ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を調べていると、「ハードフォーク」というキーワードを目にすることがある。「ビットコインのハードフォークでビットコインキャッシュが生まれた」。これはどういう意味だろうか。

ハードフォークって何?

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(画像=Natali_ Mis/Shutterstock.com)

仮想通貨のハードフォークとは、日本語では「仮想通貨分裂」や「仮想通貨分岐」、「強制分裂」などと呼ばれる。その呼び方の通り、元の仮想通貨から新たな仮想通貨が分裂または分岐して誕生することを指す。

ハードフォークが行われる理由はさまざまだ。例えば、仮想通貨の新規発行に重要な役割を果たすマイニング(採掘)業者の主導で行われたり、元の仮想通貨の弱点を改善する形で新しい仮想通貨を誕生させたり、仮想通貨の運用をめぐって開発チームの中で意見が割れたことにより誕生したりと、各ハードフォークによって背景が異なる。

これまでの仮想通貨業界で有名なハードフォークは、仮想通貨の代表格であるビットコインやイーサリアム(ETH)のハードフォークだ。では、具体的にどのような背景でハードフォークが行われたのか。実際のハードフォークで誕生した新たな仮想通貨が付与・取引されるまでの流れについても解説していく。

ビットコインのハードフォークは「処理時間」が引き金に

ビットコインは2009年1月に誕生した仮想通貨で、仮想通貨の中では老舗中の老舗と言われている。ビットコインは、これまでに3度以上のハードフォークを経験している。1度目は2017年8月1日にビットコインキャッシュ(BCH)に分裂、2度目は2017年10月にビットコインゴールド(BTG)に分裂、3度目は2017年11月にビットコインダイヤモンド(BCD)に分裂している。

ビットコインキャッシュのハードフォークは、中国の大手マイニング業者の主導で実行された。

ビットコインは2009年の誕生以降、ビットコイン保有者による売買取引が増えていくに連れ、決済完了までにかかる時間が長くなっていたことが課題だった。ビットコインの開発グループは、それまでにも仕組みを改善するなどして決済時間の短縮を図っていたが、根本的な解決は難しいとの見方が広がっていた。

そこで中国のマイニング業者がハードフォークの仕掛人となり、取引時間を大幅に短縮させるシステムを有するビットコインキャッシュを誕生させるべく動いた。

ビットコインキャッシュのハードフォークでは、ビットコインの保有者に同量のビットコインキャッシュが無料で付与された。その後、ビットコインキャッシュが売買に応じて価値を持つようになり、現在に至る。

ビットコインゴールドの分裂の際も、ビットコインキャッシュのハードフォークのときと同様に、ビットコインの保有量に応じたビットコインゴールドが付与された。

イーサリアムのハードフォークは「非中央集権性」が引き金に

イーサリアムのハードフォークは、ビットコインのケースと事情や背景が異なる。構想が示されたのは2013年で、その後、世界的に流通が広がる中でイーサリアムクラシック(ETC)に分裂した。

ビットコインの分裂では、取引処理にかかる時間が増えたことが引き金となってハードフォークが行われた。しかし、イーサリアムの場合には仮想通貨に活用される「ブロックチェーン技術」のあり方を巡る議論が分裂のきっかけとなった。

イーサリアムのハードフォークについて考えるときには、「THE DAO事件」の内容を知ることが欠かせない。THE DAOとは簡単に言えば、イーサリアムが提供しているプラットフォームを活用した投資ファンドのことだ。2016年6月、このTHE DAOから約60億円相当のイーサリアムが不正流出した。

この不正流出事件が起きたあと、イーサリアムの開発チームの中では、このイーサリアムの流出を無かったことにし、ブロックチェーン台帳を不正流出前の状態に戻すという派閥と、その行為が仮想通貨の基本概念である非中央集権性に反するという派閥に分かれた。そして、ブロックチェーン台帳を元に戻す、つまり改変することに反対したグループが主導してイーサリアムクラシックを誕生させた。

ビットコインとイーサリアムのケースで、ハードフォークの引き金になった理由がまったく違うことが分かる。

ハードフォークで誕生した仮想通貨は投機的にどうか

ビットコインやイーサリアム以外でもハードフォークの例はあり、今後もさまざまな仮想通貨でハードフォークが行われることが確実視されている。

ハードフォークは、仮想通貨を保有する個人投資家にとっても注目のトピックである。ハードフォークで新しく誕生した仮想通貨は、その注目度から売買レートの値上がりが一気に進む可能性があるからだ。

ただし長期的に見た場合、ハードフォークしたすべての仮想通貨が値上がりしていくとは限らない。投機にはリスクが伴うことも忘れないようにしたい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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