ぎではないか」、「急ピッチな下落だったので、そろそろ落ち着きたい」という意識が働きやすかったと言えます。
テクニカル分析では、底打ちの目安のひとつとして、ローソク足の「窓」埋めが挙げられます。具体的に10月相場に当てはめてみますと、10月24日~25日にかけて空けた208円ほどの空間がこの「窓」に該当するのですが、月末となる10月31日の取引で「窓」埋めを達成。さらに、月をまたいだ11月2日には今年2番目の上昇幅となり、節目の2万2,000円台も回復しました。
とはいえ、10月と同じように、日経平均が2万4,000円台乗せを達成した後に急落した今年1月下旬~2月中旬の時を振り返ると、下げ幅の半分ぐらいまでは順調に反発したのですが、再び下落に転じ、さらに3月の年初来安値につながった経緯があります。必ずしも歴史は繰り返されるわけではありませんが、記憶としてはまだ鮮明に残っていることもあり、株価の底打ちを判断するには自信が持ちづらい状況なのかもしれません。
さらに、株価の急落によって、企業業績に対する見方にも変化が出はじめている面があります。実際に、高値をつけていた10月初旬までは、「好調な企業決算が外部要因による懸念(米中摩擦、中国の景気減速など)を押さえ込んで株価は上昇していく」という強気シナリオが大半でした。それが決算シーズンの本格化を迎える前に、外部要因の懸念によって株価が押し下げられてしまったため、次第に「企業業績を手掛かりにどこまで株価を戻せるか」に変化していったと思われます。
そもそも、「企業業績への期待」と「懸念材料への警戒」の綱引き状態は、今に始まったことではなく、春先から夏場にかけての間、日経平均が2万3,000円台乗せをトライしては跳ね返される展開が繰り返されてきた頃から続いていましたし、10月の株価下落は懸念材料を過度に織り込んだとの見方もあり、企業業績の期待の高まりと懸念材料の後退によって、勢いよく株価が戻していく可能性はあるものの、失速後の下落への不安がある中では、積極的に上値を追うよりも、下げたところを拾う買い方が功を奏すのかもしれません。
為替DI:円高見通し急激に強まる。海外はまだ円安を予想
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル円、ユーロ円、豪ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円の先安」見通し、マイナスの時は「円の先高」見通しを意味します。プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強まっていることを示しています。
「11月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」という質問に対して、10月末の水準(113.00円)によりも、11月は「円高になる」と答えた投資家は全体の約37%を占めました。反対に「円安になる」は最も少ない約27.5%、残りの約35.5%は「動かない(分からない)」という回答でした。9月末に比べると円安派が19.5ポイントと大きく減って、円高派が11.5ポイント増えました。
円安見通しから円高見通しを引いたDIは▲9.50。1カ月で31ポイントもマイナスに振れ、個人投資家が円高見通しを急速に強めていることが分かります。
FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ姿勢を強めるなかで米長期金利は7年ぶり以上の高水準で高止まり。これまで史上最高値を更新してきたNY株も、高金利にさらされるうちに変調をきたし、10月下旬にはついに世界同時株安が発生しました。FX市場は「安全資産」とされる円を求め、10月4日には年初来高値を更新する114.55円まで上昇していたドル/円は、26日には111.38円まで円高になりました。
では、海外のプロの投資家はドル/円に対してどのような相場見通しを持っているのでしょうか。そのヒントとなるのが、CFTC(米商品先物取引委員会)が毎週公表しているCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)におけるIMM(通貨先物市場)の円の先物ポジションです。
非商業(投機)の円ポジションを見ると、10月30日の時点で101億1,400万ドル相当の「円の売り越し」になっています。つまり、IMMでは全体としてみるとドル/円をロングにしている(買っている)状態で、これは「円安」に向かうと考えている投機家の方が多いということを意味しています。
IMMでは、今年3月にドル/円が104.60円まで円高が進んだときに、いったん円の買い越し状態になりました。しかし6月以降からはほぼ円の売り越し状態が続き、その間にドル/円は104円から114円まで上昇しています。ドル/円の方向と投機家の円ポジションには一致が見られます。IMMのポジション動向が注目を集めるのはこのような理由からです。
10月に入ってからも、高水準の円の売り越し状態は続いています。しかし、気になるのは、直近の3週間では円の売り越し残高が徐々に減り始めていることです。【図3】
これが単なるポジション整理なのか、あるいは大きな転換が近づいているのかはまだ分かりませんが、プロの投機家の相場観が円安から円高に変わるということならば、円ショートが大きく積み上がっているだけに、マーケットへの影響も少なからずありそうです。
今後、投資してみたい金融商品・今後、投資してみたい国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田哲
今回は、毎月実施している設問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「日本」、「アメリカ」と回答したお客様の割合に注目しました。このテーマは以前に何度か取り上げたものですが、今回、「日本」「アメリカ」ともに、大きな変化があったためご紹介することにしました。
2018年10月のアンケート調査では、アンケート回答者全体の38.8%の方が「日本」と、42.1%の方が「アメリカ」を選択されました。(当該設問は複数回答可)
「今後、投資してみたい国(地域)」で「日本」、「アメリカ」と回答したお客様の割合
日本と回答したお客様の割合は、選択肢に「日本」が追加された2016年5月以降で最も小さくなりました。アメリカと回答したお客様の割合も大きく低下しました。
アンケートは、11月6日に行われた米中間選挙のおよそ1週間前、10月29日(月)から31日(水)にかけて行われました。
米中間選挙を前に、トランプ大統領率いる共和党が上院・下院ともに勝利するのか? 下院で民主党が勝利するのか? 不透明要素が拡大し、投資を手控えるムードが高まったことが、アメリカそして日本を今後投資してみたい国に選択したお客様の割合が低下した大きな要因だと考えられます。
アンケートが行われた期間、米中間選挙に対してさまざまな思惑が生じていました。
共和党が上院・下院ともに過半数を獲得し、勝利した場合、これまでのトランプ大統領の施策が肯定され、任期満了までの残り2年間、さらにトランプ節が強まることが懸念されました。また、上院が共和党、下院は民主党が勝利した場合、いわゆる“ねじれ”が生じ、米国議会が停滞する懸念がありました。
上院・下院ともに民主党が勝利するという可能性が低いシナリオを除けば、主要なシナリオのどちらに転んでも“懸念”が残るという状況だったことが今回のアンケート結果につながったとみられます。
結局、米中間選挙は、上院・共和党、下院・民主党の勝利で幕を下ろし、“ねじれ”を抱えて米国議会はトランプ大統領の任期が終了する2010年11月の大統領選挙までの2年間を運営していくこととなりました。
中間選挙というイベントを乗り越えたことで悪材料出尽くしとなれば、今月末に行われるアンケートでは、今回低下した「日本」「アメリカ」へ投資してみたいと思うお客様の割合は上昇するとみられます。
表:今後、投資してみたい金融商品 2018(複数回答可)
今後、投資してみたい国(地域) 2018年10月調査時点 (複数回答可)
楽天証券経済研究所(らくてんしょうけんけいざいけんきゅうしょ)
株式、投資信託、為替、FX(外国為替証拠金取引)、コモディティ、家計のマネープランなど、さまざまな領域の専門家を集めた“お金のシンクタンク”。個人投資家の資産運用に役立つフレッシュな情報を日々発信!
(提供=トウシル)
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